IP等級と防塵・防水設計|現場環境に合った保護等級の選び方
この記事でわかること
IP65とIP67の違いが分からない、防水と書いてあるのに浸水した、屋外設備に何を選べばいいか判断できない。IP等級の読み方と現場環境への適用判断を整理します。
1「防水仕様なのに水が入った」は設計ミスではないかもしれない
IP67対応の機器を屋外に設置したのに内部に浸水した——こういうトラブルは実際に起きる。原因のひとつは、IP等級の「試験条件」が現場の使用条件と合っていないこと。
IP67は「一時的な水没(1m深さで30分)」の試験をパスしたことを示すが、「高圧洗浄」や「継続的な水没」には対応していない。IP等級は万能ではなく、何の試験をパスしたかを読む必要がある。
2IP等級の読み方
IP等級はIEC 60529(JIS C 0920)で規定されており、「IP〇〇」の2桁の数字で表される。
IP 6 7
↑ ↑ ↑
│ │ └─ 第2特性数字:液体に対する保護
│ └──── 第1特性数字:固形物に対する保護
└──────── Ingress Protectionの略
第1特性数字(防塵)
| 数字 | 保護内容 |
|---|---|
| 0 | 保護なし |
| 1 | 直径50mm以上の固形物 |
| 2 | 直径12.5mm以上の固形物 |
| 3 | 直径2.5mm以上の固形物 |
| 4 | 直径1mm以上の固形物 |
| 5 | 防塵形(粉塵の侵入を完全には防げないが、機器の正常動作を妨げるほどの量の粉塵侵入を防ぐ) |
| 6 | 耐塵形(粉塵の侵入を完全に防ぐ) |
第2特性数字(防水)
| 数字 | 保護内容 | 試験条件 |
|---|---|---|
| 0 | 保護なし | — |
| 1 | 鉛直落下水 | 200mm/hの雨を10分 |
| 2 | 鉛直から15°傾斜の落下水 | 同上、傾き付き |
| 3 | 散水(60°以内) | 10L/min、5分 |
| 4 | 飛まつ(あらゆる方向) | 10L/min、5分 |
| 5 | 噴流水(あらゆる方向) | 12.5L/min、3分 |
| 6 | 強い噴流水 | 100L/min、3分 |
| 7 | 一時的水没(1m深さで30分) | — |
| 8 | 継続的水没(メーカー指定条件) | 条件はメーカー依存 |
| 9K | 高圧・高温洗浄 | 80℃、80〜100bar、2〜4分 |
3現場環境別の選定基準
| 現場環境 | 推奨IP等級 | 根拠 |
|---|---|---|
| 屋内・粉塵なし(一般制御盤) | IP20〜IP30 | 人の指が入らない程度の保護 |
| 屋内・切削粉・鉄粉あり | IP54〜IP55 | 粉塵侵入抑制+水スプレー対応 |
| 屋内・洗浄水あり(食品・医薬) | IP65〜IP66 | 完全防塵+強い噴流水対応 |
| 屋外・雨ざらし | IP65 | 完全防塵+噴流水(雨対応) |
| 屋外・高圧洗浄あり | IP66またはIP69K | 高圧洗浄対応 |
| 水中・浸漬あり | IP67〜IP68 | 一時的〜継続的水没対応 |
よくある誤り: 「屋外だからIP67」という選択。IP67は高圧洗浄に対応していない。屋外でJET洗浄を行う食品工場・工作機械周辺にはIP66またはIP69Kが必要。
4筐体・制御盤の設計ポイント
ケーブルグランドの選定
筐体のIP等級を確保しても、ケーブル引き込み部が弱点になりやすい。ケーブルグランドのIP等級が筐体より低いと、そこから浸水する。
- ケーブルグランドのIP等級 ≧ 筐体のIP等級
- グランドのサイズとケーブル径を合わせる(サイズ不一致でシール不良)
- 未使用の穴には必ずブランクプラグを取り付ける
コネクター・扉・窓の注意
筐体本体はIP65でも、扉パッキンの劣化・コネクターの締め付け不足・観察窓のシール剥がれで等級が維持できなくなる。
定期確認項目:
- 扉パッキンの劣化・ヘタリ
- 扉ロックの締め付けトルク管理
- 外部ケーブルグランドの緩み
- コネクターのロック機構の確認
内部結露対策
IP65以上の密閉筐体は通気がないため、温度変化で内部に結露が発生しやすい。
対策:
- ベント(通気口)付きのブリーザーを取り付ける(防水しながら通気)
- ヒーター+サーモスタットで筐体内温度を一定に保つ(冬季の結露防止)
- シリカゲル等の乾燥剤を封入する(小型機器向け)
5判断が割れやすいポイント
IP65とIP67の使い分け
よく混同される2つ。
| 項目 | IP65 | IP67 |
|---|---|---|
| 防塵 | 完全防塵(同じ) | 完全防塵(同じ) |
| 防水 | 噴流水(12.5L/min) | 一時的水没(1m×30分) |
| 水没 | 非対応 | 対応 |
| 洗浄水 | △(低圧なら可) | 非対応(水没試験のみ) |
結論: 洗浄水がかかる環境 → IP65以上。水没リスクがある → IP67以上。洗浄しながら水没もある → IP68またはIP69K。
「防水」「生活防水」表記の注意
民生品によく見られる「防水」「生活防水」の表記はIP等級ではない場合がある。産業用途では必ずIP等級の数値で確認する。
温度・薬品への耐性はIPに含まれない
IP等級は「固形物と液体の侵入」だけを評価する。
- 耐熱性 → 別途確認(UL・IECの耐熱クラス)
- 耐薬品性 → 筐体材質(SUS・ポリカ・GFRPなど)で判断
- 耐振動・耐衝撃 → IEC 60068等の別規格
6図面・仕様書への書き方
【制御盤仕様書の記載例】
保護等級:IP65(IEC 60529準拠)
材質:SS400 粉体塗装(外面)
ケーブルグランド:IP65相当品 使用本数分
扉パッキン:シリコンゴム 連続使用温度-40〜200℃
ベント:防水ブリーザー付き
7社内で説明するときの言い方
上司・設計者に対して: 「この設備は高圧洗浄が入るのでIP65では不足です。IP66またはIP69Kが必要です。制御盤メーカーへの仕様変更を依頼します。」
外注先・制御盤メーカーに対して: 「IP65相当の筐体で、ケーブルグランドも同等品を使ってください。未使用穴はブランクプラグで塞いでください。竣工前にIPチェックシートの提出をお願いします。」
現場・保全担当に対して: 「この扉のパッキンが劣化するとIP等級が維持できず、水が入って故障します。年1回パッキンの状態を点検してください。」
8まとめ:IP等級選定の3ステップ
- 現場環境を確認する——粉塵・水の種類(霧・洗浄・水没)を把握
- IP等級表で必要な数値を選ぶ——防塵は5か6、防水は環境に合わせて
- 弱点(グランド・コネクター・パッキン)を設計する——筐体だけでなく付属品も同等品を選ぶ
次のステップ:
- 制御盤設計の基礎 — 制御盤全体の設計へ
- 設備構造設計の基礎 — 筐体・フレームの構造設計へ
- 機械安全のリスクアセスメント — 環境リスクを含めた安全設計へ
この記事の執筆者
seigitech 編集部
生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。