「とりあえず2sqで」では設備が壊れることがある

制御盤や設備配線で「電線はとりあえず2mm²(2sq)でいい」という判断をすると、負荷電流が多い回路で電線が発熱して絶縁劣化・最悪の場合は火災につながる。

電線サイズを考える入口は、流す電流と配線の長さです。ただし、同じ断面積でも線種、周囲温度、配管や束ね方、可動条件によって使える範囲が変わります。この記事では、許容電流と電圧降下を確認し、機器の仕様・過電流保護と照合して選定する手順を整理します。


電線選定の2つの基準

基準1:許容電流(温度上昇の制限)

電線に電流を流すと抵抗によって熱が発生します。許容電流は、決められた布設・温度条件で継続して流せる電流です。断面積だけの一覧を、あらゆる設備配線に共通する許容値として使わないこと。

メーカーの許容電流表を使う前に、次の条件をそろえます。

確認する条件 照合する内容
線種・導体・絶縁体 IV、HIV、CVなどの型式、銅・アルミ、導体の許容温度
線心数と通電状態 単心・多心、通電する心数、隣接する回路
周囲温度 盤内・配管内など、実際に電線が置かれる場所の温度
布設方法 気中、電線管、ダクト、束ね本数と間隔など、表の条件との一致
負荷と運転 定常電流、始動・突入電流、その継続時間と頻度
保護・接続部 遮断器やヒューズの定格・動作特性、端子の定格と適合電線

例えば、フジクラ・ダイヤケーブルの許容電流資料は、線種・布設・周囲温度を分け、電線管内の本数に応じた低減係数も別に示しています。「束ねたら一律0.6〜0.7倍」と決めず、選んだ表と布設条件に対応する補正を使います。別条件の表の値や、既に補正済みの値へ係数を重ねないよう、計算書に表の出所と条件を残します。

負荷電流に一律1.25を掛けただけでは、選定は完了しません。必要な余裕は負荷の特性、機器の指定、適用する設計基準に沿って決めます。電線が通常運転に耐えることに加え、過負荷・短絡時に保護装置が適切に動作する組合せかを電気設計者の選定資料で確認します。Schneider Electricの選定解説も、配線と保護装置を一緒に検討し、始動時などを含めて確認する考え方を示しています。

基準2:電圧降下(末端電圧の確保)

長い距離を引き回すと電線の抵抗などで電圧が下がり、末端の機器が正常動作しなくなることがあります。回路方式を確かめてから式を選びます。

直流2線式の概算では、往路と復路が同じ材質・断面積・長さで、途中に分岐がなく電流が同じなら、次のように求めます。接触部の抵抗や電源側の変動は、この式には含めていません。

電圧降下 ΔV(V)= 2 × ρ × L × I / A
 ρ:導体の抵抗率(Ω·m)
 L:片道距離(m)
 I:電流(A)
 A:断面積(m²)

計算例として銅のρを1.72×10⁻⁸ Ω·mと仮定すると:
ΔV = 34.4 × L × I / (1000 × S)
 S:断面積(mm²)。上のAとは単位が異なる。

係数35.6を使う式は、ρ≒1.78×10⁻⁸ Ω·mを仮定した計算に相当し、ρ=1.72×10⁻⁸の式とは一致しません。同じ長さ・電流・断面積なら34.4より約3.5%大きな電圧降下になりますが、この差だけで使用温度や接続部まで含めた安全側の計算になるわけではありません。実際の選定では、対象ケーブルの導体抵抗と使用温度を確認します。社内標準にも、どの抵抗率・温度・単位を前提にした式かを残します。

交流では力率とリアクタンスも関係します。フジクラ・ダイヤケーブルの電圧降下解説では、単相2線式と三相の線間電圧で係数を分けています。

単相2線式:ΔV ≒ 2 × I × ℓ × (R cosφ + X sinφ)
平衡三相の線間:ΔV ≒ √3 × I × ℓ × (R cosφ + X sinφ)
 I:負荷電流(A)、ℓ:片道長(km)
 R:導体の交流実効抵抗(Ω/km)、X:リアクタンス(Ω/km)
 φ:電圧と電流の位相差、cosφ:力率

