「ラダー図を見てください」と言われたら

例えば、設備が止まり、メーカーの担当者から「X10のセンサ入力が入っていません」と説明されたとします。ラダー図の基本を知っていれば、どの条件が成立していないのかを一緒に追えます。ただし、入力OFFだけでセンサの故障とは断定できません。ワークの位置、配線、電源、入力の割付けなども確認の対象です。

この記事では、接点・コイル・タイマーを中心に、ラダー図を読むための最低限の知識を整理します。


ラダー図はリレー回路を模したプログラム

ラダー図(Ladder Diagram)は、リレー回路を模したPLCのプログラム言語です。母線と、その間に並ぶ横の段(ラング)が「梯子」のように見えます。

基本の接点回路は、左から条件を追い、右側のコイルにどの値が渡るかを読みます。「電気が通る」というイメージは役立ちますが、プログラム上で評価しているのはON/OFFの論理です。実際の配線図そのものではありません。三菱電機の入門教材も、配線された機器とプログラム上の接点を分けて説明しています(印刷頁2-6〜2-7)。

以下の図は読み方を示す概念図です。記号、アドレス、命令の書式はメーカーや機種によって異なります。


4つの基本要素

①常開接点(a接点)

--[ ]--

参照する信号がON(TRUE)のときに条件が成立します。例えば「ワーク検出信号がONか」を調べます。ボタンを押したときに入力がONになるかは、実配線と入力設定によります。

②常閉接点(b接点)

--[/]--

参照する信号がOFF(FALSE)のときに条件が成立します。例えば、異常時にONになるビットなら「異常ビットがOFFか」を調べられます。「扉が閉まっている」という条件をa接点・b接点のどちらで書くかは、その状態が信号のON/OFFのどちらに対応するかで決まります。接点の記号だけで安全性は決まりません。

この読み方はCODESYSの接点命令の説明でも確認できます。

③コイル(出力)

--( )--

通常のコイルは、左側の条件が成立すれば対象ビットにON、不成立ならOFFを書き込みます。対象は実出力に割り付けたビットの場合も、内部の状態を表すビットの場合もあります。値を保持するSET/RESET命令とは区別してください。CODESYSのコイル命令では、否定コイルは左側の論理を反転した値を書き込みます。

ここでは、その段が実行され、同じビットへの別の書込みがない場合を考えます。実機では実行条件や他の書込み、出力の割付けも追う必要があります。

④タイマー

TONは、入力がONのまま設定時間だけ続くと、出力QがONになるオンディレイタイマーです。例えば、CODESYS StandardライブラリのTONなら、設定時間PTを500msにしたとき、入力INが0.5秒間続くとQがONになります。途中でINがOFFになれば計時はリセットされ、QもOFFです。再びONになると最初から計時します。

概念例:TON(オンディレイ)
IN = 検出信号
PT = 500ms
Q  = 検出信号が0.5秒間続いた結果

これはそのまま入力する命令構文ではありません。実際の記述方法や時間単位は対象PLCのマニュアルで確認します。TONの入出力仕様では、IN、PT、Q、経過時間ETの役割を確認できます。


基本記号一覧

接点・コイルは上の基本論理、タイマー・カウンターはCODESYS Standard 3.5.22.0の動作を例にしています。

記号・命令名 名称 読み方・動作
[ ] 常開接点(a接点) 参照信号ONで成立
[/] 常閉接点(b接点) 参照信号OFFで成立
( ) 通常のコイル 左側の論理が成立ならON、不成立ならOFFを書き込む
(/) 否定コイル 左側の論理が成立ならOFF、不成立ならONを書き込む
TON オンディレイ INがONのままPTが経過するとQがON。INがOFFならリセット
TOF オフディレイ INがONならQはON。INがOFFになってPTが経過するとQがOFF
CTU 加算カウンター CUのOFF→ONでCVを加算。CVが設定値PV以上でQがON。RESETでCVを0にする

TOFは、OFF遅延の途中でINがONに戻れば計時がリセットされ、QはONを保ちます。CTUは、入力がONのまま続くたびに加算する命令ではなく、立上りを数えます。例えばRESETがOFF、CVが0、PVが3なら、3回の立上りでQがONになります。

これらの例は、必要な周期で命令を実行している場合の基本動作です。短いパルスを読み取れるか、命令を実行しない間や電源投入時にどうなるか、値が保持されるかは、CPU・命令・設定を確認してください。


