「電気は専門外」でも、図面から伝えられることがある

生産技術・機械設計の担当者でも、設備トラブルの現場では電気図面を読む場面が来る。「電磁弁が動かない」「センサーが反応しない」とき、対象機器と動作条件を図面で追えると、電気担当へ確認箇所を具体的に伝えられる。

この記事では、制御盤・設備で使う図面の種類、接点と負荷の関係、端子・線番の追い方を整理する。図面を読むことと、盤内の測定・配線作業を行うことは別である。以下の図は読図用の説明例で、実設備の配線や安全回路を完成させる設計図ではない。


電気図面の種類

図面の種類 内容 使いどころ
システム構成図(系統図) 電源からの系統・機器間の接続関係 全体把握・電源設計
回路図(シーケンス図) 電気的な接続と制御回路の動作条件 動作確認・トラブル追跡
配線図(接続図) 実際の端子番号・配線の行き先 施工・配線確認
配置図(レイアウト図) 盤内機器の物理的な配置 機器の場所確認
PLCラダー図 PLCプログラムの論理条件 PLC制御のデバッグ

同じ機器を、回路図では「動作条件」、配線図では「接続先」、配置図では「場所」から読む。最初に図面番号・版と対象設備を確認し、現物やプログラムの版と食い違っていないかを確かめる。


回路図(シーケンス図)の読み方

接点と負荷を一続きで追う

電源の描く向きは図面によって異なる。上下・左右の配置を暗記するより、電源から接点、負荷、電源の戻りまでの経路を追う。

次は、DC24V電源でリレーCR1を動かす概念図である。SW1・SW2はa接点、CR1は負荷となるコイルで、同じ経路に直列に入っている。

+24V
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 [F1]
  |
 [SW1 a]
  |
 [SW2 a]
  |
 (CR1 coil)
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 0V

電源・機器が正常で定格に合っているという前提では、F1が導通し、SW1とSW2が両方閉じるとCR1コイルに電流が流れる。どちらかの接点が開けば、この経路は途切れる。接点だけで+24Vと0Vを直結する図とは区別する。

F1は保護用ヒューズを表す。この例では、定格の選定、サージ抑制部品、端子番号、接地などを省略している。実配線は採用機器の接続図と設備の設計条件で確認する。

0Vは、このDC回路で電圧を読む基準である。 GNDという表記が使われることもあるが、それだけで保護接地(PE)との接続を判断しない。電源出力と接地の関係は機器・設備の回路によるため、接地図と取扱説明書を照合する。オムロンの電源使用上の注意でも、出力と接地の接続条件を分けて説明している。

簡略記号・略号と実際の図記号

下表は本文を読むための簡略表記である。文字で描いた接点や、角括弧内の機器名は、JIS・IECの図記号を正確に再現したものではない。実図面では採用規格、凡例、機器記号と型式を確認する。標準図記号の参照先の一つがIEC 60617のデータベースである。

本文の簡略表記 読み取る対象
[SW a] 常開接点(a接点):基準状態で開き、操作すると閉じる
[SW b] 常閉接点(b接点):基準状態で閉じ、操作すると開く
(CR coil) リレーの操作コイル。対応する接点の機器記号を追う
M モーター
ソレノイド 電磁弁などの操作コイル
R 抵抗
F ヒューズ
MC 電磁接触器。主接点と操作コイルを区別する
OL この例では熱動形サーマルリレー。主回路の電流検出部と制御用接点を区別する

a接点とb接点の「通常」を確認する

「通常」は、設備が正常運転している状態という意味ではない。押しボタンスイッチなら操作していない状態、通常の電磁リレーならコイルを励磁していない状態が基準になる。特殊な動作や図面の状態指定がある場合は、その説明を優先する。

  • a接点(常開): 基準状態では開き、操作・励磁によって閉じる。
  • b接点(常閉): 基準状態では閉じ、操作・励磁によって開く。

接点が閉じていても、電源や戻り経路がなければ電流は流れない。また、b接点が開いていることだけで「異常」とは決められない。安全リレーにも安全出力と補助接点の区別があり、例えばオムロンG9SA-301-P DC24は安全出力3a・補助接点1bを持つ。型式、端子、信号の役割と、その運転状態で期待する開閉を確認する。

