seigitech
MES・DX中級

MESの機能と選定ポイント:製造実行システムの機能マップと比較基準

最終更新日 2026-06-03読了時間 約4対象:製造DX担当者、生産技術担当者、情報システム担当者

この記事でわかること

MES選定で失敗しないための機能マップと比較基準を解説。実績収集・品質管理・スケジューリングなど10機能の要否判断と、パッケージ選定で確認すべき3つのポイント。

1「MESを導入する」と決まったが、何を選べばいいかわからない

DX推進の流れで「MES(製造実行システム)を入れることになった」と言われた。

「いくつかのベンダーから提案が来ているので、比較して選定してください」

でも、MESには標準的な機能が10種類以上あり、すべてを使うわけではありません。自社工場に何が必要で何が不要かを整理しないと、使わない機能にお金を払い続けることになります。

この記事では、MESの標準機能マップと、選定時に確認すべきポイントを整理します。


2MES標準機能の10カテゴリ

ISA-95という国際標準でMESの機能は10カテゴリに分類されています。

# 機能カテゴリ 内容 よく使う場面
1 生産スケジューリング 設備・人・資材の割り当てスケジュール作成 多品種・短納期工場
2 作業指示 作業者・設備への指示配布 紙の作業指示書を電子化したい場合
3 実績収集 生産数・不良数・作業時間などの収集 OEE改善・原価計算に使いたい場合
4 品質管理 検査結果記録・NG管理・SPC 検査記録の電子化・トレーサビリティ要求
5 在庫・資材管理 部品・原材料の引き当て・実績管理 ERPとの連携が必要な場合
6 設備管理 設備稼働状態の監視・アラーム管理 設備停止の原因分析がしたい場合
7 人員管理 作業者の技能・資格・シフト管理 多工程・多能工の工場
8 トレーサビリティ 製品ごとの製造履歴・部品照合 自動車・医療・食品など履歴追跡が必要な業界
9 文書管理 作業手順書・図面の配布・改訂管理 紙の手順書を廃止したい場合
10 エネルギー管理 電力・ガス・エアの消費量監視 省エネ対応・CO2削減が求められる工場

3自社に何が必要かを判断する3ステップ

STEP1:今、何が「見えていないか」を書き出す

MESで解決できるのは「データが見えていない問題」だけです。まず「見えていないこと」を洗い出します。

  • 今日の生産実績を翌日まで集計できない
  • どのロットに問題があったかわからない
  • 設備がなぜ止まったか記録がない

STEP2:その問題が「何の機能」で解決できるか対応させる

洗い出した問題を10機能に当てはめます。必要な機能だけが明確になります。多くの中小工場では3〜5機能で十分です。

STEP3:不要な機能は「将来必要になるか」で判断する

「今は使わないが将来使うかも」という機能は、導入コストが低い場合のみ含めます。使わない機能のライセンス費・保守費は毎年かかります。


4よくある失敗:「全部入り」を選んで使われない

ケース: フルパッケージのMESを導入したが、生産スケジューリングと文書管理の機能は一度も使われなかった。5年間で支払ったライセンス費の40%が無駄だった。

なぜこうなるか:

「せっかく入れるなら全機能」という判断と、ベンダーの「全部使えます」という提案が合わさると、使われない機能が大量に残ります。導入時は「何を使わないか」の議論が抜けやすいです。


5パッケージ選定で必ず確認する3つのポイント

ポイント①:既存設備・PLCとのデータ連携

MESはPLCやSCADAからデータを自動収集することが多いです。「どのPLCメーカーに対応しているか」「追加費用なしで接続できるか」を確認します。

接続費用は想定外に高くなりやすい項目です。100万円以上かかるケースもあります。

ポイント②:ERPとの連携方式

MESで収集した実績をERPに送る場合、API連携かファイル連携かで工数が大きく変わります。ERPとの連携仕様は必ず事前に確認してください。

ポイント③:カスタマイズの費用と工数

パッケージの標準機能だけでは工場に合わない部分が必ず出ます。カスタマイズ1件あたりの費用と、改修のリードタイムを見積もり段階で確認します。


6グレーゾーン:自作かパッケージか

「Excelで代替できる範囲はExcelで、MESは最低限の機能だけ」という選択肢もあります。判断基準:

条件 推奨
工場が1拠点・工程が単純 Excelやスプレッドシート+簡易ツールで十分
多拠点・リアルタイム性が必要 パッケージMESが現実的
独自要件が多い・ITリソースがある スクラッチ開発も選択肢

「MESを入れること」が目的になっていないか確認してください。データが見えるようになることが目的です。


7自動車で例えると

MESはカーナビ・メーター・ECU(エンジン制御)の情報を統合して「今の走行状態」を可視化するシステムと似ています。

  • PLC = エンジン・ブレーキを動かす制御装置(実際に設備を動かす)
  • SCADA = メーターパネル(現在の状態をリアルタイムで見る)
  • MES = トリップコンピュータ+ドライブレコーダー(走行実績を記録・分析する)

MESがなければ「今日何km走ったか、どこで渋滞したか」がわからないまま運転を続けることになります。


8この記事で判断できること

  • MESの10機能のうち自社に何が必要かを整理できる
  • パッケージ選定時に確認すべき3つのポイントがわかる
  • 「全部入り」で失敗するパターンを事前に防げる

9次に読む記事

👷

この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。