加工を依頼した後に図面を直したときは、新しいファイルを送る前に、どの注文の、どの状態の部品から切り替えるかを決めます。 加工先がまだ材料を手配していない場合と、すでに穴を加工している場合では、確認すべきことが変わるためです。
この記事では、改訂図面に添える連絡票の作り方と、加工先の回答を受けて切替を確認するまでの手順を提案します。 図面記号の読み方は機械図面の基礎、見積条件のそろえ方は見積依頼書の書き方で扱っています。
最初に、出してよい図面の版を確認する
改訂番号は、同じ図面の変更段階を見分けるための番号や記号です。 図番が同じでも改訂番号が違えば、寸法や加工条件が異なる場合があります。 ファイル名の「最新」「修正済み」という表記だけで判断せず、社内で承認された図番と改訂番号を確かめます。
図面、仕様書、注文書、必要な CAD データを一組にして見比べます。 図面を直したのに送付用 PDF や加工用データが旧版のままでは、加工先が参照する資料がそろいません。 どの資料を製作の基準にするか、資料間に食い違いが見つかったときは誰へ確認するかも、連絡票に書いておきます。
NASA の構成管理の解説は、製品の版と関連情報を対応させ、承認した変更が実施されたことまで確認する考え方を示しています。 以下の連絡票は、その考え方を加工依頼に当てはめた記事独自の提案であり、特定の規格が定める必須様式ではありません。 社内の設計変更手順や取引先との合意があれば、それに合わせて使います。
「どこを変えたか」と「どれに適用するか」を分ける
変更箇所は、旧版と新版を並べて確認できる細かさで書きます。 「一部寸法変更」で済ませず、対象の図、位置、項目、変更前後を示すと、加工先は自分の工程への影響を調べられます。 材質、公差、表面処理、検査条件も変更の対象になり得ます。
適用範囲は、変更内容とは別の欄に書きます。 今回の注文だけか、次回発注分からか、すでに納めた部品の確認も必要かを、発注番号やロットなどで特定します。 まだ決まっていないなら「今回分から変更」と推測して送らず、決める担当者と、回答が来るまで止めておく作業の範囲を先に確認します。
| 連絡票の項目 | 書く内容 | 加工先に確認してもらうこと |
|---|---|---|
| 対象 | 品名、図番、注文番号、対象数量 | 自社で受けている注文との一致 |
| 版 | 旧改訂番号、新改訂番号、添付ファイル一覧 | 現場で参照中の版との差 |
| 変更 | 位置と変更前後、変更理由 | 加工・検査・手配への影響 |
| 適用 | 対象ロットや注文、切替条件 | 未着手・加工途中・完成済みの内訳 |
| 保留 | 決まっていない点、担当、回答期限 | 回答までの作業と保管の扱い |
| 回答 | 受領者、確認した版、対応内容 | 工程への展開と納期・費用の変更 |
この表に記入すること自体は、変更の承認や加工先の作業停止を意味しません。 急いで作業を止めてもらう必要があるときは、社内の責任者から取引先の窓口へ、対象と処置を確実に伝えられる連絡方法を使います。
加工の進み具合ごとに対応を決める
仕掛品とは、製作途中にある品物です。 加工先へ「まだ完成していませんか」と聞くだけでは、材料を手配した段階なのか、変更対象の加工がすでに終わっているのかを区別できません。 変更に関係する工程をどこまで進めたかを、数量とあわせて回答してもらいます。
| 確認した状態 | 次に決めること |
|---|---|
| 加工未着手 | 手配済み材料や治具への影響、新版で開始できる条件 |
| 加工途中 | 変更箇所の加工済み範囲、続行・保留の対象、追加加工を検討する担当 |
| 完成済み・出荷前 | 旧版で作った品の識別、使用可否を判断する担当、検査や作り直しの要否 |
| 納入済み | 在庫・組付け先への影響調査と、必要な連絡先 |
追加加工で使えるのか、旧版のまま使ってよいのかは、依頼担当者だけで決めません。 設計、品質、製造など、変更の影響を判断する担当者へ現物の状態を伝えて、処置を決めてもらいます。 寸法の変更が小さく見えても、組付けや検査への影響が小さいとは限りません。
たとえばブラケットの穴位置を変えるという仮定例なら、「旧位置の穴をすでに加工した部品があるか」が判断の分かれ目になります。 穴を追加すればよいと依頼する前に、強度や干渉、外観、検査の要求を含めて設計側が処置を決めます。 この例は話を分かりやすくするための設定で、追加工を認める判断基準ではありません。
受領の返信に、現場への切替結果を加える
メールを受け取ったという返信と、加工現場で新版へ切り替わったという確認は別のものです。 取引先の窓口から、参照している版、対象の注文、仕掛品への処置、製作に使う資料の切替状況を回答してもらいます。 再委託先が関わる場合は、窓口を通じて、どこまで新版を展開する必要があるかも確認します。
連絡文は、次のように対象と回答してほしい事項を分けると整理できます。 以下は記入用の文案例です。
図番[図番]を[旧版]から[新版]へ改訂しました。対象は注文[番号・数量]です。添付は[資料名と版]です。変更箇所は[位置・内容]をご確認ください。 現在の加工状況と、変更の影響、資料の切替予定をご回答ください。加工途中品の処置は[担当者]の確認後に連絡します。回答までの作業範囲は[合意した内容]とします。
旧版は、日常の作業で新版と取り違えない状態にします。 履歴として残す資料まで一律に削除せず、使用停止の表示や保存場所の分離など、社内で決められた文書管理の方法で扱います。
切替後の品と記録を対応させて閉じる
変更後に最初に受け取る品では、対象の注文・版と、変更箇所を確認した検査記録を対応させます。 どの確認を行うかは変更の影響に応じて決め、連絡票は「返信が来た」だけで終わりにしません。
残すのは、新版一式、変更の承認、取引先の回答、仕掛品への処置、切替後の確認結果です。 費用や納期が変わった場合は、製作期間の管理にも反映します。 後から別の担当者が見ても、どの品にどの版を適用したかを追える状態になっていれば、この連絡は終えられます。