非常停止の入力では、ボタン操作や配線の断線による回路の開放を停止要求として扱う構成がある。ただし、b接点だけで短絡・接点故障などを含む安全機能全体が成立するわけではない。図面を読めたことと、安全機能の要求・設計・検証が揃ったことは分けて扱う。

回路図を読む手順

  1. 電源の種類・電圧と戻り側を、図面の表示で確認する。
  2. ヒューズ・遮断器などの保護機器を探す。
  3. 動かしたい負荷の機器記号・コイル・端子を特定する。
  4. 負荷までの接点の組合せと戻り経路を追う。
  5. 各接点がどの機器に属するか、別ページへの参照先と基準状態を確認する。

配線図(接続図)の読み方

端子番号とワイヤーナンバーを分ける

端子番号は「機器のどこにつながるか」、電線番号(線番)は「どの電線を追うか」を識別する。採番方法は図面の凡例で確かめる。

センサーS1の出力端子
        |
   電線番号 W023
        |
  端子台 TB2 の端子12

これは番号の対応を示す説明例である。W023を線番、TB2を端子台の機器記号、12をその端子番号としている。「Wから始まれば必ず線番」という全図面共通の規則ではない。

トラブル時は、対象端子から線番を拾い、相手側の機器記号と端子番号の組まで追う。端子台を経由するときは、その先の電線も図面と現物表示で照合する。図面だけで現物の接続が正しいとは断定しない。


主電回路(動力回路)の読み方

三相モーターの直入起動を例に、主回路の経路を略して示す。三つの行は同じ三相回路の各相で、MCCBやMCを各相別の独立した機器として選定する図ではない。

R--[MCCB]--[MC主接点]--[OL検出部]--U
S--[MCCB]--[MC主接点]--[OL検出部]--V
T--[MCCB]--[MC主接点]--[OL検出部]--W
                                 モーター
  • MCCB(配線用遮断器): 過負荷・短絡から電線を保護する機器。
  • MC(電磁接触器): 操作コイルの励磁で主接点を開閉し、負荷への給電を制御する機器。
  • OL(熱動形サーマルリレー): モーター電流による発熱を内部のバイメタルで検出し、過負荷時に制御用接点を切り替える機器。この例ではその接点をMCのコイル回路に入れ、MCを開く。モーター本体の温度を直接測るセンサーという意味ではない。

機器の役割は三菱電機の配線用遮断器解説とオムロンの低圧開閉器技術解説で確認できる。

この図では制御回路・保護接地・定格や保護協調の選定を省略している。MCへの指令があるのにモーターが動かない場合も、主電源、接点、配線、保護機器の状態などを分けて確認する。


PLCラダー図との関係

PLCで制御する設備でも、実機の電源・端子・配線を示す図面は必要になる。ラダー図は、PLCが扱う論理条件を読むための図である。

ラダーの接点は変数やデバイスのON/OFFを評価し、コイルは演算結果を対応する変数やデバイスへ書き込む。線がつながる形は回路図に似ているが、画面上の条件成立は実配線の電流を測定した結果ではない。ABBのLD解説でも、接点・コイルを論理値と変数で説明している。

|--[SW1]--[SW2]--------(Y001)--|
|--[Y001]--[SW3]-------(Y002)--|

これは基本的なAND条件の説明例である。SW1〜SW3をON/OFFの論理値として、上段はSW1とSW2が両方ONならY001へONを書き込む。下段は、そこで参照するY001とSW3がONならY002へONを書き込む。実機ではアドレス割付、実行順序、I/O更新、他の命令による書込みなども確認する。

出力デバイスY001がONでも、出力ユニットや外部負荷に給電され、機器が動作したことまで証明したわけではない。LDモニタの表示説明を踏まえ、論理値の観測と実回路の確認を区別する。命令の読み方はラダー図の基礎を参照。


