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生産技術工程設計初級2026-05-30

工程設計の手順と実務|工程フロー図・作業分析票・バランス表の作り方

工程フロー図・作業分析票・工程バランス表の作成手順から、ネック工程の特定・改善アクションまで実務目線で解説。新ライン設計と既存ライン改善での進め方の違いも網羅。

「なぜこのラインはこの順番なのか、説明できますか?」

製造ラインを担当してしばらく経った頃、先輩や顧客から突然こう聞かれることがあります。

「このライン、なぜ工程3の前に工程2があるんですか?」「この検査、どの段階に入れるのが最適ですか?」——現場を毎日見ていると「当たり前」に思えてくる工程の順番ですが、いざ説明しようとすると言語化できない、ということが起こります。

工程設計とは、「製品をどの順番で、どこで、どうやって作るか」を計画し、文書化するプロセスです。生産技術の仕事の中で最も基本となる設計行為であり、既存ラインの改善でも新ラインの立ち上げでも、工程設計の考え方を持っているかどうかで、ムダを見つける速度と改善の質が大きく変わります。

この記事でわかること

  • 工程フロー図(JIS Z 8206記号)の書き方と「隠れたムダの見つけ方」
  • 作業分析票の記入項目と作業時間の正しい測定方法
  • 工程バランス表でネック工程を特定する手順とバランス率の読み方
  • ネック工程への4つの対応策(分割・設備改善・並列化・TT見直し)
  • 新ライン設計と既存ライン改善での工程設計の進め方の違い

工程設計の3つの成果物

工程設計では、主に3種類の文書を作成します。

工程設計の3つの成果物

3つをセットで作ることで「どこに問題があるか」「どこを改善すれば全体が改善するか」が見えてくる

① 工程フロー図
原材料から完成品になるまでの流れを記号と矢印で表した地図。加工・検査・運搬・待ちを可視化する。
何の順番か・どこで何をするか
② 作業分析票
各工程の作業内容・時間・人数・使用設備を一覧にした仕様書。工程設計の根拠データになる。
各工程で何をするか・何秒かかるか
③ 工程バランス表
タクトタイムと各工程の作業時間を並べ、ネックと余裕を可視化した山積み表。
どこがネックで・どこに余裕があるか

① 工程フロー図の作り方

工程フロー図は、JIS Z 8206(工程図記号)で定められた記号を使って描きます。製造現場でよく使う記号は5種類です。

工程フロー図の記号(JIS Z 8206)

加工・検査だけでなく「運ぶ」「待つ」も記号で表す——ここに隠れたムダがある

加工
形状・性質・状態が変化する作業。切削・組立・塗装など
付加価値あり
検査
品質・数量を確認する作業。寸法測定・外観検査など
付加価値あり
貯蔵
計画的に保管する状態。倉庫・計画バッファなど
非付加価値(計画的)
D
遅延
意図しない待ち・滞留。設備待ち・前工程待ちなど
ムダ・改善対象
運搬
場所を移動する作業。台車・コンベアでの移動など
非付加価値・削減対象

フロー図を書くときのポイント

原材料の入荷から完成品の出荷まで、上から下へ(または左から右へ)流れるように描きます。工程の「入口」と「出口」を明確にすることで、どこで価値が付加され、どこで時間が消費されているかが一目でわかります。

加工・検査だけでなく、「モノを運ぶ時間」「待つ時間」もフロー図に含めると、隠れたムダが見えてきます。製造現場では、実際の加工時間より「運ぶ」「待つ」時間のほうが長いことがよくあります。

複数の工程が同時に進む場合(例:部品Aと部品Bの加工が並行して行われ、後で組み立てる)は、横に並べて描き、合流点を示します。


② 作業分析票の作り方

作業分析票は、各工程の「中身」を詳細化した表です。工程フロー図が「流れ」を示すのに対して、作業分析票は「各工程で何をするか」を記録します。

作業分析票に記入する項目

項目 内容
工程番号 連番(工程フロー図と対応)
工程名 作業の名称(例:外径旋削、ネジ締め、外観検査)
作業内容 具体的に何をするか(手順の概要)
作業時間 1サイクルあたりの実作業時間(秒または分)
作業者数 何人で行うか
使用設備・工具 設備名・治工具名
品質管理点 どこでどう確認するか
備考 注意点・前提条件

作業時間の測定方法

工程設計で最も重要なのが「正確な作業時間」の把握です。主な測定方法は2つです。

ストップウォッチ法:実際の作業をストップウォッチで計測します。最低でも10〜20サイクル測定し、平均値を使います。最速と最遅を除いた平均(トリム平均)を使うと、外れ値の影響を減らせます。

ビデオ分析法:作業をビデオで撮影し、後から分析します。ストップウォッチ法より精度が高く、「どの動作に時間がかかっているか」まで分解できます。改善活動ではビデオ分析が標準的な手法です。


③ 工程バランス表で「ネック」を見つける

工程フロー図と作業分析票が完成したら、**工程バランス表(山積み表)**を作成します。各工程の作業時間を棒グラフで並べ、タクトタイムとの比較を可視化したものです。

工程バランス表(山積み表)のイメージ

タクトタイム60秒を超えている工程がネック——ここがライン全体のペースを決める

タクトタイム 60秒
工程1
45秒
工程2
65秒 ← ネック(タクト超過)
工程3
40秒
工程4
55秒
工程5
30秒
工程2(65秒)がタクトを超過——このままではライン全体が65秒ペースになり、目標生産数を達成できない
工程5(30秒)は余裕あり——担当者を他の工程に兼務させることで人員配置の最適化ができる

この例では工程2がネック(ボトルネック)です。タクトタイム60秒を超えているため、このまま稼働するとライン全体が工程2の65秒ペースに引きずられ、生産目標を達成できません。

ネック工程への対応策

  • 作業内容の一部を隣の工程に移す(工程分割・工程統合)
  • 設備を追加して並行処理にする
  • 作業方法を改善して時間を短縮する
  • 治工具を改良して段取り時間を削減する

逆に、タクトタイムに対して作業時間が極端に短い工程(この例の工程5:30秒)は「余裕がある」ことを意味します。担当者を他の工程に兼務させることで、人員配置の最適化ができます。

バランス率(ライン効率)は「全工程の合計作業時間 ÷(タクトタイム × 工程数)× 100」で求めます。この例では(45+65+40+55+30)÷(60×5)× 100 ≈ 78%となり、残りの22%が工程間の待ちや余裕による非効率です。一般的にバランス率85〜90%以上を目標に工程改善を進めます。

タクトタイムの計算方法についてはタクトタイム設計の実務を参照してください。


工程設計で意識すべき3つの原則

原則1:付加価値を生む作業とそうでない作業を区別する

製造工程の中には、「製品に価値を加える作業」と「加えない作業」が混在しています。

  • 付加価値作業:加工・組立・検査(顧客が対価を払う作業)
  • 非付加価値作業(ムダ):運搬・待ち・手直し・過剰在庫

工程設計の目的の一つは、非付加価値作業を最小化することです。フロー図で「運搬」「遅延」の記号が多い箇所は、優先的に改善を検討します。

原則2:品質は工程で作り込む

検査工程は「不良を見つける」だけで、不良を「防ぐ」ことはできません。工程設計の段階で「どこでどんな不良が発生しやすいか」を考え、源流工程での品質作り込みを意識することが重要です。

工程FMEAを工程設計と並行して行うことで、「この工程でこの不良が出たら、どう検出・防止するか」を事前に計画できます。

原則3:変化点を管理できる工程にする

製造現場では、材料・設備・人・方法(4M)が変化することがあります。工程設計の段階で「変化点が発生したときに、どの工程でどう確認するか」を組み込んでおくと、変化点管理が実行しやすくなります。


新ライン設計と既存ライン改善での使い方の違い

新ライン設計の場合
1
類似工程の実績・設備カタログからフロー図・作業分析票を設計する
2
OEEを加味した実効CTで工程設計・設備選定する(カタログ値そのままで設計しない)
3
試作・検証で実測値を取得し、設計値との差を補正してから本格稼働へ
既存ライン改善の場合
1
現状の工程フロー図・作業分析票を「あるがままに」作成(現状把握)
2
「あるべき姿」のフロー図を別に描き、2つを比較して改善ポイントを特定する
3
現状→あるべき姿のギャップを埋める改善計画を立て、優先順位をつけて実行する

よくある失敗と対策

失敗1:フロー図を作ったままにする 作ること自体が目的になり、実際の工程改善に活かされないケースがあります。フロー図は定期的に見直し、実態と乖離していれば更新してください。

失敗2:作業時間を1回しか測らない 1回の測定値は外れ値の可能性があります。最低10サイクルは測定し、平均値を使ってください。

失敗3:ネック工程だけ改善しようとする ネック工程の作業時間を短縮しても、次のネックが別の工程に移るだけです。工程全体のバランスを見ながら改善計画を立てることが重要です。

失敗4:人の作業だけを分析する 設備の自動サイクル時間・段取り時間・設備待ち時間なども含めて分析しないと、ネックの本質を見誤ります。


まとめ

工程設計の基本は「工程フロー図で流れを見える化し、作業分析票で時間を把握し、工程バランス表でネックを特定する」という3ステップです。

「なぜこの順番か」「どこを改善すれば生産性が上がるか」という問いへの答えは、この3つの文書の中にあります。新ライン設計でも既存ライン改善でも、まず「現状を見える化する」ことから始め、数字と図で改善の優先順位を決めてください。

手元のラインで試すなら、まず工程フロー図の「遅延(D)」「運搬(→)」記号の数を数えることから始めるのが効果的です。その個数がそのまま改善の余地を示しています。

工程設計で設定したタクトタイムの計算方法はタクトタイム設計の実務で詳しく解説しています。