「とりあえずシリンダーに電磁弁つければ動く」からの卒業
シリンダーが往復できることだけでは、必要な速度で安定して動くか、停止・復帰時に意図しない動きがないかは判断できない。弁の接続と切替状態、流量・圧力、負荷を確認し、通常運転だけでなく圧力低下や再加圧時の動きも設計する。
空気圧回路を正しく設計するとは、使うデバイスの組み合わせと順序を決め、図面として明示すること。この記事では電磁弁・スピードコントローラー・レギュレータの役割と組み方、シーケンス設計の考え方を整理する。
空気圧回路を構成する主要デバイス
電磁弁(ソレノイドバルブ)
シリンダーへの給気・排気の接続を切り替える弁。ポート数は接続口の数、位置数は切替状態の数を表す。ポート数だけでは、無通電時の接続やシリンダーの動作方向までは決まらない。
| 種類 | 構成 | 用途と確認点 |
|---|---|---|
| 2ポート2位置(2/2弁) | 入側・出側 × 2位置 | 流路の開閉。閉じても下流の排気を行うとは限らない |
| 3ポート2位置(3/2弁) | 供給・出力・排気 × 2位置 | 単動シリンダーなど。無通電時に供給を閉じるNCと開くNO、復帰方法を確認 |
| 5ポート2位置(5/2弁) | P・A・B・排気2口 × 2位置 | 複動シリンダーの往復動。各位置で片側へ給気し、反対側を排気 |
| 5ポート3位置(5/3弁) | 上記 × 3位置 | 中立位置の接続が閉センタ・排気センタ・加圧センタなどで異なる |
判断の基本: 複動シリンダーの往復には5/2弁、ばね戻り単動には3/2弁を検討する。たとえば、無通電で出力を排気するNC弁を押出し単動シリンダーへ接続すれば、通電で押し出し、排気でシリンダーのばねが戻す。NC/NOや配管が異なれば、同じ説明にはならない。
シングルソレノイドとダブルソレノイドの選択:
- シングル(片側電磁): 通電で切り替え、ばねなどで弁が復帰する型式。弁の復帰とシリンダー自体のばね戻りは別であり、電源断時のシリンダー動作は接続・残圧・荷重にもよる。
- ダブル(両側電磁): 両側の信号で弁を切り替え、信号を切っても弁の切替状態を保つ型式がある。これはシリンダーを任意位置で停止させたり、重力荷重を安全に保持したりする保証ではない。空気が供給されていれば移動を続ける場合があり、圧力喪失時の保持も別に検討する。
5/3閉センタは中立で各ポートを閉じるが、空気の圧縮性や内部漏れがあるため、精密な中間停止や長時間の位置・荷重保持を弁だけに任せない。中立の種類、弁の初期状態、必要な圧力、停止精度・保持時間を型式ごとに確認する。垂直荷重を支える必要がある場合は、適切な機械的支持や保持機構と、その作動・解除条件まで設計する。
根拠:CKDの弁作動説明(3.1、印刷9頁)、SMC SXシリーズ取扱説明書(中間停止・圧力保持・残圧開放、印刷4頁)。個別製品の用途制限を、すべての弁に共通する仕様とは扱わない。
スピードコントローラー(スピコン)
シリンダーの速度を調整する絞り弁。メータアウトとメータインの2種類がある。
| 方式 | 仕組み | 使いどころ |
|---|---|---|
| メータアウト | 排気側を絞る | 複動シリンダーの通常の速度調整。許容速度・負荷と必要な排気側圧力を確認 |
| メータイン | 給気側を絞る | 負荷・速度域・機種に応じた回路で使用。重力で動く負荷を給気絞りだけで制御しない |
垂直下降でメータインだけを使うと、自重による急な動きを抑えられない場合がある。メータアウトを基本に型式の推奨回路を確認する。ただし、速度調整と落下防止は別の機能。メータアウトを付けても、配管破断や圧力低下時に荷重を保持できるとは限らない。
微速形では、低負荷時の初動飛出しを抑えるため給気側と排気側の絞りを組み合わせるメーカー指定例もある。方式名だけで一律に選ばず、取付方向・負荷方向・速度域・始動時の圧力条件を確認する。
スピコンはシリンダーの近くに設け、配管の容積や長さも含めて速度の安定性を確認する。CKD CMK2の微速形注意事項(印刷288頁)は、近接設置、垂直時のメータアウト併用と指定回路を示している。微速形の例を全型式の回路へそのまま流用しない。
レギュレータ(減圧弁)
上流圧力を必要な使用圧力に減圧する機器。供給圧力・使用流量によって出口圧力が変わるため、動作時の圧力と必要推力を確認して設定する。次は構成の説明例で、圧力値は全設備共通の指定値ではない。
工場元圧(0.6〜0.8MPa)
↓
エアフィルター(粒子・液状ドレン等を型式の能力範囲で除去)
↓
レギュレータ(設備用に0.4〜0.5MPaに設定)
↓
ルブリケーター(必要なら潤滑油添加)
↓
電磁弁 → シリンダー
この流れは空気処理の概念で、遮断・残圧排出・荷重保持を省略した説明図である。必要な空気品質に合わせてドライヤやミストセパレータなどを選び、水分・油分をフィルター1台ですべて除去できるとは考えない。供給圧の下限、機器の使用圧力範囲、配管の圧力損失を含めて決める。
FRLは、フィルター(F)、レギュレータ(R)、ルブリケーター(L)を組み合わせる構成を指す。これらを常に3点そろえるのではなく、必要な空気処理・圧力調整・給油の機能を選ぶ。SMC ACシリーズ取扱説明書(用途・組合せ、印刷8〜9頁)にも、ルブリケーターを含まない組合せがある。構成・設置位置・台数は、系統ごとの流量、要求圧力、空気品質と給油条件を確認して決める。設備の数だけから1ユニットと決めない。
給油の要否は採用機器の指定を確認する。たとえばSMC SXシリーズ取扱説明書(給油、印刷7頁)は、初期潤滑剤により無給油で使用できることを示している。この説明は当該シリーズのもので、給油禁止やすべての機器が同じ仕様という意味ではない。
給油する場合は、指定油・給油量・継続給油など機器ごとの条件を守る。SMCの給油時注意事項では、途中での給油中止による作動不良に注意を求めている。給油可否が分からない場合は、任意に追加せずメーカーへ確認する。
空気圧回路図の記号
回路記号と接続図を対応させて読む。図記号の参照先はJIS B 0125-1:2020の概要と、採用機器の図面・取扱説明書。以下は機能を整理する表であり、正式な図記号や製作回路図の代用ではない。
シリンダーの機能を区別する
| 種類 | 回路で確認すること |
|---|---|
| 複動 | 両側のポートを弁へ接続し、一方へ給気するときの他方の排気経路を追う |
| 単動・ばね戻り | 給気側、シリンダーのばねによる復帰方向と排気経路を確認する。弁側の復帰ばねと区別する |
5/2弁の接続を追う例
ここでは供給をP、シリンダー側をA・B、A側・B側の排気口をそれぞれEA・EBと呼ぶ。実機ではメーカー図面のポート名称・番号に読み替える。
| 弁の位置 | 給気経路 | 排気経路 | この位置で閉じる排気口 |
|---|---|---|---|
| 位置1 | P → A | B → EB | EA |
| 位置2 | P → B | A → EA | EB |
Aをヘッド側、Bをロッド側へつなぐ説明例なら、位置1は押出し、位置2は引込みとなる。配管を入れ替えれば方向も変わる。無通電時にどちらの位置になるかは、操作・復帰方式と弁の状態による。
正式な形状はCKDの空気圧図記号一覧(方向制御弁、印刷4〜5頁)で確認できる。隣接する枠で弁の各位置、その中の線・矢印で接続や流れの方向を確認する。閉止、排気、操作部、復帰部の記号も合わせて読む。
回路図の読み方
紙面の上下を空気の流れと決めつけず、接続線と弁の各位置を追う。
- 供給口から、遮断・空気処理・圧力調整の経路を確認
- 弁の各位置について、どちらのシリンダーポートへ給気するかを確認
- 反対側の空気がスピコン・弁・排気機器を通って抜ける経路を確認
- 無通電・圧力低下・停止・復帰時に、荷重が動くか、閉じ込め圧力が残るかを確認
シーケンス設計の考え方
複数のシリンダーを順番に動かす場合、シーケンス(動作順序) を設計する。
動作順序の表現方法
シリンダーをA・B・Cとし、前進を+、後退を−で表す。
例:A前進 → B前進 → A後退 → B後退 の場合
A+ → B+ → A− → B−
これをラダー図(PLCプログラム)やSFCに落とし込む前に、空気圧回路の配管と電磁弁の配置を決める。
インターロックの設計
シリンダーの誤動作防止のため、センサーで前進完了を確認してから次の動作に移るのが基本。
A前進 → Aの前進端センサーON → B前進開始
タイマーだけでは、ワーク詰まりや速度変化があっても所定位置へ到達したか確認できない。次動作に位置確認が必要な工程では、検出位置・応答時間・故障時の扱いを含めてセンサーと制御を設計する。通常の位置センサーとPLCの順序制御を追加するだけで、人の安全を確保する機能が成立するわけではない。
停止・保全・復帰時の状態も設計する
電源を切ること、空気を遮断すること、残圧を抜くこと、荷重を保持することを分けて確認する。排気で垂直荷重が下がる回路では、先に機械的に支持するなど、落下・逸走を防ぐ手段が必要になる。閉センタ弁や逆止弁の先には残圧が閉じ込められる場合があるため、元弁の遮断だけで無圧と判断しない。
