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溶接設計の基礎|継手選定・強度計算・よくある設計ミスを現場目線で整理

最終更新日 2026-06-03読了時間 約6

この記事でわかること

溶接設計で継手の強度が足りるか判断できない、溶接記号の指示が曖昧で外注先と揉める。隅肉溶接のサイズ設計と継手選定の実務判断を整理します。

1「溶接してください」だけでは設計として成立しない

設備フレームや治具のブラケットを設計するとき、「ここは溶接で固定」と書いて外注に出す——こういうやり方をしていると、溶接サイズが足りなくて強度不足になったり、逆に過剰な溶接で部品が熱変形したりするトラブルが起きる。

溶接設計で必要な判断は「どの継手タイプで・どのサイズの溶接を・どこに入れるか」の3点。これを図面に明示できてはじめて設計として完結する。


2溶接継手の種類と使い分け

継手タイプによって強度・コスト・変形量が大きく変わる。

継手タイプ 形状 特徴 主な用途
突き合わせ継手 ─┤├─ 断面全体で応力を受ける・強度が高い フレーム本体、高負荷部
T継手(隅肉) ─┤⊥ 施工が簡単・強度は突き合わせより低い ブラケット、補強リブ
重ね継手(隅肉) ─┤┤─ 最も簡単・板が重なる分スペースを取る 板厚薄い部品・溶接アクセスが片側のみ
かど継手 ─┐ 箱型構造の角部 カバー・板金ボックス

判断の基本: 高い荷重がかかる部位(フレームの主要な結合部)→ 突き合わせ継手。取付ブラケットや補強材 → T継手の隅肉溶接。どちらか選べるなら施工コストとアクセス性でT継手が現実的な場合が多い。


3隅肉溶接のサイズ設計

生産設備の溶接の大半は隅肉溶接(すみにくようせつ)。サイズ(脚長)の設計が核心になる。

溶接サイズ(脚長)と有効のど厚

隅肉溶接の強度は「有効のど厚(a)」で決まる。

脚長 S の等脚隅肉溶接の有効のど厚 a = 0.707 × S

脚長6mmなら有効のど厚は約4.2mm。この断面積と溶接長さで強度を計算する。

簡易強度チェック

せん断荷重に対する許容荷重:

許容荷重 P = τ × a × L
 P:許容荷重(N)
 τ:溶接材のせん断許容応力(N/mm²)
   軟鋼SS400なら約100N/mm²(設計値)
 a:有効のど厚(mm)
 L:溶接長さ(mm)

例: 脚長6mm(a=4.2mm)、溶接長さ100mm、SS400の場合 P = 100 × 4.2 × 100 = 42,000N(約4.3tonf)

これは片側1本の溶接ビードの値。両側溶接なら2倍。

板厚と脚長の関係

溶接する板が薄いのに脚長を大きくしても意味がない——過剰な入熱で母材が変形・歪む。

板厚 t(mm) 推奨脚長 S(mm)
3〜4 3〜4
5〜8 4〜6
9〜12 6〜8
13〜19 8〜10
20以上 10〜12(事前設計要)

ルール: 脚長は板厚以下を原則とする(過大溶接防止)。強度が足りない場合は脚長を増やすより溶接長さを伸ばす両側溶接にするほうが変形リスクが少ない。


4溶接記号の読み方

JIS Z 3021で規定された溶接記号を図面に正しく指示することで、外注先との認識ずれを防げる。

記号の基本構造

    溶接サイズ(脚長)
     ↓
  (S)記号(L) ← 矢の側の溶接指示
基準線 ────────
  (S)記号(L) ← 反対側の溶接指示
     ↑
  溶接記号(隅肉はΔ・突き合わせはⅠ等)

