「ライトカーテンをつければ大丈夫」は危険な誤解
「安全柵の代わりにライトカーテンをつけよう」と検討するときは、以下の3点を機械の危険源と使用条件に照らして確認する。
- 安全距離:ライトカーテンが遮光されてから設備が停止するまでに、人の手が危険源に届いてしまわないか
- 検出能力:指・手・腕のどれを検出したいかで必要な分解能が変わる
- ミューティング:ワークをラインに通すときにライトカーテンを一時的に無効化する仕組みの安全性
これらが不適切な場合、ライトカーテンがあっても危険源への接触を防げないおそれがある。機械側の停止・再始動防止を含めて適用条件を確かめる。
ライトカーテンとは何か
ライトカーテン(安全光線式防護装置、AOPD:Active Opto-electronic Protective Device)は、複数の光軸を持つ光電センサで構成された安全装置だ。
通常の防護状態では、人や物による遮光を検出すると安全出力がOFFになり、接続先の安全回路(セーフティリレー・安全PLCなど)を通じて危険な動作を停止させる。保護に使うには、人が危険源へ届く前に停止できる機械であることと、安全出力から停止機構までの構成を確認する。ライトカーテン単体の仕様だけでは、機械全体の安全は決まらない。
安全柵と比較したメリット・デメリット:
| 項目 | 安全柵・ガード | ライトカーテン |
|---|---|---|
| 費用の比較 | 材料・扉・インターロック・施工を含めて見積もる | 検出器・安全制御・停止性能の検証・補助ガードを含めて見積もる |
| 作業者の出入り | 開口・扉の構成に応じ、進入を防止する仕組みを設計する | 検出して停止させる。通過して内側に残る人の保護と再始動防止も必要 |
| ワーク搬送 | 搬送開口から人が危険源へ届かない構成にする | ミューティングを使う場合も、人がワークに追随して侵入できない構成にする |
| 設置スペース | 防護範囲・扉の動作・作業空間から決める | 安全距離・迂回侵入防止・作業空間を含めて決める。本体寸法だけでは比較できない |
| 飛来物・落下物 | 対象物の方向・エネルギーに耐え、封じ込め・捕捉できる構造なら物理的な保護に使える | 光による検出であり、物を受け止める機能はない。別のカバーや支持・落下防止が必要 |
同じ危険源と防護範囲を前提に、費用・面積・作業性を比較する。安全柵なら何でも飛来物を防げるわけでも、ライトカーテンなら必ず省スペースになるわけでもない。OMRONの設置上の注意も、検出域を迂回する侵入や内側への残留、飛来物を別に検討している。
ライトカーテンは、ロボットセル前面などの開口部で使われる。ただしプレスを含め、対象機械の停止性能・適用される要求・必要な保護方式を確かめてから採用する。
検出能力の選定:何を検出するか
ライトカーテンの検出能力は、仕様上どの大きさの物体を確実に検出できるかを示す。保護したい部位に加え、侵入経路・検出域・安全距離を組み合わせて選ぶ。光軸の間隔と検出能力は同じ数値とは限らない。
| 検討する用途 | 選定時に確認すること |
|---|---|
| 指が危険源へ近づく | 指の検出を目的とする型式の検出能力と、機械別の要求・設置条件 |
| 手・腕が近づく | 手や腕が検出されるまでの侵入量、すり抜け、距離計算との対応 |
| 全身が通過する | 開口の高さ・上下や横からの迂回と、通過後に内側へ残る人の保護 |
例えばOMRON F3SG-SRの製品区分には、指用14 mm、手用25 mmという型式がある。これはそのシリーズの製品例であり、全メーカー・全設備共通の必要値ではない。プレスやプレスブレーキも、14 mmという数値だけで適合を判断しない。ブランキングなどで検出条件を変更する場合は、設定後の実効的な検出能力で選定・距離計算・試験棒を見直す。
安全距離の計算:配置を決めるための確認
ライトカーテンを設置する位置は、直感ではなく計算で決める。