トラブル時の図面活用

図面の照合と実測を分ける

まず、図面・仕様書・操作記録・許可されたモニタ表示から確認できることを整理する。盤内の実測は、作業に必要な知識・技能と権限を持つ担当者が、設備と測定器に合う手順で行う。

抵抗・導通の測定と、通電状態の電圧測定を混ぜない。例えばHIOKI 3802の取扱説明書は、抵抗測定機能に電圧を入力せず、測定回路の電源を切るよう定めている。実際の測定器の取扱説明書を確認し、停止・隔離、残留エネルギーの処置、再投入防止、無電圧確認を設備の手順に従って行う。

通電測定が必要な場合は、担当者が必要性と危険を評価し、対象・測定点・測定器やリードの定格・モード・保護措置を決める。この記事だけで通電測定へ進めるものではない。隔離と作業能力の考え方はHSEの電気安全FAQも参考になるが、日本の個別法令や各事業所の手順に代わるものではない。

出力(電磁弁・モーター)が動かないとき

  1. 負荷の機器記号、図面番号・ページ、必要な電源と動作条件を特定する。
  2. コイルや入力端子へつながる線番と、電源・戻り経路を配線図で追う。
  3. どの条件が期待どおりかを記録する。PLC論理値、機器の表示、測定値は分ける。
  4. 未確認箇所について、電気担当が測定方法を決めて確認する。
  5. 電源・戻り線・出力回路・コイル・機構側などの候補を絞る。条件が揃ったように見えるだけで、コイル断線や機器故障を確定しない。

センサーの信号が来ないとき

センサーのメーカー・型式、出力方式、PLC入力ユニットの型式・定格・COM接続、線番・端子・I/O割付を対応させる。DC24Vと書かれているだけでは、NPN/PNPなどの出力と入力の接続が合うかは決まらない。配線は両方のメーカー資料で確認する。照合項目はセンサー選定の基礎にも整理している。

観測するもの 記録する内容 それだけでは確定しないこと
センサーの表示 表示の意味、検出対象の状態、時点 出力信号がPLC端子まで届いているか
入力ユニットのLED 型式・端子・LEDの対応と点灯状態 CPU側で意図した入力を参照しているか
オンラインモニタ PLC/プログラムの版、アドレス、論理値、時点 外部回路の電圧・電流や配線の健全性
担当者による実測 測定点・基準点・状態・方法・値 一度の測定で間欠不良まで否定できるか

食い違いがあれば、電源、出力と入力の仕様、COM、配線、割付、設定、観測タイミングを照合する。断線・ショートも候補に含めるが、センサーの点灯だけを根拠に原因を限定しない。信号の強制や安全回路のバイパスで確認する手順は、ここでは扱わない。


社内へ読図結果を渡す

以下は記入・説明のための仮定例で、実際の故障事例ではない。

上司・設計者に対して: 「図面E-03の第2版では、電磁弁の動作条件C-05にある許可信号を確認する必要があります。自動運転待機中の10時15分に、モニタ上では許可信号がOFFでした。安全リレーのどの端子・機能に対応するか、正常時の期待状態と照合する段階です。現時点では故障箇所を確定していません。」

現場・保全担当に対して: 「同じ図面の接続例では、センサーS1の出力端子から線番W023が端子台TB2の12番へつながっています。図面と現物の対応を確認し、実測が必要な箇所と方法は電気担当で決めてください。」

引継ぎには、図面の番号・版・ページ、機器/型式、線番と両端子、条件ID、運転モードと期待状態、観測方法・時点・結果を残す。未確認事項には担当を付け、安全に関係する条件には安全要求の参照先も付ける。読図結果を設計や検証へ渡す際は、制御設計の仕事ガイドの記録・確認に結び付ける。


まとめ:電気図面読み方の3ステップ

  1. 系統図で全体把握——電源の流れと機器構成を確認する。
  2. 回路図で動作条件を追う——接点、負荷、戻り経路を一続きで読む。
  3. 配線図で対応を追う——機器・端子・線番を対応させ、観測と未確認を分けて伝える。

次のステップ: