この記事でわかること
- 「稼働率」「可動率」「OEE」それぞれの定義と計算式
- 3つの指標がどう違うのか、一覧表で整理した比較
- 指標の混同を避けるための確認と使い分け方
- 仮定した数値を使ったOEEの計算例とチェックリスト
まず結論——稼働率・可動率・OEEは「測る対象」がそれぞれ異なる
稼働率とOEEの数値を見るときは、両者の分母と対象期間を確かめます。動いている時間が長くても、速度ロスや不良があればOEEは下がります。指標名だけで判断せず、時間と数量の定義をそろえることが出発点です。
3つの指標は何を分母にするか、そして何の損失を対象にするかがそれぞれ異なります。まず一覧で確認してください。
| 指標 | 一言で言うと |
|---|---|
| 稼働率 | 計画に対して、どれだけ動かしたか |
| 可動率 | 動かそうとしたとき、実際に動けたか |
| OEE | 時間・速度・品質の3つの損失をまとめて見る |
この記事では、稼働率を「操業として確保した計画枠に対する実績」、可動率をOEEの時間稼働率(Availability)として使います。これは本記事の計算上の区別であり、漢字だけで共通の定義が決まるわけではありません。たとえばキヤノンITソリューションズの説明もAvailabilityを可動率と呼んでいます。社内資料と比べるときは、分母・分子・除外時間をそろえてください。
各指標の定義と計算式
稼働率とは——計画時間に対して実際に動いた割合
稼働率(%)= 実稼働時間(計画通りに動かした時間)÷ 計画稼働時間 × 100
「実稼働時間」は、以下の可動率で使う「稼働時間」と同じ時間です。分母の計画稼働時間は休憩を含む操業枠とし、比較時にはどの時点の計画を使ったかも固定します。計画枠を残したまま生産予定を減らせば、この稼働率は下がります。シフト短縮に合わせて分母も変えれば必ず下がるとは限りません。生産計画・シフト管理の文脈で使う指標です。
たとえば8時間(480分)の操業枠に対し、休憩30分と故障・段取り停止50分を除いて400分稼働したと仮定します:
稼働率 = 400 ÷ 480 × 100 = 83.3%
重要なのは、稼働率が低い原因が「需要不足」であれば、それは設備の問題ではないということです。受注が少ない時期には意図的に低くなることもあります。稼働率だけを設備の健全性指標として使うと、この「需要の影響」と「設備本来の問題」を混同してしまいます。
可動率とは——動かそうとしたときに実際に動いた割合
可動率(%)= 稼働時間(負荷時間から故障・段取り停止を差し引いた時間)÷ 負荷時間 × 100
- 負荷時間:操業枠から、休憩など事前に生産を予定しない時間を除いた時間。ここでは故障・段取り停止を除く前の時間とします
- 稼働時間:負荷時間から故障・段取りなどの停止を引いた時間(チョコ停をここで引くかは社内ルールしだい。下記)
本記事では可動率の分母を「負荷時間」と呼び、休憩を含む計画稼働時間と区別します。先ほどの例なら480分から休憩30分を除いた450分です。可動率は生産を予定した時間のうち、停止を差し引くと何分残ったかを表します。
たとえば負荷時間が450分で、故障30分・段取り20分があった場合:
稼働時間 = 450 - 30 - 20 = 400分
可動率 = 400 ÷ 450 × 100 = 88.9%
可動率が低ければ、負荷時間に対する停止の割合が大きいことを示します。故障・段取りなどの理由別停止時間と合わせて、設備保全や改善の対象を選びます。チョコ停を性能側に含める運用では、可動率だけではその損失はわかりません。
時間の層と、呼び名の対応
分母が違えば、同じ設備でも割合は変わります。ここでは1日1直の説明用条件を仮定し、暦時間と操業枠を分けます。
| 時間の層 | 本記事の定義・同じ1日の例 | 指標との対応 |
|---|---|---|
| カレンダー時間 | 1日24時間=1440分 | OEEの分母ではない |
| 計画稼働時間 | 非操業960分を除いた8時間の操業枠=480分 | 本記事の稼働率の分母 |
| 負荷時間 | 480分から休憩30分を除く=450分 | 可動率・OEEの分母 |
| 稼働時間 | 450分から故障30分・段取り20分を除く=400分 | 可動率の分子、性能稼働率の分母 |
| 正味稼働時間 | 基準CT1分/個×総生産数380個=380分 | 性能稼働率の分子 |
| 価値稼働時間 | 基準CT1分/個×良品数372個=372分 | OEEの分子に相当 |
非操業960分は24時間から操業枠を求める際に一度だけ引きます。480分の枠から夜間・休日を重ねて引きません。正味・価値稼働時間は基準CTで換算した時間で、別にストップウォッチで測った時間ではありません。
⚠️ 同じ言葉が別の層を指すことがある。 当サイトのOEEの基礎では、 OEEの時間稼働率の分母を「計画稼働時間」と呼んでいますが、それはこの記事でいう「負荷時間」にあたります (生産を予定しない休憩などを除き、その時間内の故障・段取り停止はまだ引く前の分母です)。「計画停止」という名前だけで段取りを分母から外さず、各資料の時間区分を確かめます。
