seigitech

搬送設計の基礎|コンベア・AGV・ロボットの使い分けと搬送仕様の決め方

最終更新日 2026-06-03読了時間 約4

この記事でわかること

搬送方法が決められない、コンベアかAGVか判断できない、搬送スペックの計算方法が分からない。生産ラインの搬送設計で必要な判断基準を整理します。

1搬送方式は「ワークの特性 × 工場の制約」で決まる

自動化ラインを設計するとき、工程間の搬送をどうするかは初期段階で決めておく必要がある。ベルトコンベアにするか、AGV(無人搬送車)にするか、ロボットで受け渡しするか——この選択が後のラインレイアウトや設備費用を大きく左右する。

搬送方式の選定は「何を・どこからどこへ・どのくらいの速さで・どのくらいの量を運ぶか」の5要素を整理してから行う。


2搬送方式の比較

搬送方式 固定性 柔軟性 コスト 用途
ベルトコンベア 固定ルート 低い 安い 連続搬送・軽量品
ローラーコンベア 固定ルート 低い 安い 重量物・パレット
チェーンコンベア 固定ルート 低い 中程度 自動車・重量物
台車ライン(スラットコンベア) 固定ルート 中程度 中程度 組立ライン・大型製品
AGV(磁気誘導・QRコード) 経路変更可 高い 高い 工程間搬送・長距離
AMR(自律移動ロボット) 自律移動 最高 最高 変種変量・多品種
産業用ロボット 固定位置 低い 中〜高 高速受け渡し・整列
人手搬送 最も柔軟 最高 人件費 少量・複雑形状

3コンベアの仕様設計

必要搬送速度の計算

搬送速度 V(m/min)= 搬送ピッチ(m)× 生産タクト(個/min)

例:搬送ピッチ400mm、タクト10秒/個(6個/min)の場合
V = 0.4 × 6 = 2.4 m/min

余裕を見て1.2〜1.5倍の速度を設定し、インバータで調整できるようにする。

コンベア幅の決め方

ワークの最大外形寸法に対して両側50〜100mmの余裕を加える。

コンベア幅 W ≧ ワーク幅 + 100mm(片側50mm余裕)

多品種搬送の場合は最大ワークに合わせる。または幅調整機能付きコンベアを選ぶ。

駆動モーターの選定

必要出力 P(W)= (搬送重量 + コンベア自重) × g × V / (60 × 効率)
 g:9.8 m/s²
 V:搬送速度(m/min)
 効率:0.7〜0.85

4AGVの導入判断

AGVが有利な条件

  • 工程間の距離が長い(10m以上)
  • 複数の行き先・工程への振り分けが必要
  • レイアウト変更が将来起きる可能性がある
  • 搬送頻度が不定期(バッチ搬送)

AGVが不利な条件

  • 搬送速度が重要(AGVは20〜60m/min程度、コンベアに比べて遅い)
  • 搬送パスが複数台のAGVで干渉する
  • 初期投資を抑えたい(AGVはコンベアの3〜10倍のコスト)
  • 工場の床面状態が悪い(段差・傾斜)

AGV vs AMR

項目 AGV AMR
経路決定 磁気テープ・QRコードで事前定義 自律的にマップを作成・経路計算
障害物回避 停止が基本 自律回避
導入コスト 中程度 高い
変更・拡張 再設定が必要 比較的容易
信頼性 高い(決まった動き) AMRソフト依存

AMRは柔軟性が高い一方、搬送計画の最適化・システム管理が複雑になる。初めて搬送自動化を導入するならAGVのほうが管理しやすい


5搬送自動化でよくある失敗

失敗1:ワークの姿勢を考慮しない

コンベアに載せたときに転倒・ずれる形状のワーク。丸い缶・背の高い部品・重心が高いワークを平置きコンベアで搬送しようとして転倒する。

対策: ワークの重心位置と接触面を確認し、必要に応じてパレット・トレイに乗せて搬送する。

失敗2:バッファを設計しない

前工程が早くて後工程が遅いとき、コンベア上にワークが詰まって停止する。または後工程が速いときにコンベアが空になる。

対策: 工程間のバッファ(ストッカー・アキュムレーションコンベア)を設計する。タクトタイムのばらつきに合わせてバッファ量を計算する。

失敗3:メンテナンスアクセスを確保しない

コンベアが壁際・柱際に設置されていて、ベルト交換・チェーン調整のためのアクセスができない。

対策: コンベア側面・下面に600mm以上のアクセス空間を設ける。

失敗4:AGVの充電計画を忘れる

AGVは定期的に充電が必要。充電ステーションのスペース・充電時間・台数計画が不十分で稼働率が下がる。

目安: 1台あたり0.5〜1時間/8時間の充電時間。稼働率90%以上を確保するには台数+1台の余裕を持つ。


6社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「工程間距離が15mあり、振り分け先が3工程あるのでコンベアより AGVのほうが柔軟です。ただし初期費用が2倍になるので、投資回収計算を出します。」

外注先・搬送機メーカーに対して: 「ワーク重量5kg、搬送ピッチ500mm、タクト15秒で搬送速度2m/minが必要です。両側に100mmの余裕を取ってコンベア幅600mmでお願いします。」


7まとめ:搬送方式選定のポイント

  • 短距離・定型ルート・連続搬送 → コンベア
  • 長距離・複数ルート・レイアウト変更あり → AGV/AMR
  • 高速受け渡し・整列が必要 → ロボット
  • バッファ計画を忘れない

次のステップ:

👷

この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。