設備保全計画の立て方|予防保全・予知保全・定期点検の設計方法
この記事でわかること
設備が突然壊れて生産が止まる、保全計画がなく場当たり対応になっている、どこを何の頻度で点検すればいいか分からない。設備保全計画の設計と運用方法を整理します。
1「壊れてから直す」では生産が止まる
設備が突然停止して生産計画が崩れる——これは「事後保全(BM:Breakdown Maintenance)」に頼った結果だ。事後保全は修理コストが高く、停止時間も読めず、部品在庫も管理できない。
設備保全の目標は「計画した通りに設備を稼働させ続けること」。そのための仕組みが保全計画だ。
2保全の種類と使い分け
| 保全の種類 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 事後保全(BM) | 壊れてから修理 | コスト安だが停止リスク大 |
| 予防保全(PM) | 周期を決めて定期的に部品交換・点検 | 停止を予防できるが過剰保全になりやすい |
| 予知保全(PdM) | 状態監視データで劣化を検知し最適なタイミングで保全 | 最も効率的だが導入コスト高 |
| 改良保全(CM) | 保全しやすい・壊れにくい設備に改良 | 根本的な解決 |
選択の基本方針:
- 停止すると大きな損失が出る重要設備 → 予防保全+予知保全
- 壊れても代替がある・影響が小さい設備 → 事後保全でコスト削減
- 繰り返し同じ箇所が壊れる → 改良保全で根本対策
3予防保全計画の作り方
Step 1:設備のランク分け(重要度評価)
全設備を一律に厳密に保全するのはコストが見合わない。重要度に応じてランクを付ける。
Aランク(最重要):
・停止で生産ライン全体が止まる
・代替設備なし
→ 予防保全+予知保全・在庫スペア確保
Bランク(重要):
・停止で一部工程が止まる
・代替が難しい
→ 定期点検・重要部品の在庫確保
Cランク(一般):
・停止の影響が限定的・代替あり
→ 事後保全または最低限の定期確認
Step 2:点検項目と周期の設定
設備の部位ごとに「何を・どの頻度で・どうやって確認するか」を決める。
【典型的な点検周期の目安】
日常点検(毎日):
・異音・異臭・異常振動の確認
・潤滑油の油面・漏れ確認
・エアフィルターのドレン排水
週次点検:
・ベルトの張り・摩耗確認
・ボルト・ナットの緩み確認
・センサーの動作確認
月次点検:
・給脂(グリースアップ)
・フィルター清掃・交換
・電気接点の清掃
年次点検:
・ベアリング交換(寿命計算に基づく)
・オイル交換
・絶縁抵抗測定
・安全装置の動作確認
Step 3:部品の寿命と交換周期の設定
消耗部品は寿命(MTBF:平均故障間隔)から交換周期を決める。
交換周期 = MTBF × 安全係数(0.7〜0.8)
例:ベアリングの計算寿命L10 = 20,000時間
安全係数0.8 → 16,000時間(約2年・8時間/日稼働)で交換
MTBFが不明な部品は、故障データの蓄積から推計する。保全記録をつけることが重要。
4点検記録と管理
点検チェックシートの設計
点検チェックシートは「判断基準」を明記することが重要。「確認した」だけでは担当者によって判断がばらつく。
NG例:「ベルトの状態を確認する」→ 何が問題か分からない
OK例:
□ ベルトのたわみ量:5〜10mm(テンション基準値)
□ ベルト表面のひび割れ:なし(ひび割れがあれば要交換)
□ ベルト幅の減り:原寸の90%以上(それ以下は要交換)
保全記録のつけ方
保全記録は将来の計画見直しと故障分析に使う。最低限記録すべき情報:
・実施日時
・設備名・設備番号
・点検・作業内容
・交換した部品(品番・数量)
・発見した異常(今回対処したか・次回対応か)
・次回点検予定日
5予知保全の導入
振動センサー・温度センサー・電流値の継続監視により、異常の兆候を早期発見する。
導入しやすい予知保全の手法
| 監視対象 | 測定方法 | 検知できる異常 |
|---|---|---|
| ベアリング | 振動センサー・温度センサー | 摩耗・損傷・異常発熱 |
| モーター | 電流値監視 | 過負荷・巻線劣化 |
| ポンプ・ファン | 振動・流量監視 | インペラ摩耗・閉塞 |
| 油圧ユニット | 油温・圧力監視 | オイル劣化・漏れ |
導入判断の目安: 予知保全装置のコスト < 1回の突発停止による損失 × 年間発生頻度
6よくある失敗
失敗1:保全計画はあるが実施されない
計画を作ったが現場が忙しくて後回しになり、いつの間にか機能していない。
対策: 保全作業を生産スケジュールに組み込む(計画停止)。「生産の合間にやる」ではなく、「保全のために生産を止める時間を確保する」という管理者の意思決定が必要。
失敗2:消耗部品の在庫がない
保全時期が来たが部品がなく、緊急発注で納期2週間——その間設備を止めざるをえない。
対策: 消耗部品の交換周期を元に在庫数を計算して確保する。発注リードタイムより長い在庫を持つ。
失敗3:保全記録がなくて繰り返し壊れる
同じ箇所が繰り返し壊れているのに、記録がなくて改良保全につながらない。
対策: 故障記録を必ず残し、同じ箇所が3回以上壊れたら改良保全(根本対策)を検討する。
7社内で説明するときの言い方
上司・管理者に対して: 「この設備は生産ライン全体のボトルネックでAランクです。ベアリングの交換周期を16,000時間に設定して計画保全に切り替えます。スペア在庫として2個確保します。」
現場・保全担当に対して: 「毎日の始業前にこの3点を確認してください。異音・油量・エアドレン。異常があればラインを止める前に連絡してください。」
8まとめ:保全計画設計の3ステップ
- 設備をランク分けする——重要度に応じて保全レベルを決める
- 点検項目と判断基準を決める——「確認した」ではなく数値基準を設定する
- 記録を残して改善につなげる——故障記録が次の改良保全の材料になる
次のステップ:
- 予防保全と生産技術の役割分担 — 保全と生産技術の役割分担へ
- OEEの基礎 — 保全効果をOEEで測定する
- 6大ロスの削減 — 故障ロスの削減アプローチへ
この記事の執筆者
seigitech 編集部
生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。