搬送設計の基礎|コンベア・AGV・ロボットの使い分けと搬送仕様の決め方
この記事でわかること
搬送方法が決められない、コンベアかAGVか判断できない、搬送スペックの計算方法が分からない。生産ラインの搬送設計で必要な判断基準を整理します。
1搬送方式は「ワークの特性 × 工場の制約」で決まる
自動化ラインを設計するとき、工程間の搬送をどうするかは初期段階で決めておく必要がある。ベルトコンベアにするか、AGV(無人搬送車)にするか、ロボットで受け渡しするか——この選択が後のラインレイアウトや設備費用を大きく左右する。
搬送方式の選定は「何を・どこからどこへ・どのくらいの速さで・どのくらいの量を運ぶか」の5要素を整理してから行う。
2搬送方式の比較
| 搬送方式 | 固定性 | 柔軟性 | コスト | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| ベルトコンベア | 固定ルート | 低い | 安い | 連続搬送・軽量品 |
| ローラーコンベア | 固定ルート | 低い | 安い | 重量物・パレット |
| チェーンコンベア | 固定ルート | 低い | 中程度 | 自動車・重量物 |
| 台車ライン(スラットコンベア) | 固定ルート | 中程度 | 中程度 | 組立ライン・大型製品 |
| AGV(磁気誘導・QRコード) | 経路変更可 | 高い | 高い | 工程間搬送・長距離 |
| AMR(自律移動ロボット) | 自律移動 | 最高 | 最高 | 変種変量・多品種 |
| 産業用ロボット | 固定位置 | 低い | 中〜高 | 高速受け渡し・整列 |
| 人手搬送 | 最も柔軟 | 最高 | 人件費 | 少量・複雑形状 |
3コンベアの仕様設計
必要搬送速度の計算
搬送速度 V(m/min)= 搬送ピッチ(m)× 生産タクト(個/min)
例:搬送ピッチ400mm、タクト10秒/個(6個/min)の場合
V = 0.4 × 6 = 2.4 m/min
余裕を見て1.2〜1.5倍の速度を設定し、インバータで調整できるようにする。
コンベア幅の決め方
ワークの最大外形寸法に対して両側50〜100mmの余裕を加える。
コンベア幅 W ≧ ワーク幅 + 100mm(片側50mm余裕)
多品種搬送の場合は最大ワークに合わせる。または幅調整機能付きコンベアを選ぶ。
駆動モーターの選定
必要出力 P(W)= (搬送重量 + コンベア自重) × g × V / (60 × 効率)
g:9.8 m/s²
V:搬送速度(m/min)
効率:0.7〜0.85
4AGVの導入判断
AGVが有利な条件
- 工程間の距離が長い(10m以上)
- 複数の行き先・工程への振り分けが必要
- レイアウト変更が将来起きる可能性がある
- 搬送頻度が不定期(バッチ搬送)
AGVが不利な条件
- 搬送速度が重要(AGVは20〜60m/min程度、コンベアに比べて遅い)
- 搬送パスが複数台のAGVで干渉する
- 初期投資を抑えたい(AGVはコンベアの3〜10倍のコスト)
- 工場の床面状態が悪い(段差・傾斜)
AGV vs AMR
| 項目 | AGV | AMR |
|---|---|---|
| 経路決定 | 磁気テープ・QRコードで事前定義 | 自律的にマップを作成・経路計算 |
| 障害物回避 | 停止が基本 | 自律回避 |
| 導入コスト | 中程度 | 高い |
| 変更・拡張 | 再設定が必要 | 比較的容易 |
| 信頼性 | 高い(決まった動き) | AMRソフト依存 |
AMRは柔軟性が高い一方、搬送計画の最適化・システム管理が複雑になる。初めて搬送自動化を導入するならAGVのほうが管理しやすい。
5搬送自動化でよくある失敗
失敗1:ワークの姿勢を考慮しない
コンベアに載せたときに転倒・ずれる形状のワーク。丸い缶・背の高い部品・重心が高いワークを平置きコンベアで搬送しようとして転倒する。
対策: ワークの重心位置と接触面を確認し、必要に応じてパレット・トレイに乗せて搬送する。
失敗2:バッファを設計しない
前工程が早くて後工程が遅いとき、コンベア上にワークが詰まって停止する。または後工程が速いときにコンベアが空になる。
対策: 工程間のバッファ(ストッカー・アキュムレーションコンベア)を設計する。タクトタイムのばらつきに合わせてバッファ量を計算する。
失敗3:メンテナンスアクセスを確保しない
コンベアが壁際・柱際に設置されていて、ベルト交換・チェーン調整のためのアクセスができない。
対策: コンベア側面・下面に600mm以上のアクセス空間を設ける。
失敗4:AGVの充電計画を忘れる
AGVは定期的に充電が必要。充電ステーションのスペース・充電時間・台数計画が不十分で稼働率が下がる。
目安: 1台あたり0.5〜1時間/8時間の充電時間。稼働率90%以上を確保するには台数+1台の余裕を持つ。
6社内で説明するときの言い方
上司・設計者に対して: 「工程間距離が15mあり、振り分け先が3工程あるのでコンベアより AGVのほうが柔軟です。ただし初期費用が2倍になるので、投資回収計算を出します。」
外注先・搬送機メーカーに対して: 「ワーク重量5kg、搬送ピッチ500mm、タクト15秒で搬送速度2m/minが必要です。両側に100mmの余裕を取ってコンベア幅600mmでお願いします。」
7まとめ:搬送方式選定のポイント
- 短距離・定型ルート・連続搬送 → コンベア
- 長距離・複数ルート・レイアウト変更あり → AGV/AMR
- 高速受け渡し・整列が必要 → ロボット
- バッファ計画を忘れない
次のステップ:
- ラインバランシングの基礎 — 搬送を含めたライン設計へ
- タクトタイムの設計 — 搬送速度とタクトの整合へ
- 産業用ロボット導入の基礎 — ロボット搬送の設計へ
この記事の執筆者
seigitech 編集部
生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。