これらは定常状態の計算です。モーターは、始動電流・始動時の力率と上流配線の降下も含めて確認します。Schneider Electricの計算例でも、通常運転と始動を分けています。不平衡やインバータ出力側などは、この簡略式だけで判断せず、回路と機器の指定に合う計算方法を確認します。

機器の許容電圧範囲と、配線に使える電圧降下の幅は別です。 電源が最も低くなる条件から、上流配線や接続部の降下を差し引いても、機器端子で必要な電圧を確保する必要があります。DC24Vの機器すべてに21.6Vという共通下限があるわけでもありません。例えばオムロンE3Zの定格では、電源電圧の範囲と出力側の負荷定格が別に記載されています。採用品番の取扱説明書で端子電圧・リップル・出力条件を確認します。

200V系なら20V、DC24Vなら2.4Vを配線だけで使ってよい、と一律に扱わないこと。設備の適用基準、電源の変動、定常・始動条件と機器の許容範囲から、配線に割り当てる降下量を決めます。


用途別のケーブル選定

動力線(モーター・ヒーター)

  • IV線: 600Vビニル絶縁電線。耐熱型のHIV(二種ビニル絶縁電線)と区別します。メーカー資料の導体最高許容温度はIVが60℃、HIVが75℃です。これは周囲温度の許容上限を表す数字ではありません。
  • CV線・CVT線: 動力配線の候補。定格電圧、布設条件、温度、必要な断面積を製品仕様で照合します。名称だけで可動部への適合を判断しません。
  • VCTなどのキャブタイヤケーブル: 柔軟性が必要な配線の候補。ただし、柔軟であることと連続屈曲に適合することは別です。移動方法と回数を示し、その用途をメーカーが認めた型式を選びます。

制御線・信号線

  • CVVとシールド付きのCVV-Sなど: 制御・計装用ケーブルの製品表で、正式名称と遮へいの有無を確認します。アナログ信号やエンコーダーに使えるかは、機器が指定する対より構造、容量・帯域、距離、シールドの仕様も照合します。
  • 産業用Ethernet: Cat5e/Cat6といったカテゴリだけで決めず、採用ネットワークと機器が指定するケーブル、コネクタ、最大長、可動・耐油条件を確認します。
  • PLC用I/O配線: 一律0.3〜0.5mm²とはせず、入力・出力それぞれの負荷、電圧降下、端子が受け入れる導体と断面積で選びます。センサ出力とPLC入力の電圧・方式・COMの照合は、センサー選定の基礎も参照します。

可動部・ロボットケーブル

「高屈曲」「ロボットケーブル」という名称だけでは、スライダの往復屈曲とロボットのねじりの両方に使えるとは判断できません。動作の種類、曲げ半径、移動距離、速度・加速度、温度・油などの環境を示し、対象型式の仕様と試験条件を確認します。ねじり用途の製品例のように、動作に対応する仕様で比較します。

一般電線は100万回以下、高屈曲品は1000万回以上、という共通の境界は使いません。igusの型式別試験報告も、製品と曲げ半径を対応させ、ダブルストロークなどの回数定義を記載しています。試験の回数は、そのまま別の動作・取付条件での寿命保証にはなりません。


よくある選定ミスと対策

ミス1:電圧降下の計算をしない

DC24V制御回路で、センサーまでの距離が長い配線を細い電線で引き回した結果、センサーの動作電圧が不足してON/OFFが不安定になる。

計算例: 直流2線式、一定電流0.5A、片道20m、往復とも0.5mm²とし、係数35.6を使う仮定なら、次の値になります。特定のセンサーの仕様を示す例ではありません。

ΔV = 35.6 × 20 × 0.5 / (1000 × 0.5) = 0.712V
電源端子が24.0Vなら、末端は 24.0 - 0.712 = 23.288V(約23.3V)

片道50mなら:
ΔV = 35.6 × 50 × 0.5 / (1000 × 0.5) = 1.78V
末端は 24.0 - 1.78 = 22.22V(約22.2V)

ここまでの計算だけで「問題ない」とは判定できません。電源端子の最低電圧、使用温度に対応した抵抗、途中の接続部と負荷電流の変化を加え、採用機器の端子電圧範囲と比較します。電源が24.0Vより低ければ、末端電圧もさらに低くなります。

ミス2:可動部に一般電線を使う

ロボットのハーネスやスライダの配線は、CVなどの線種名や柔軟性だけで選びません。繰返し屈曲やねじりへの適合が確認できない型式を、可動部へ採用しないこと。

寿命を比較するときは、対象型式の動作・曲げ半径・取付け・環境条件と、試験回数の数え方を確認します。igusの型式別試験報告も、製品と曲げ半径を対応させて回数を示しています。その値を一般CV線の共通寿命へ転用したり、型式・条件の根拠なしに交換周期を決めたりしません。

対策: 必要屈曲回数は「1日のサイクル数 × 年間稼働日数 × 設計寿命(年)× 1サイクルあたりの屈曲回数」で計算します。年間稼働日数とサイクル内の回数を落とさないこと。往復を1回と数えるメーカー試験と、片道ごとを1回とする計算を、そのまま比較しないようにします。数え方をそろえてから、同じ曲げ半径・動作条件での仕様と照合します。ねじり寿命が必要な部位では、屈曲試験の回数だけで代用しません。

ミス3:信号線のノイズ対策を型式と結び付けない

温度センサー(熱電対・PT100)やアナログ出力(4〜20mA)の配線にシールドなしの電線を使い、ノイズで測定値が揺れる。

対策: 接続機器が指定する信号線、シールドの終端、動力線との経路分離を確認します。熱電対などは、シールドの有無に加えて測定方式に適合する線材が必要です。

シールドを盤側片端へ接地する方式が適する場合もありますが、「すべて片端だけ」「両端は必ず悪い」とは決めません。Analog Devicesの解説でも、信号とケーブルの構成、両端の接地電位に応じて扱いを分けています。これは接続機器の施工指示に代わるものではありません。対象機器の取扱説明書を照合し、両端の電位差やノイズの条件が不明なら、接地を独断で変更せず設計者・メーカーへ確認します。シールド接続と感電保護のための接地も混同しません。

4–20mAの入力で電流と表示値の対応が合わない場合は、配線条件とあわせて、送信器とPLCの換算設定を照合します。4–20mAの換算方法では、測定範囲・生値・単位をそろえて期待値を検算する手順を確認できます。


配線設計チェックリスト

□ 各回路の定常電流と、始動・突入電流の時間/頻度を確認した
□ 許容電流表の線種・心数・温度・布設条件と出所を記録した
□ 必要な低減係数と、その適用条件を確認した
□ 遮断器/ヒューズと電線の過負荷・短絡保護の組合せを確認した
□ 回路方式に合う式で電圧降下を計算した
□ 電源変動と上流/接続部の降下を含め、機器端子電圧を確認した
□ 可動部の動作・曲げ半径・環境・回数定義が型式仕様と合っている
□ 信号線の構造・シールド終端・経路が機器の指定と合っている
□ 端子の適合電線・断面積・処理方法と電流定格を確認した
□ ケーブルに識別マーク(ナンバー・色)を指定した

社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「このモーターは定格5Aですが、始動条件と保護装置も含めて選定します。線種・盤内温度・配管条件をそろえた許容電流表を添え、20mの配線では通常運転と始動時の末端電圧を確認します。断面積は、その計算と端子の仕様を照合して決めます。」

外注先・制御盤メーカーに対して: 「アナログ入力の型式と取扱説明書に対応したケーブル・シールド終端の案を、回路図へ記載してください。可動部は、動作・曲げ半径・速度と温度条件を提示します。必要寿命500万回という要求例なら、片道か往復かを先にそろえ、その条件で比較できる型式資料と試験根拠を提出してください。」

受け取る資料は、型式入りの部品表、ケーブル表・接続図、許容電流と電圧降下の計算書、保護装置の選定根拠です。確認した版と残る条件を記録し、電気図面の読み方の端子・ワイヤー照合へつなげます。


まとめ:電流と電圧を、使用条件と一緒に確認する

  1. 許容電流で断面積の候補を選ぶ——線種・温度・布設・負荷条件をそろえ、保護装置との組合せを確認する。
  2. 電圧降下で末端電圧を確認する——回路方式に合う計算で、電源変動や始動時も含めて機器の条件を満たすか確かめる。
  3. 接続・可動・信号の条件を照合する——端子、動作寿命、シールドの仕様まで型式資料とつなげる。

次のステップ: