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カム機構とリンク機構の基礎|往復・間欠・揺動運動を設計する

最終更新日 2026-06-03読了時間 約4

この記事でわかること

カムとリンクの違いが分からない、運動パターンをどう実現するか設計できない。カム曲線の選び方とリンク機構の基本設計を実務判断レベルで整理します。

1「シリンダーで動かせばいい」の限界

往復運動・間欠運動・揺動運動をシリンダーと電磁弁で実現しようとすると、速度プロファイルの設定・センサーによる位置確認・PLCシーケンス制御が必要になる。高速な繰り返し動作や複雑な軌跡が必要な場合、カム機構やリンク機構のほうがシンプルかつ高速に実現できることがある。

この記事では、カム機構とリンク機構の基本的な設計思想と使い分けを整理する。


2カム機構の基本

カムとは「回転運動を任意の往復・揺動運動に変換する機構」。カム形状を変えることで、任意の運動プロファイルを機械的に作り込める。

カムの種類

種類 特徴 用途
板カム(平面カム) 平板に輪郭を切り出す。最も一般的 低速〜中速の往復運動
円筒カム 円筒面に溝を切る。軸方向の往復運動 高速包装機・繊維機械
端面カム 端面の凹凸で動かす 低荷重の間欠運動
板カム(溝カム) 溝に従動節を入れる。正確な押し引き両方向 高速・高精度用途

カム曲線の選び方

カム曲線は「カムが1回転する間に従動節がどう動くか」を定義する。

カム曲線 特徴 使いどころ
等速度曲線 等速で往復。衝撃が大きい 低速のみ
等加速度曲線 前半加速・後半減速。衝撃が少ない 中速
単純調和曲線(SHM) サイン波形。滑らか 中速・中荷重
サイクロイド曲線 加速度の変化率(躍度)が最小 高速・精密用途
修正台形曲線 高速時の衝撃・振動が少ない 最も広く使われる

現場での選定基準:

  • 低速(カム回転数100rpm以下):等加速度・SHMで十分
  • 中高速(100〜500rpm):修正台形曲線または修正サイン曲線
  • 高速(500rpm超):サイクロイドまたは修正台形

速度が上がるほど「躍度(加速度の時間微分)」が振動・騒音の原因になる。高速ほど躍度が小さいカム曲線を選ぶ。

カムの設計手順

① 運動仕様を決める
 ・ストローク(リフト量)
 ・上昇角・下降角・停留角(カム回転角度の配分)
 ・最大速度・最大加速度の許容値

② カム曲線を選ぶ
 (速度・荷重・振動要件から)

③ カム輪郭を計算する
 ・リフト曲線から逆変換してカム輪郭座標を計算
 ・CADソフトまたはExcelで輪郭点群を生成

④ 従動節の形状を決める
 ・ローラー従動節(一般的)
 ・ナイフエッジ(小型・精密)
 ・平面従動節(簡易的)

⑤ 最小曲率半径を確認する
 ・曲率半径 > ローラー半径 であること(逆だとアンダーカット)

3リンク機構の基本

リンク機構は「剛体(リンク)を回り対偶または滑り対偶でつないで運動を伝える機構」。

4節リンク機構(最も基本的)

4本のリンクを4つの回り対偶でつないだ機構。入力リンクの回転運動を出力リンクの揺動運動に変換する。

固定リンク(フレーム)
 ↕(回り対偶)
入力リンク(クランク)──── 連結リンク
          ↕(回り対偶)
        出力リンク(ロッカー)

スライダクランク機構

クランクの回転をスライダ(直線往復)に変換する。エンジンのピストン機構が代表例。

クランク(回転)→ コンロッド → スライダ(往復直線)
  • クランク長 ≪ コンロッド長のとき:ほぼ等速の往復運動
  • クランク長がコンロッド長に近いとき:往路と復路で速度が異なる(急戻り機構に応用)

トグル機構

2本のリンクが一直線になる位置(トグル点)でリンク力が理論上無限大になる性質を利用する。

用途: プレス機・クランプ・型締め機構。わずかな入力力で大きなクランプ力を得られる。


4カムとリンクの使い分け

要件 カム リンク
任意の運動プロファイルが必要 ✅ 得意 △ 限られた軌跡
シンプルな往復・揺動 △ 加工が必要 ✅ 簡単
高速繰り返し ✅(曲線選択が重要)
大トルク伝達 △ カムが摩耗 ✅ リンクで大力を伝達可
設計の自由度 高い(形状で自由設計) 低い(節数・配置で制約)
製作コスト 高い(NC加工) 安い(標準部品で構成)

5よくある失敗

カム:最小曲率半径の不足

カム曲線の計算を誤り、輪郭の一部でアンダーカット(輪郭の反転)が生じる。NCデータ上では加工できても、工具経路が干渉して正確に加工できない。

対策: 設計段階で各点の曲率半径を計算し、ローラー半径以上であることを確認する。

リンク:デッドポイント通過

4節リンク機構で入力・出力リンクと連結リンクが一直線になると、駆動力が伝わらなくなる(デッドポイント)。クランク機構では回転方向が定まらなくなる。

対策: フライホイールで慣性を使って通過させる、または2つの機構を位相をずらして組み合わせる。


6社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この往復動作は毎分300サイクルなのでシリンダーでは速度が出ません。カム機構で機械的に動かす設計に変えます。修正台形曲線で衝撃を抑えます。」

外注先・機械メーカーに対して: 「カム輪郭の座標データをCSVで渡します。最小曲率半径は8mmなので、ローラー径は6mm以下でお願いします。」


7まとめ

  • 任意の運動プロファイル → カム機構。曲線選択で高速化・低振動化
  • シンプルな往復・揺動・大力 → リンク機構
  • 高速カムには修正台形曲線が現場での標準選択

次のステップ:

👷

この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。