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抜取検査とAQLの基礎|全数検査が不要な理由とサンプル数の決め方

最終更新日 2026-06-03読了時間 約5

この記事でわかること

全数検査とどう使い分ければいいか、AQLって何を意味するのか分からない。抜取検査の原理とJIS Z 9015のサンプル数の決め方を実務で使えるレベルで整理します。

1「全数検査すれば安心」は本当か

品質トラブルが起きたとき、「全数検査に切り替えよう」という判断をしがちだ。しかし全数検査には根本的な問題がある——検査員の見落としが積み重なり、不良品を100%捕捉できるわけではない

検査の疲労・検査速度の速さ・検査環境によって、全数検査の見落とし率は5〜15%に達することがある。これに対して、適切に設計された抜取検査は「統計的に合格できる可能性がある不良率」を保証するもので、目的が違う。

この記事では抜取検査の原理とAQLの意味、JIS Z 9015に基づくサンプル数の決め方を整理する。


2抜取検査の原理

ロット(まとまり)からサンプルを取り出して検査し、ロット全体の合否を判定する。全数を検査しない代わりに、統計的に「このロットは合格できる品質水準か」を判断する

合格判定数(Ac)と不合格判定数(Re)

サンプルの中に不良品が何個以下なら合格か(Ac)、何個以上なら不合格か(Re)を設定する。

例:サンプル数80個、Ac=2、Re=3 の場合
 → 不良品が0〜2個 → ロット合格
 → 不良品が3個以上 → ロット不合格

OC曲線(検査特性曲線)

抜取検査の性能を表す曲線。横軸にロットの実際の不良率、縦軸にそのロットが合格になる確率を示す。

合格確率
100%│\
    │ \
 50%│  \
    │   \
  0%└─────────
    0%  1%  2%  3%  ←ロットの実際の不良率

OC曲線の形は「サンプル数・Ac」によって決まり、サンプル数が多いほど曲線の傾きが急になって判別力が上がる。


3AQL(合格品質水準)とは

AQL(Acceptable Quality Level)は「このくらいの不良率のロットなら、高確率でライン通過させてよい」という上限値。

  • AQL 0.65%: 1,000個中6.5個以下の不良率なら概ね合格 → 高精度部品・重要保安部品
  • AQL 1.0%: 1,000個中10個以下 → 一般機械部品
  • AQL 2.5%: 1,000個中25個以下 → 一般外観・寸法
  • AQL 4.0%: 1,000個中40個以下 → 軽微な外観不良

重要: AQLは「この不良率のロットが高確率で合格になる基準」であり、「このロットには最大AQL%しか不良品が入っていない保証」ではない

AQL=1.0%の抜取検査でロットが合格しても、実際のロット不良率が3%である可能性はゼロではない。これは抜取検査の本質的な限界(見逃しリスク)であり、工程能力(Cpk)による工程管理と組み合わせることで補う。


4JIS Z 9015に基づくサンプル数の決め方

JIS Z 9015(ISO 2859-1)はロット抜取検査の国際標準。以下の手順でサンプル数を決める。

Step 1:検査水準を選ぶ

検査水準 特徴 使いどころ
特別検査水準 S-1〜S-4 サンプル数が少ない 破壊検査・高コスト検査
一般検査水準 I 標準より少ない 検査コスト重視
一般検査水準 II 標準 通常はこれ
一般検査水準 III 標準より多い 判別力を高めたいとき

通常は一般検査水準 IIを使う。

Step 2:ロットサイズからサンプル文字を調べる

ロットサイズ サンプル文字(検査水準II)
2〜8 B
9〜15 C
16〜25 D
26〜50 E
51〜90 F
91〜150 G
151〜280 H
281〜500 J
501〜1200 K
1201〜3200 L
3201〜10000 M

Step 3:AQLとサンプル文字からサンプル数・Acを読む

JIS Z 9015の表(抜粋):

サンプル文字 サンプル数 AQL 1.0% AQL 2.5% AQL 4.0%
G 32 Ac=1/Re=2 Ac=2/Re=3 Ac=3/Re=4
H 50 Ac=1/Re=2 Ac=3/Re=4 Ac=5/Re=6
J 80 Ac=2/Re=3 Ac=5/Re=6 Ac=7/Re=8
K 125 Ac=3/Re=4 Ac=7/Re=8 Ac=10/Re=11
L 200 Ac=5/Re=6 Ac=10/Re=11 Ac=14/Re=15

例: ロット500個、AQL 2.5%、一般検査水準IIの場合

  • サンプル文字:J(501〜1200の1つ前のJ:281〜500)
  • サンプル数:80個
  • Ac/Re:5/6

→ 80個検査して、不良5個以下なら合格、6個以上なら不合格。


5正常・強化・緩和検査の切り替え

検査結果の履歴に基づいて検査の厳しさを切り替える仕組みが JIS Z 9015 に組み込まれている。

通常検査(普通)
 ↓ 直近5ロット中2ロット不合格
強化検査(サンプル数増加)
 ↓ 直近5ロット連続合格
通常検査に戻る
 ↓ 直近10ロット連続合格
緩和検査(サンプル数減少)

この切り替え運用により、品質の良いメーカーは検査負荷が減り、品質の悪いメーカーは自動的に厳しい検査になる。


6全数検査と抜取検査の使い分け

使うべき場面 全数検査 抜取検査
安全部品・保安部品 △(リスク評価が必要)
不良品が市場に出た場合の影響が大きい
ロットサイズが小さい(50個以下) △(統計的意味が薄い)
工程能力が十分(Cpk ≧ 1.67)
破壊検査が必要 ✅不可
大量生産(1000個以上) コスト高

重要な考え方: 全数検査が必要な品質レベルは「工程改善で不良を出さない」ことを目指す。全数検査は暫定処置であり、永続的な解決策は工程能力の向上。


7社内で説明するときの言い方

上司・品質管理者に対して: 「このロットはAQL 2.5%、サンプル80個で検査します。不良5個以下なら合格です。工程Cpkが1.33あるので、このサンプル数で十分な判別力があります。」

外注先・仕入れ先に対して: 「受け入れ検査はJIS Z 9015、一般検査水準II、AQL 1.0%で実施します。不合格になった場合は全数選別後の再提出をお願いします。」

現場・検査員に対して: 「このロット500個から80個を無作為に抜き取って検査します。不良が5個見つかった時点でロット不合格です。6個目を見つけたら検査を止めて報告してください。」


8まとめ:抜取検査設計の3ステップ

  1. AQLを決める——部品の重要度・不良の影響から許容不良率を設定
  2. JIS Z 9015でサンプル数とAc/Reを決める——ロットサイズと検査水準から読む
  3. 全数検査との使い分けを明確にする——安全部品・小ロットは全数、大量生産は抜取

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。