読み方の練習:AND回路

--[X0]--[X1]--( Y0 )--

読み方: X0がON、かつX1もONのとき、Y0がONになります。どちらかがOFFならY0もOFFです。

例: 「部品Aの検出信号(X0)」と「部品Bの検出信号(X1)」が両方ONなら、「確認ランプ(Y0)」を点灯させます。


読み方の練習:OR回路

--+--[X0]--+--( Y0 )--
  |        |
  +--[X1]--+

読み方: X0またはX1がONのとき、Y0がONになります。両方OFFのときだけY0はOFFです。

例: 「操作位置Aの呼出し信号(X0)」または「操作位置Bの呼出し信号(X1)」で、同じ呼出しランプ(Y0)を点灯させます。

並列の枝は、X0の手前で分岐し、X0の後ろで合流しています。X0を通った後から枝分かれさせると、X1だけで成立する経路にはなりません。AND・ORの図は論理を学ぶための例であり、機械を安全に起動・停止させる制御全体を示したものではありません。


b接点を読むときは、物理接点・入力・命令を分ける

同じ「b接点」という言葉でも、現場の部品とプログラムでは指すものが異なります。

どこの話か b接点の意味
現場の接点(NC) 押ボタンなら、通常の非操作状態で閉じている接点
ラダーの記号([/]) 参照するビットがOFFのとき成立する論理条件

両者は、配線・入力設定を通じて関係します。物理接点がb接点だから、プログラムもb接点になるとは限りません。

例えばNC接点付きの非常停止押ボタンについて、接点が閉じて通電すればX0がONとなり、反転設定がない入力を考えます。接点と入力の関係だけを示した次の表は、安全回路の設計図ではありません。

状態 物理接点と入力回路 PLCの入力X0 ラダーの [X0]
押していない・配線正常 接点は閉、入力回路に通電 ON 成立
押した 接点は開、通電しない OFF 不成立
押していないが、その直列配線が断線 接点は閉のままでも、入力回路は開路 OFF 不成立

この例では、正常時のONを確認する条件は[X0]です。[/X0]を使えば押下や断線のOFFで成立するため、用途が逆になります。一方、OFFを異常表示に使うなど、反転した条件を意図して書く場合もあります。信号名だけで決めず、実配線、入力設定、プログラムでの使い道を照合します。

三菱電機の教材(印刷頁2-6〜2-7)にも、物理的なb接点をプログラム上ではa接点として使う具体例があります。IDECの非常停止押ボタンの解説では、NC接点を使う理由と直接開路動作機能を説明しています。


接点の読み方と安全機能の設計は分けて確認する

NC接点を使った上の例では、押下と直列配線の断線を、どちらも入力OFFとして扱えます。ただし、NC接点を選んだだけで、安全機能が完成するわけではありません。 短絡など別の故障も考慮し、必要な検出、停止動作、復帰条件を含めて確認します。

一般のPLCのラダーだけに非常停止を任せることはできません。対象設備のリスクと要求に応じて、安全リレーや安全PLCなどを用い、入力機器・安全用の論理・出力機器を含めて設計・検証します。三菱電機の安全制御の説明には、安全プログラムを実行する安全PLCも示されています。「非常停止はすべてのPLCの外側でしか実現できない」とは限りません。

一般PLCへ渡した状態表示用のビットと、停止を実現する安全機能は区別してください。ラダーのON/OFFを正しく読めることだけで、実機の停止性能や安全機能の適合を判断することはできません。


ラダー図が読めると何が変わるか

  • 未成立の入力や内部条件を追い、確認箇所を絞れる
  • 「X10がOFFで、Y0の条件が成立しない」など、メーカーへの問い合わせを具体化できる
  • タイマー値の変更案について、対象の機能と影響範囲を説明できる

読むことと、実機のプログラムを変更する権限は別です。タイマー値だけの変更でも、対象命令・時間単位・参照箇所を調べ、動作順序や停止・復帰への影響を確認します。例えばOMRONのCompoNetマスタユニットのマニュアルは、値やプログラムを変更する前に設備への影響と安全を確認するよう求めています(W456-E1-03、印刷頁xvii・xix/PDF物理16・18頁)。実際の作業では、使用機器のマニュアルと現場の変更手順に従ってください。

変更する場合は、担当者の権限・必要な承認を確認し、元のプログラムを保存します。旧値・新値・理由を記録し、影響する通常運転と停止・復帰の動作を変更後に確かめます。小さな値の変更を理由に、安全機能を迂回して試すことは避けてください。


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