計算に先立ち、対象機械、ライトカーテンの型式・設定、適用する法令・規格の版と機械別要求、接近方向を特定する。上・下・横からの回り込みや乗り越しなど、検出面を正面から通らない到達経路も検討する。
考え方の例として、Panasonic SF4D取扱説明書(WUME-SF4D-18、19〜21頁)は、検出面へ直角に接近する場合の計算に次の形を示している。
S = K × T + C
- S:検出面から危険源までの安全距離(mm)
- K:採用する計算法・接近条件に対応した接近速度(mm/s)
- T:遮光を検出してから危険な動作が停止するまでの総応答時間(s)
- C:検出能力などに応じた追加距離(mm)
Tには、ライトカーテンのOFF応答、安全制御・出力機器の応答、機械の制動など、停止までの時間を漏れなく含める。各値の起点・終点をそろえ、実機の最大停止時間と対応させる。遮光から停止までを一括測定した値に、センサ応答時間を重ねて足してはならない。SF4Dの公式FAQでも、使用する接続構成・台数に対応したOFF応答時間を選ぶよう説明されている。
計算の一部を確かめる例: K = 2,000 mm/sを使える条件で、ライトカーテンのOFF応答10 msと、それ以降の安全制御から危険動作停止までの最大時間80 msを仮定すると、時間に対応する項は次のようになる。
T = 0.01 + 0.08 = 0.09 s
K × T = 2,000 × 0.09 = 180 mm
180 mmはこの仮定でのK×Tの値であり、そのまま最低設置距離にはできない。 同取説の式は検出能力に応じてCが変わり、計算結果による分岐・下限もある。水平方向の検出面への接近や別の到達経路には、その条件に対応した計算法が必要になる。
なお、ISO 13855の公式掲載版は2024年の第3版である。ここでは規格本文の計算条項を転載・確認したものとして扱わず、メーカー取説の説明例と区別する。採用時はISO/JISの番号だけで済ませず、適用版と実機条件に合う計算書を設計者・メーカーと確認する。
これを守らないと、ライトカーテンを遮光してから設備が止まるまでの間に手が危険源に届いてしまう。
ミューティング:ワーク通過を安全に許可する
コンベアでワークを搬送しながら、作業者の進入は検出したい場合、ライトカーテンをそのままにするとワークが通るたびに設備が止まってしまう。
ワーク通過の条件を監視して防護機能を一時的に中断し、終了条件で復帰させるのがミューティングだ。人が入ってもよい状態を意味しない。ミューティング中も別の防護を含めて安全を確保し、人がワークの前後や横について危険区域へ入れない構成にする。
ミューティングで注意すること:
- 外部センサの2入力式など、採用方式に合う個数・配置・独立性を確認する。数が2個あることだけでは、人による無効化や追随侵入を防いだことにならない。
- 搬送方向、入力の許容順序・時間差、開始・終了、詰まり・入力故障時の動作を型式・設定ごとに確認する。必要な時間上限と異常時の扱いを設計し、別機種の設定値を流用しない。
- ミューティング中でも非常停止を有効にし、その経路をミューティングの対象へ含めない。
- ミューティングの表示方法・表示器故障時の扱いは、適用する要求と取説に合わせる。「保護中」「ミューティング中」「異常」を取り違えない表示にする。
Banner MM2取扱説明書(3.5〜3.6節)は、入力条件だけでなく、ワークの前後・横から人が追随して侵入できないことまで確認している。これは同機種の実装例であり、すべての装置に同じセンサ数・秒数を適用する根拠ではない。
設計ミスと確認すべき条件
ミス①:安全距離を計算せずに「なんとなく」設置した
ライトカーテンの位置を先に決めてしまうと、必要な安全距離や接近経路の条件を満たせないおそれがある。外装や通路の配置と合わせ、設計段階で成立を確認する。
設置位置を変更するときは、外装・フレーム・通路・接近経路への影響を確認する。設計段階で安全距離を計算し、設備レイアウトに反映する。