社内で数字を出すときは、指標名より先に「分母は何分か」を書く。 そこが一致していれば、呼び名が違っても話は通ります。
OEE(設備総合効率)とは——3つの損失を一括で見る総合指標
OEE(%)= 可動率(0〜1)× 性能稼働率(0〜1)× 良品率(0〜1)× 100
3つの構成要素はそれぞれ以下の損失に対応しています。
| 構成要素 | 計算式 | 対応する損失 |
|---|---|---|
| 可動率 | 稼働時間 ÷ 負荷時間 | 故障ロス、段取り・調整ロス |
| 性能稼働率 | (基準CT × 総生産数)÷ 稼働時間 | 速度低下ロス、空転ロス(チョコ停をここに数える現場もある) |
| 良品率 | 良品数 ÷ 総生産数 | 不良・手直しロス、立ち上がりロス |
基準CTは、その製品・設備が適切な条件で達成できる最短サイクルタイムとして設定し、分/個と秒/個を混ぜません。良品数には手直しなしで要求品質を満たした個数を使います。Vorneの計算説明では、3要素の積は「基準CT×良品数÷生産を予定した時間」と一致します。
チョコ停を可動率の停止へ記録するか、性能低下に含めるかは、停止の記録基準とともに事前に決めます。可動率の分子と性能稼働率の分母には同じ稼働時間を使い、同じ停止を追加で二重控除しません。 Vorneの分類では短い停止を性能側、理由を記録する停止を可動率側へ置きますが、特定の秒数を全設備共通の境界にはしません。
85%は離散製造で紹介される目安の一つで、全設備の合格線ではありません。Vorneの目標値の解説も、異なる製品構成や工程の数値を単純比較せず、自工程の改善を追うよう説明しています。OEEは時間・速度・品質の損失をまとめて把握する指標です。設備間で比較するときは製品、基準CT、良品判定、時間の定義をそろえます。投資判断には需要・ボトルネック・安全品質・費用も必要で、OEEだけで更新の要否は決めません。
3つの指標を比較する——一覧表で整理
| 指標 | 分子 | 分母 | 主な用途 | 低いときに疑うこと |
|---|---|---|---|---|
| 稼働率 | 実稼働時間(計画対比) | 計画稼働時間 | 生産計画・シフト管理 | 計画枠に対する生産予定の減少、停止 |
| 可動率 | 稼働時間(負荷時間-停止時間) | 負荷時間 | 設備保全・日常管理 | 故障、段取りロス(チョコ停はここに数える現場もある) |
| OEE | ——(3要素の積) | 負荷時間(起点) | 改善報告・設備投資判断 | 時間・速度・品質のどれかに損失 |
本記事の定義では、稼働率と可動率は分子を共通にし、分母を区別します。同じ400分でも400/480=83.3%と400/450=88.9%です。操業枠から除く時間がなければ、両者が同じ値になる場合もあります。
出来事別・影響指標マトリクス
本記事の定義による直接的な影響。計画の扱いと他条件をそろえて読む
| 現場で起きた出来事 | 稼働率 | 可動率 | OEE |
|---|---|---|---|
| 当初の操業枠を残し、事前の生産予定を減らす | ↓ 下がる | — | — |
| 負荷時間内の故障・段取り停止が増える | ↓ 下がる | ↓ 下がる | ↓ 下がる |
| 生産速度が基準より遅い(速度ロス) | — | — | ↓ 下がる |
| 不良・手直しが増える(品質ロス) | — | — | ↓ 下がる |
読み方:「—」はその損失を直接計上しない意味で、現実の数値が必ず不変という意味ではありません。需要の行は当初の操業枠を固定し、生産予定から外した時間を負荷時間に含めず、残る負荷時間の3要素は同じと仮定します。生産予定内で突然止まった時間を、事後に分母から外す扱いではありません。他の行も示した損失以外の条件をそろえた比較です。停止による再起動不良などの波及は別に記録します。
指標を混同しないための確認点
「稼働率が高いから設備は問題ない」は危険
時間稼働率が高くても、性能稼働率や良品率が低ければOEEは低くなります。時間稼働率だけを改善KPIにすると、速度低下や品質損失を十分に捉えられないため、3要素を分けて確認します。
時間稼働率だけでは速度ロスと品質損失を分けて捉えられません。月次OEEが変化した場合は、3要素と、その計算に用いた時間・数量・理想サイクルを確認します。動いていた時間と、その間の速度・良品数を併せて見ることが必要です。
稼働率だけで判断せず、同じ期間・製品・時間定義でOEEの3要素を確認してください。低い要素と理由別の損失記録から原因を調べます。
「可動率」と「稼働率」の漢字を逆に覚えている
どちらも「かどうりつ」と読みます。現場で混同されやすい理由の一つです。
覚え方のコツは「漢字の意味」に注目することです。
- 稼働率:「稼ぐ」→ どれだけ計画通りに稼いだか(計画比の指標)
- 可動率:「可能」→ 動くことが可能だったか(設備能力の指標)
OEEの計算で「どの時間を分母にするか」でブレる
