電線・ケーブルサイズの選定|許容電流・電圧降下・用途別の選び方
この記事でわかること
電線サイズが小さすぎて発熱した、電圧降下でモーターが動かない、どのケーブルを使えばいいか分からない。設備配線で使う電線選定の実務判断を整理します。
1「とりあえず2sqで」では設備が壊れることがある
制御盤や設備配線で「電線はとりあえず2mm²(2sq)でいい」という判断をすると、負荷電流が多い回路で電線が発熱して絶縁劣化・最悪の場合は火災につながる。
電線サイズは「どれだけの電流を流すか」と「何メートル引き回すか」の2軸で決まる。この記事では設備配線で必要な電線選定の考え方を整理する。
2電線選定の2つの基準
基準1:許容電流(温度上昇の制限)
電線に電流を流すと抵抗によって熱が発生する。電線の絶縁被覆が熱で劣化しない電流の上限が許容電流。
主要な電線の許容電流(概算・単線・空中配線):
| 断面積 | 許容電流(概算) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 0.5mm² | 7A | 制御信号・センサー線 |
| 0.75mm² | 10A | 制御線・操作回路 |
| 1.25mm² | 13A | 制御線・補助回路 |
| 2mm² | 18A | 小型モーター・ヒーター |
| 3.5mm² | 25A | 中型モーター |
| 5.5mm² | 33A | 中型モーター・幹線 |
| 8mm² | 42A | 大型負荷・幹線 |
| 14mm² | 61A | 幹線 |
| 22mm² | 80A | 幹線 |
注意: 配管内・束ねた状態では許容電流が下がる(低減係数が必要)。複数本束ねる場合は0.6〜0.7倍に下げて計算する。
基準2:電圧降下(末端電圧の確保)
長い距離を引き回すと電線の抵抗で電圧が下がり、末端の機器が正常動作しなくなる。
電圧降下 ΔV(V)= 2 × ρ × L × I / A
ρ:銅の抵抗率(1.72×10⁻⁸ Ω·m)
L:片道距離(m)
I:電流(A)
A:断面積(m²)
簡略計算(実用式):
ΔV ≒ 35.6 × L × I / (1000 × A)
L:片道距離(m)、I:電流(A)、A:断面積(mm²)
許容電圧降下の目安:
- 動力回路(200V系モーター):末端で±10%以内 → 20V以内
- 制御回路(DC24V):±10%以内 → 2.4V以内(DC24Vは特に注意)
3用途別のケーブル選定
動力線(モーター・ヒーター)
- IV線(600V耐熱PVC絶縁電線): 制御盤内配線の標準
- CV線・CVT線: 盤外への引き出し・動力幹線
- VCT(キャブタイヤ): 移動部・可動部への配線
制御線・信号線
- CVS・CVVS(シールド付): ノイズの影響を受けやすいアナログ信号・エンコーダー線に使用
- LAN(Cat5e/Cat6): 産業用Ethernet・CC-Link IEなどのネットワーク
- PLC用I/Oケーブル: 0.3〜0.5mm²(電流が少なく引き回しやすい)
可動部・ロボットケーブル
一般の電線は繰り返し曲げに弱く、可動部で芯線が断線する。
- ロボットケーブル(高屈曲ケーブル): 素線を細く多数撚った構造で繰り返し曲げに対応
- 屈曲回数の目安:一般電線100万回以下、高屈曲ケーブル1000万回以上
4よくある選定ミスと対策
ミス1:電圧降下の計算をしない
DC24V制御回路で、センサーまでの距離が長い配線を細い電線で引き回した結果、センサーの動作電圧が不足してON/OFFが不安定になる。
具体例: DC24V回路、電流0.5A、片道20m、0.5mm²の場合 ΔV = 35.6 × 20 × 0.5 / (1000 × 0.5) = 0.71V 末端電圧 = 24 - 0.71 = 23.3V → DC24V機器の下限(21.6V)には余裕あり
片道50mになると: ΔV = 35.6 × 50 × 0.5 / (1000 × 0.5) = 1.78V → 22.2V(まだ問題ないが余裕が少ない)
電流が多い回路・距離が長い配線は必ず計算する。
ミス2:可動部に一般電線を使う
ロボットのハーネスやスライダの配線に一般のCV線を使い、数万回の動作で断線する。
対策: 可動部は必ずロボットケーブル(高屈曲ケーブル)を使う。選定基準は「1日何サイクル × 設計寿命(年)」で必要屈曲回数を計算する。
ミス3:アナログ信号線にシールドを使わない
温度センサー(熱電対・PT100)やアナログ出力(4〜20mA)の配線にシールドなしの電線を使い、ノイズで測定値が揺れる。
対策: アナログ信号線は必ずシールドケーブルを使い、シールドは片端(制御盤側)のみアースする(両端アースはアースループのノイズ増加の原因)。
5配線設計チェックリスト
□ 各回路の負荷電流を計算した
□ 許容電流 > 負荷電流 × 安全率(1.25倍以上)を確認した
□ 長距離配線の電圧降下を計算した
□ 可動部にはロボットケーブルを指定した
□ アナログ信号線にはシールドケーブルを指定した
□ 束ね本数が多い場合の低減係数を考慮した
□ 端子のねじサイズと電線サイズが合っている
□ ケーブルに識別マーク(ナンバー・色)を指定した
6社内で説明するときの言い方
上司・設計者に対して: 「このモーターは定格5Aなので、安全率1.25倍で6.25A以上の許容電流が必要です。2mm²(許容18A)で十分ですが、電圧降下が20m以上なら3.5mm²に上げます。」
外注先・制御盤メーカーに対して: 「アナログ入力配線はCVVSシールドケーブル0.5mm²で、シールドは盤側1点アースでお願いします。可動部のケーブルは高屈曲タイプで屈曲寿命500万回以上のものを使ってください。」
7まとめ:電線選定の2ステップ
- 許容電流で断面積を決める——負荷電流 × 1.25倍以上の許容電流
- 電圧降下で断面積を確認する——長距離・DC24Vは必ず計算
次のステップ:
- 制御盤設計の基礎 — 盤内配線の設計全体へ
- IP等級と防塵・防水設計 — 配線引き込み部の防水設計へ
- センサー選定の基礎 — センサー信号線の選定へ
この記事の執筆者
seigitech 編集部
生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。