ミス②:ミューティングセンサが1個だった
人が一つのセンサを遮るだけでミューティングが成立するような構成では、人と対象ワークを必要な条件で区別できない。採用機種の取扱説明書に沿って、入力構成・順序・時間と配置を検証する。
対策ではセンサの個数だけで判断せず、採用方式の成立条件と配置を照合する。人だけで条件が成立しないこと、ワーク通過中にも人が追随・回り込みできないことを確認する。
ミス③:ライトカーテンの検収を「点灯確認」だけで済ませた
LEDの点灯だけでは、安全距離・検出能力・停止時間・ミューティングの成立を確認できない。表示と安全機能の試験を区別し、受入仕様に対応する結果を記録する。
受け入れ検査のチェックポイント
設計条件と検査結果を一対一に対応させる。実機試験は機械・保護装置の取説に従い、担当者と安全な試験手順を定めて行う。人の身体を危険域へ入れて確認しない。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 検出能力・検出域 | 型式・設定に対応する試験棒を指定の経路で動かす。SF4Dでは投光器側・中央・受光器側で確認する。検出と停止状態の維持を確認する |
| 安全距離・侵入経路 | 計算書の版・型式・設定・方向・追加距離と実配置を対応させ、実測する。上下・横から危険源へ到達できないかも確認する |
| 総停止時間 | 遮光から危険動作停止までの時間を、計算書と同じ起終点・条件で測定する。最大値が設計値以内か記録し、変更・劣化の影響も再確認する |
| ミューティング | 正常搬送だけでなく、逆方向・詰まり・入力異常・追随侵入などを想定し、成立・終了・異常時動作が設計と一致するか確認する |
| 状態表示 | 色・点滅・名称と実際の状態が取説・設定と一致するか確認する。点灯だけで合格としない |
| 非常停止との併用 | ミューティング中にも非常停止が有効か確認する |
| 解除・リセット・再始動 | 人が通過して内側に残り得る場合、遮光解除だけで再始動しない構成を確認する。手動リセットと危険動作の始動を分け、内側から操作できない位置で全域を確認できるようにする |
ライトカーテンの出力が自動復帰することと、機械が自動的に危険動作を始めることは別である。Banner S4B取扱説明書(2.5.3・4.3〜4.5節)でも、通過後の残留と再始動を機械側の構成を含めて扱っている。
社内で説明するときの言い方
- 設計段階で:「ライトカーテンの設置位置は感覚ではなく安全距離の計算で決まります。設備停止時間と組み合わせて計算してから設備レイアウトに反映します」
- メーカーへ:「型番・設定・検出能力、総停止時間の内訳と最大値、適用版・接近経路を含む距離計算書を設計書に含めてください。ミューティングは配置・成立/終了/異常条件・表示と検証結果を、仕様の条件IDに対応させて提出してください」
- 経営層へ:「必要な安全機能を満たす構成を先に定め、安全柵案とライトカーテン案の設計・施工・検証・保守費用を同条件で比較します。作業性への効果は実工程の条件で試算します」
見落とされがちな運用上のリスク:「知らない人が踏む」
ライトカーテンの設計・設置が正しくできていても、検出区域や安全な通路が利用者に伝わっていなければ、意図せず検出区域へ入り、遮光する可能性がある。発生頻度を示す実測・経験ではなく、運用上のリスクとして検討する。
初めて入る人にも分かるように、検出区域と通路の位置を案内する。特に床面近くの検出区域は、見た目だけで判断せず、設置方向・検出範囲を取扱説明書と現物で確認する。
このとき起きることは2つある。
- 設備が突然止まる(ライトカーテンが正常に機能した場合)
- ミューティング中だと止まらない(ワーク通過のタイミングで進入し、設備が継続動作する)
前者は生産停止のロス、後者は人身事故のリスクになる。後者を注意銘板や声掛けだけで許容してはならない。人が入れる状態を防ぐ防護構成と、ミューティング条件の見直しが必要になる。
注意銘板で伝えること
警告表示は、危険源・禁止事項・必要な行動を分かるように伝えるために使う。厚生労働省の機械安全指針の解説(別表第5)は、残留リスクの情報や表示の明瞭さ、警報の識別性を扱っている。具体的な表示の要求は、対象機械の法令・規格・取説と照合する。
JIS B 9711:2002の公式概要が示す対象は、人体部位の押しつぶしを避ける最小すきまである。この概要だけを根拠に、ライトカーテンの注意銘板を一律に義務とすることはできない。
現場で表示・案内を検討する情報の例:
- 検出区域と危険源の位置
- 遮光時の動作と、ミューティング中の表示の意味
- 立入りの禁止事項、安全な通路・手順・担当者
注意銘板の有無だけで周囲の人へ危険が伝わるとは判断できません。表示位置・視認性・使用言語、通行経路と案内方法を確認します。表示は必要なガードや安全機能の代わりにせず、対象者が危険区域と立入り条件を理解できるかも確かめます。
注意銘板の先にある追加対策
銘板だけに頼らない対策の選択肢を整理する。以下の通知・案内は、安全距離や侵入防止の代替にはならない。事前警告の設置位置は、動線・接近条件・認知と対応・騒音や照明を検討して決める。一律の設置距離や、通知だけで侵入を防げるという前提は置かない。
検出区域への接近を知らせる補助通知として、センサと警告音・警告灯の組合せを検討する。動線・検出範囲・周囲の騒音や照明・利用者に合わせて認知できるかを確認する。必要な防護や安全停止を、この通知へ置き換えない。
検出区域や安全な通路を区別する補助表示として、床面ラインや発光表示を検討する。実際の区域との位置関係、照明・汚れ・摩耗、色だけに頼らない識別方法を確認する。費用と認知への効果は、設置・維持条件をそろえて評価する。
外来者・初入場者には、実際の表示や案内図を使って検出区域・危険源・安全な通路と行動を説明し、理解を確かめる。見える白線が検出光だとは説明しない。言語や利用者に合わせた案内を用意し、案内だけで事象が減ると決めつけず運用を確認する。
取説と設定に合わせ、出力ON/OFF・ミューティング・異常などを名称、色、点滅で区別する。ランプが点灯していても、保護が中断されている場合がある。表示は状態確認の補助であり、機械全体の安全性や検収完了を保証しない。
自分が知らない現場に入るときの確認習慣
ライトカーテンの検出区域は、見た目だけでは分からない場合がある。慣れていない現場では、担当者の案内で確認する。
検出光と床の表示は区別する。F3SG-SRの仕様は赤外光源を示しており、検出光が白い線として見えるとは限らない。可視の床表示を案内に使う場合は、実際の検出区域や安全な通路との位置関係を確認する。光や反射が見えなくても検出域は存在し得る。
初めての現場に入るときに確認すること:
- 入口付近の注意銘板・警告表示を読む
- 投光器・受光器(縦長の箱)がないか壁・柱を確認する
- 実際の床マーキングや案内図と、担当者の説明で検出区域・通路を確認する
- 「何かある?」と思ったら一度立ち止まって現場担当者に確認する
経験の有無だけで確認を省かず、その現場の検出区域・表示・通路と案内内容を確かめる。
まとめ
ライトカーテンの導入では、対象機械と型式・設定、検出能力、全接近経路、総停止時間をそろえ、安全距離を決める。K×Tだけの180 mmを、そのまま設置値にしない。必要な追加距離・下限・迂回防止も計算書と実配置へ対応させる。
ミューティングはセンサの個数だけで安全にならない。人が追随できない防護、成立・終了・異常条件、表示、非常停止と再始動防止までを機種ごとに検証する。
受け入れ検査では、点灯確認に加えて適切な試験棒・距離実測・総停止時間計測・ミューティング動作確認を行う。通知や入場案内も防護構成と整合させ、効果は現場で確認する。
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