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IP等級と防塵・防水設計|現場環境に合った保護等級の選び方

最終更新日 2026-06-03読了時間 約5

この記事でわかること

IP65とIP67の違いが分からない、防水と書いてあるのに浸水した、屋外設備に何を選べばいいか判断できない。IP等級の読み方と現場環境への適用判断を整理します。

1「防水仕様なのに水が入った」は設計ミスではないかもしれない

IP67対応の機器を屋外に設置したのに内部に浸水した——こういうトラブルは実際に起きる。原因のひとつは、IP等級の「試験条件」が現場の使用条件と合っていないこと。

IP67は「一時的な水没(1m深さで30分)」の試験をパスしたことを示すが、「高圧洗浄」や「継続的な水没」には対応していない。IP等級は万能ではなく、何の試験をパスしたかを読む必要がある。


2IP等級の読み方

IP等級はIEC 60529(JIS C 0920)で規定されており、「IP〇〇」の2桁の数字で表される。

IP  6  7
↑   ↑  ↑
│   │  └─ 第2特性数字:液体に対する保護
│   └──── 第1特性数字:固形物に対する保護
└──────── Ingress Protectionの略

第1特性数字(防塵)

数字 保護内容
0 保護なし
1 直径50mm以上の固形物
2 直径12.5mm以上の固形物
3 直径2.5mm以上の固形物
4 直径1mm以上の固形物
5 防塵形(粉塵の侵入を完全には防げないが、機器の正常動作を妨げるほどの量の粉塵侵入を防ぐ)
6 耐塵形(粉塵の侵入を完全に防ぐ)

第2特性数字(防水)

数字 保護内容 試験条件
0 保護なし
1 鉛直落下水 200mm/hの雨を10分
2 鉛直から15°傾斜の落下水 同上、傾き付き
3 散水(60°以内) 10L/min、5分
4 飛まつ(あらゆる方向) 10L/min、5分
5 噴流水(あらゆる方向) 12.5L/min、3分
6 強い噴流水 100L/min、3分
7 一時的水没(1m深さで30分)
8 継続的水没(メーカー指定条件) 条件はメーカー依存
9K 高圧・高温洗浄 80℃、80〜100bar、2〜4分

3現場環境別の選定基準

現場環境 推奨IP等級 根拠
屋内・粉塵なし(一般制御盤) IP20〜IP30 人の指が入らない程度の保護
屋内・切削粉・鉄粉あり IP54〜IP55 粉塵侵入抑制+水スプレー対応
屋内・洗浄水あり(食品・医薬) IP65〜IP66 完全防塵+強い噴流水対応
屋外・雨ざらし IP65 完全防塵+噴流水(雨対応)
屋外・高圧洗浄あり IP66またはIP69K 高圧洗浄対応
水中・浸漬あり IP67〜IP68 一時的〜継続的水没対応

よくある誤り: 「屋外だからIP67」という選択。IP67は高圧洗浄に対応していない。屋外でJET洗浄を行う食品工場・工作機械周辺にはIP66またはIP69Kが必要。


4筐体・制御盤の設計ポイント

ケーブルグランドの選定

筐体のIP等級を確保しても、ケーブル引き込み部が弱点になりやすい。ケーブルグランドのIP等級が筐体より低いと、そこから浸水する。

  • ケーブルグランドのIP等級 ≧ 筐体のIP等級
  • グランドのサイズとケーブル径を合わせる(サイズ不一致でシール不良)
  • 未使用の穴には必ずブランクプラグを取り付ける

コネクター・扉・窓の注意

筐体本体はIP65でも、扉パッキンの劣化・コネクターの締め付け不足・観察窓のシール剥がれで等級が維持できなくなる。

定期確認項目:

  • 扉パッキンの劣化・ヘタリ
  • 扉ロックの締め付けトルク管理
  • 外部ケーブルグランドの緩み
  • コネクターのロック機構の確認

内部結露対策

IP65以上の密閉筐体は通気がないため、温度変化で内部に結露が発生しやすい。

対策:

  • ベント(通気口)付きのブリーザーを取り付ける(防水しながら通気)
  • ヒーター+サーモスタットで筐体内温度を一定に保つ(冬季の結露防止)
  • シリカゲル等の乾燥剤を封入する(小型機器向け)

5判断が割れやすいポイント

IP65とIP67の使い分け

よく混同される2つ。

項目 IP65 IP67
防塵 完全防塵(同じ) 完全防塵(同じ)
防水 噴流水(12.5L/min) 一時的水没(1m×30分)
水没 非対応 対応
洗浄水 △(低圧なら可) 非対応(水没試験のみ)

結論: 洗浄水がかかる環境 → IP65以上。水没リスクがある → IP67以上。洗浄しながら水没もある → IP68またはIP69K。

「防水」「生活防水」表記の注意

民生品によく見られる「防水」「生活防水」の表記はIP等級ではない場合がある。産業用途では必ずIP等級の数値で確認する。

温度・薬品への耐性はIPに含まれない

IP等級は「固形物と液体の侵入」だけを評価する。

  • 耐熱性 → 別途確認(UL・IECの耐熱クラス)
  • 耐薬品性 → 筐体材質(SUS・ポリカ・GFRPなど)で判断
  • 耐振動・耐衝撃 → IEC 60068等の別規格

6図面・仕様書への書き方

【制御盤仕様書の記載例】
保護等級:IP65(IEC 60529準拠)
材質:SS400 粉体塗装(外面)
ケーブルグランド:IP65相当品 使用本数分
扉パッキン:シリコンゴム 連続使用温度-40〜200℃
ベント:防水ブリーザー付き

7社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この設備は高圧洗浄が入るのでIP65では不足です。IP66またはIP69Kが必要です。制御盤メーカーへの仕様変更を依頼します。」

外注先・制御盤メーカーに対して: 「IP65相当の筐体で、ケーブルグランドも同等品を使ってください。未使用穴はブランクプラグで塞いでください。竣工前にIPチェックシートの提出をお願いします。」

現場・保全担当に対して: 「この扉のパッキンが劣化するとIP等級が維持できず、水が入って故障します。年1回パッキンの状態を点検してください。」


8まとめ:IP等級選定の3ステップ

  1. 現場環境を確認する——粉塵・水の種類(霧・洗浄・水没)を把握
  2. IP等級表で必要な数値を選ぶ——防塵は5か6、防水は環境に合わせて
  3. 弱点(グランド・コネクター・パッキン)を設計する——筐体だけでなく付属品も同等品を選ぶ

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。