よく使う記号

記号 意味
△(基線の下) 矢の側の隅肉溶接
△(基線の上) 反対側の隅肉溶接
●(尾部) 現場溶接
○(矢と基線の交点) 全周溶接

指示例: 6△100(50) → 脚長6mm、溶接長100mm、ピッチ50mmの断続溶接


5よくある設計ミスと失敗の構造

ミス1:溶接サイズを指定しない

「溶接で接合」とだけ書いて脚長を指定しない。外注先が標準的なサイズ(3〜4mm)で施工すると強度不足になる。強度が必要な部位は必ず脚長を指定する。

なぜ起きるか:図面を簡略化しようとして省いてしまう。または「強度計算をしていないから書けない」という状況。後者の場合は計算してから指定する。

ミス2:全周溶接で変形が起きる

全周溶接○を指定すると入熱が大きくなり、部品が熱変形する。精度が必要な部品(ガイドベース、位置決めブラケット)では溶接後の機械加工を前提に設計するか、溶接量を最小化する設計に変える。

なぜ起きるか:「しっかり固定したい」という心理から全周溶接を選んでしまう。溶接後に歪み取り工程が増えてコストが跳ね上がる。

ミス3:溶接アクセスを考慮しない

溶接トーチが入らない狭い隙間、裏側が見えない構造——施工できない溶接を図面に書いてしまう。外注先から「ここ溶接できません」と言われて設計変更になる。

なぜ起きるか:3D CADで形状を確認するが、実際の溶接トーチの向き・角度・アクセス範囲を想定しない。

対策: 設計段階で溶接トーチの入り方をシミュレーション、または溶接専業の外注先に事前に確認する。

ミス4:焼入れ鋼や高炭素鋼を溶接しようとする

S45C以上の炭素鋼や焼入れ鋼は溶接割れが起きやすい。設計変更できないなら予熱・後熱処理が必要で、コストと工程が増える。

判断の目安: 炭素当量Ceq = C + Mn/6 + (Cr+Mo+V)/5 + (Ni+Cu)/15 > 0.4なら溶接前に要注意。SS400(低炭素鋼)・SUS304は通常問題なし。


6溶接後の変形対策

溶接は熱収縮によって必ず変形が起きる。設計段階で見込んでおく必要がある。

変形を減らすための設計ルール:
1. 溶接ビードは左右対称に配置する
2. 不必要な溶接量を増やさない(必要最小限の脚長・長さ)
3. 精度が必要な面は溶接後に機械加工する
4. 長い部材は両端から交互に溶接する(施工の問題だが図面に指示できる)
5. 拘束治具(歪み防止治具)の使用を指示する

精度が必要な治具ベースや位置決め板は、溶接後に焼き鈍し(応力除去焼鈍)→機械加工の工程を前提に設計する。


7材料選定と溶接性

材料 溶接性 注意事項
SS400(軟鋼) 良好 特別な処理不要
SM400/490(溶接構造用) 良好 板厚25mm超は予熱推奨
SUS304 概ね良好 溶接後の鋭敏化に注意(粒界腐食)
SUS316 概ね良好 SUS304より耐食性高く溶接性同等
A5052(アルミ) 要専用溶接機 TIG/MIG溶接・強度は鋼より低い
S45C以上(中炭素鋼) 注意要 予熱必要・設計段階で検討

8社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「このブラケットの溶接サイズが未指定なのですが、荷重から計算すると脚長6mm以上は必要です。図面に追記してから外注に出します。」

外注先・製作会社に対して: 「ここは脚長6mm、溶接長100mmの隅肉溶接を両側でお願いします。溶接後に変形が出た場合は歪み取りを工程に含めてください。」

現場・組立担当に対して: 「この溶接は強度部材なので、図面指示通りの脚長で溶接してください。脚長が小さいと強度不足になります。」


9まとめ:溶接設計で決めるべき3点

  1. 継手タイプ——高荷重は突き合わせ、一般取付はT継手隅肉
  2. 溶接サイズ(脚長)——板厚以下を原則、強度計算で確認
  3. 溶接記号を図面に明示——「溶接」とだけ書かない

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。