社内でOEEを運用するときは、計算の定義を統一してから導入することが重要です。特に以下のケースでブレが生じやすいため、事前にルールを決めておいてください。
- 段取り時間の扱い:本記事では負荷時間に含め、可動率の停止ロスとします。予定済みの段取りも、生産を予定しない休憩と同じ理由では除外しません。Vorneの損失分類もこの区別です。別の社内定義で除外する場合は、同じ条件のOEEとして混ぜず差を明記します
- 始業点検・朝礼の扱い:生産を予定する時間に含めるかを事前に決めます。含めない時間は負荷時間の前で除き、含めた時間での停止は理由とともに記録します
- 勤務帯によるルールのばらつき:夜勤と昼勤で計上ルールが異なっているケースがあり、データを合算するときに整合性が取れなくなります
定義がバラバラなまま複数ラインのOEEを比較しても意味がありません。まず現場ごとのルールを書き出し、工場全体で統一することが、OEE改善活動の第一歩です。
実務チェックリストと計算例
計算例:ある設備の1日分をOEEまで分解する
実測事例ではなく、1日1直・1製品を仮定した計算例です。上の時間表と同じく、暦1440分から非操業960分を除いた操業枠480分、休憩30分を除いた負荷450分を使います。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 計画稼働時間(8時間の操業枠) | 480分 |
| 生産を予定しない休憩 | 30分 |
| 負荷時間 | 450分 |
| 故障停止 | 30分 |
| 段取り時間 | 20分 |
| 稼働時間(負荷時間-停止合計) | 400分 |
| 基準CT | 1分/個 |
| 総生産数 | 380個 |
| 不良数 | 8個 |
| 良品数 | 372個 |
ステップ1:可動率
可動率 = 400 ÷ 450 × 100 = 88.9%
ステップ2:性能稼働率
性能稼働率 = (1分/個 × 380個)÷ 400分 × 100 = 95.0%
基準CTが1分/個なら、400分あれば理論上400個作れます。実際は380個なので、95%の効率です。
ステップ3:良品率
良品率 = 372 ÷ 380 × 100 = 97.9%
ステップ4:OEE
OEE = (400/450) × (380/400) × (372/380) × 100
= 372/450 × 100 ≈ 82.7%
8時間の操業枠から、良品を作った換算時間まで
全バーの幅は計画稼働480分を100%とする。OEEの分母450分とは区別
図のバーは計画稼働時間比です。OEEと暦時間比は、それぞれ次の分母で計算します。
| 数字 | 何を何で割ったか | 呼び方 |
|---|---|---|
| 82.7% | 価値稼働時間372分 ÷ 負荷時間450分 | これがOEE |
| 77.5% | 価値稼働時間372分 ÷ 計画稼働時間480分 | 図のバーの幅。計画稼働時間比 |
| 25.8% | 価値稼働時間372分 ÷ カレンダー時間1440分 | カレンダー時間比。OEEではない |
カレンダー時間比をOEEと呼ばないこと。 夜間を止めている設備は、動かし方が上手でも低く出ます。 逆に24時間動かす前提の設備と並べると、設備の良し悪しではなく操業の形を比べてしまいます。
解釈: この仮定例では停止50分、速度ロス20分、品質ロス8分相当で、時間換算した損失が最も大きいのは停止です。理由別停止記録から故障対策・段取り短縮を検討できます。ただし、品質不良の重大さ、安全、対策費用も見て着手先を決めます。82.7%だけで設備の合否や投資効果は判断しません。
可動率・稼働率計算ツールでは計画480分・負荷450分・停止50分で比較できます。OEE計算ツールは3要素の百分率を入力する方式です。丸めた88.9・95.0・97.9を入力した値には丸め差が出るため、厳密な確認は上の未丸め式で行ってください。
指標選択チェックリスト
目的に合った指標を選ぶための判断フローです。
- 今日の設備が何分止まったか管理したい → 可動率を使う(負荷時間に対する停止ロスを把握)
- 設備を何時間使う予定か計画・管理したい → 稼働率を使う(計画稼働時間に対する実績を把握)
- 設備の損失全体を1つの数字で把握したい → OEEを使う(時間・速度・品質の損失をまとめて可視化)
- 改善活動の成果を経営層に報告したい → OEEと3要素の推移を使う(時間定義・製品・基準CTをそろえ、改善施策と損失記録を併記する)
- 設備更新の投資判断をしたい → OEEで現状の損失を分解し、需要・ボトルネック・安全品質・費用と合わせて判断する(設備導入の進め方・全体フローも参照)
- OEEが低い原因を特定したい → 可動率・性能稼働率・良品率を個別に確認(3要素のどれが足を引っ張っているかを特定する)
まとめ
「どれが一番大事か」ではなく、目的に応じて正しい指標を選ぶことが現場での判断力につながります。まずは自分の職場でどの指標をどう定義して使っているかを確認し、定義が曖昧なら今日中に書き出してみてください。定義がバラバラなまま改善活動を続けると、月次レビューで数字がかみ合わなくなります。