保守で機器を取り外すときは、採用機器の手順に従い、荷重の落下・逸走を防いでから動力と供給空気を遮断し、対象部分の残圧を排出・確認する。再加圧時の飛出しや予期しない再始動も評価する。非常停止時の保持/排気の選択は機械全体のリスクと必要な安全機能に基づいて決め、一般の電磁弁・センサーだけで成立するとみなさない。
SMC CS2取扱説明書(保守・復帰、クッション・速度制御)は、落下・逸走防止と遮断・排気、再起動時の飛出し対策を求めている。実機では型式・回路・荷重ごとに確認する。
設計で確認したい問題
ミス1:電磁弁の排気音対策なし 排気音を評価し、サイレンサー(消音器)や集合排気など必要な対策を設計する。サイレンサーは流量・許容背圧・消音性能と設置空間を確認して選ぶ。容量不足や目詰まりは排気速度を低下させるため、取り付ければ排気抵抗が一定になるとはいえない。SMC ANシリーズの注意事項(印刷826頁)に沿って、弁との流量特性の対応と点検・交換条件を確認する。
取付け後に干渉する可能性も考え、サイレンサーの外形だけでなく、排気が妨げられない配置と点検・交換に必要な空間を設計時に確認する。
ミス2:配管径が細すぎる 配管や弁の流量が不足すると、必要な速度で動かせなくなる。ボア径だけで配管径を決めず、ストローク、動作時間、圧力、配管の長さ・内径から所要流量を確認する。チューブの外径が同じでも内径が異なる製品があるため、図面には使用製品と内外径を区別して指定する。
SMCのエアシリンダ選定技術資料(所要空気量、印刷1574頁)を参照し、継手・電磁弁・スピコン・サイレンサーを含む経路全体の流量特性と圧力損失を確認する。ボア径からφ6/8/10などへ一律に対応させるだけでは、必要速度を満たすか判断できない。
ミス3:ドレン対策なし エアフィルターに溜まったドレン(水分)を抜かないと、電磁弁やシリンダーに水が混入してサビ・動作不良の原因になる。オートドレン付きフィルターを選定するか、定期排水の手順を保全に引き継ぐ。排水周期は稼働時間とドレンの蓄積量、型式の限度水位で決め、限度に達する前に排出する。オートドレンも作動確認が必要。SMC ACシリーズ取扱説明書(保守点検、印刷7頁)は、バッフルの水位に達する前の排出を求めている。
ミス4:シリンダーストローク端での衝撃 シリンダーが端まで到達したときの衝撃音・衝撃力が大きい場合、クッション付きシリンダーを選定するか、端部にショックアブソーバーを配置する。スピコンだけでは吸収できない衝撃がある。負荷質量・速度・取付方向から必要な吸収能力を確認し、クッションや外部吸収器の許容範囲内で使う。
空気圧回路図の描き方チェックリスト
□ 供給圧力源と、必要な空気処理・圧力調整・給油機器を系統ごとに記載した
□ 使用する電磁弁のポート数・位置数を明記した
□ スピコンのメータイン/アウト方向を明記した
□ 排気音対策の位置・容量と目詰まり点検を記載した
□ 配管の製品・内外径・長さと必要流量を各系統で確認した
□ シリンダーのクッション有無を記載した
□ 動作シーケンス(A+B+A−B−等)を別紙または同図に記載した
□ 確認センサーの取付位置を記載した
□ 停止/圧力喪失時の荷重保持と、残圧排出・再加圧時の動きを確認した
□ 非常停止などの必要な安全機能と、通常の順序制御を区別して設計した
社内で説明するときの言い方
上司・設計者に対して: 「この垂直軸の速度調整は、採用型式の推奨回路に従いメータアウトを基本にします。圧力低下時の荷重保持は別に設計し、停止・復帰時の動きも確認します。」
外注先・機器メーカーに対して: 「この往復動では5ポート2位置弁を検討します。無通電・圧力低下時の弁状態とシリンダーの動き、荷重保持方法を確認して型式を決めます。速度調整回路とクッションは、負荷・速度・停止条件に合わせて選定してください。」
現場・保全担当に対して(手順を説明する例): 「速度調整はシリンダーポート横のスピコンのネジで行ってください。締め込むと遅く、緩めると速くなります。フィルターのドレンは週1で排水してください。」
上記の排水周期を共通基準にせず、採用機器の限度水位と実際の蓄積量を確認して手順化する。速度調整も、可動範囲への立入りを防ぎ、指定手順と許容速度の範囲で行う。
まとめ:空気圧回路設計で決める3点
- 電磁弁の接続と停止状態——用途からポート数・位置数・復帰方式を選び、弁状態と荷重保持を区別する
- 速度調整と空気の経路——型式・負荷に合う絞り方式と流量を選び、排気・残圧・再加圧を確認する
- シーケンスと安全機能——必要な位置確認を設け、通常の順序制御と人を守る安全機能を分けて検証する
次のステップ:
- シリンダーの選定と設計 — シリンダー本体の仕様選定へ
- インターロック設計の基礎 — PLCでのシーケンス制御と安全設計へ
- フェイルセーフ設計 — 停電・エア遮断時の安全設計へ