「シリンダーで動かせばいい」の限界

往復運動・間欠運動・揺動運動をシリンダーと電磁弁で実現しようとすると、速度プロファイルの設定・センサーによる位置確認・PLCシーケンス制御が必要になる。高速な繰り返し動作や複雑な軌跡が必要な場合、カム機構やリンク機構のほうがシンプルかつ高速に実現できることがある。

この記事では、カム機構とリンク機構の基本的な設計思想と使い分けを整理する。


カム機構の基本

カムは、輪郭と従動節の接触を利用して、入力運動を所定の往復・揺動運動などへ変換する機構。形状によって動きを設計できるが、速度・加速度、接触、強度や製作条件を満たす範囲で実現する。

カムの種類

種類 形状・動かし方 設計で確認する点
板カム(外周カム) 板の外周輪郭に従動節を接触させる ばね等による接触維持、圧力角、曲率
円筒カム 円筒面の溝等で従動節を案内する 進行方向、溝の形状、ローラーとの接触
端面カム 端面の形状で従動節を動かす 軸方向の荷重、接触と案内方法
溝付き板カム 溝の両側で従動節の運動を拘束する 溝幅・すきま、両側輪郭の干渉と接触

種類の名前だけで、高速・高精度・低荷重用と決まるわけではない。従動節の形状と接触の保ち方も合わせて選ぶ(CMU:カム機構の分類と輪郭)。

カム曲線の選び方

カム曲線は、入力角度に対する従動節の変位を定める。入力の回転速度と合わせて、実際の速度・加速度・躍度(加速度の時間微分)を求める。次の表は、一定速度で回るカムの上昇区間を、前後の停留へ接続する場合の比較である。

カム曲線 運動と接続の特徴 確認する点
等速度曲線 区間内は等速だが、停留との境で速度が急変する 実際の機構では加減速区間が必要。低速なら無条件に使えるとはしない
等加速度曲線 前半の一定加速と後半の一定減速で構成する 端点と加減速切替部で加速度が段差になる
単純調和曲線(SHM) 半波の調和変位では端点速度が0になる 端点加速度は0でなく、停留へそのままつなぐと加速度が段差になる
サイクロイド曲線 端点の速度・加速度が0になり、停留へ加速度を連続接続できる 躍度まで連続とは限らず、すべての評価指標で最小という意味ではない
修正台形・修正サイン等 加減速部を調整して特性を変える 採用する曲線の定義と最大速度・加速度・躍度を比較する

停留を挟まない連続した調和往復などは、表とは接続条件が異なる。区間の名称だけで滑らかさを判断しない。

選定では、回転数に加えてリフト量・動作角・停留時間・負荷をそろえる。 リフト量をh、動作時間をT、無次元の曲線をfとすると、変位はh f(t/T)、速度はh/T、加速度はh/T²、躍度はh/T³にそれぞれ比例する。同じ回転数でも、動作角を短くすれば動作時間が縮まり、動的負荷は変わる。

100rpm・500rpmという境界だけで曲線を決めず、最大値、接続、圧力角、駆動トルク、負荷や機構の振動特性を照合する。修正台形も選択肢の一つである。三共製作所のカム曲線解説も、速度・加速度などのトレードオフを踏まえた選定を説明している。

カムの設計手順

  1. 運動仕様を決める。 リフト量、上昇・下降・停留角、入力回転数、負荷、許容速度・加速度・振動を整理する。
  2. 曲線と従動節を選ぶ。 ローラー・平面などの接触形式、案内と接触維持の方法を決める。従動節が変われば必要な輪郭も変わる。
  3. 軌跡から実輪郭を求める。 ローラー従動節では、カムを固定して見たローラー中心の軌跡がピッチ曲線となる。これと、ローラーが接する実際のカム輪郭を区別して座標を求める。
  4. 圧力角・曲率・接触を確認する。 外周板カムについて、ピッチ曲線の凸部の最小曲率半径をρ、ローラー半径をrとしたとき、r < ρとなるようにする。等号では実輪郭に尖点が生じ、r > ρではアンダーカットで所定の軌跡を再現できなくなる。これは幾何条件であり、接触応力・寿命・ばね力などの確認も必要になる。
  5. 製作・検査条件を決める。 輪郭座標の基準と単位、ローラーの寸法・公差、工具経路、干渉、表面状態を加工先と確認する。

上の曲率条件は、すべてのカム形状に同じ式を適用する指示ではない。凹部や溝の両側輪郭は、接触する側の曲率と干渉を別に確認する(Union College:ローラー径とピッチ曲線、14〜16頁)。


リンク機構の基本

リンク機構は「剛体(リンク)を回り対偶または滑り対偶でつないで運動を伝える機構」。

4節リンク機構(最も基本的)

4本のリンクを4つの回り対偶で閉じてつなぎ、1本を固定した機構。以下は、入力ABが回転し、出力CDが揺動するクランク・ロッカーの構成例である。

       B o----------o C
        /     BC     \
    AB /              \ CD
      o================o
      A       AD       D

模式図のoは回り対偶(ピン接合)。A・Dは固定支点で、ADがフレーム、BCが連結リンク。ABをAのまわりに駆動し、CDのDまわりの動きを取り出す。図は接続関係を示し、寸法比は表していない。

回転・揺動の組合せは、リンク長と固定するリンクで変わる。すべての4節リンクが回転から揺動へ変換するわけではなく、両側が回転する構成や両側が揺動する構成もある(CMU:4節リンクの分類)。

スライダクランク機構

クランクの回転をスライダの直線往復へ変換する。ここでは、クランク中心Oがスライダの案内線上にある中心形で、クランクを一定角速度ωで回す場合を考える。

          B o
           / \
        r /   \ L
         /     \
        o-------[o] <--> x
        O        A

Oは固定支点、OBは長さrの入力クランク、BAは長さLのコンロッド。O・B・Aのoは回り対偶で、Aのブロックと固定案内との間が滑り対偶。案内線はOを通り、Aはその上を左右に動く。図は寸法を表さない。

長いコンロッドにすると運動は単振動に近づくが、往復行程全体が等速になるわけではない。 L > rとし、右向きを位置xの正方向とし、そこから測ったOBの角度をθとすると、幾何関係は次のようになる。

x = r cosθ + √(L² − r² sin²θ)
Lがrに比べて十分長いとき:x ≈ L + r cosθ
                         v ≈ −rω sinθ

どちらの端でも速度は0になり、途中では変わる。Jönköping大学のスライダクランク教材も、一定角速度の入力から位置を求めて微分する方法を示している(上式は右向きを正にした表記)。

この中心形では、一方の端から他方の端までクランクが半回転するため、往路と復路はそれぞれπ/ωの時間になる。L/rを変えるだけでは急戻りにはならない。往復時間を変えたい場合は、案内線を中心からずらした配置や別の機構、入力速度の制御などについて、両端の位置と各行程に必要な時間を計算する。

トグル機構

リンクが一直線に近づく配置を利用して、大きな力の増幅を得る機構。プレス・クランプ・型締めなどに使われる。

「力が無限大」は、剛体・無摩擦とした特定の入力方向のモデルで、力の比を一直線の極限まで考えた表現である。一直線ならどの入力でも無限大の力が出るわけではない。実機では変形・摩擦・強度、駆動力やストッパーで限界が決まる。

クランプでは、操作で発生する締付力と、ロックした状態で耐えられる保持力も分けて選ぶ(Carr Lane:締付力と保持力)。


カムとリンクの使い分け

要件 カムで確認すること リンクで確認すること
所定の運動プロファイル 輪郭で設計しやすいが、圧力角・曲率・接触を確認する 節数・寸法・配置で得られる軌跡と速度を求める
往復・揺動 曲線と輪郭の製作が必要 基本機構を使える場合がある。死点と速度変動に注意
高速繰り返し 曲線だけでなく接触維持と慣性負荷を確認 慣性負荷・振動・ピンや軸受の負荷を確認
大きな力 接触面圧・摩耗と支持を確認 伝達角・部材強度・座屈や接合部を確認
製作・変更 輪郭加工、精度、カム交換等の費用を見積もる 部品点数、関節精度、組立と調整の費用を見積もる

方式名だけで性能や価格を決めず、同じ動作・負荷・精度の要求で比較する。


よくある失敗

カム:最小曲率半径の不足

ローラー中心のピッチ曲線だけを描けても、指定のローラーでその動きを実現できるとは限らない。ピッチ曲線の凸部でローラー半径がその曲率半径に達すると尖点となり、さらに大きいとアンダーカットが生じる。

対策: どの曲線の半径かを明示し、実輪郭を生成して全行程を確認する。加工工具の経路・干渉の確認はこれと分ける。ローラー半径との大小関係だけで製作性・接触応力まで合格とはしない。

リンク:デッドポイントと駆動方向

4節リンクの図でABとBCが一直線になると、CD側からBCを介して押しても、ABをAまわりに回すモーメントを生じない死点になる。同じ姿勢でABを直接駆動する場合まで、一律に駆動不能とはしない。 固定リンクを含む4本すべてが一直線になる変位点(change point)は、組立姿勢の分岐も関わるため区別する。

対策: どのリンクを駆動し、どの姿勢を通るかを決める。運転中に慣性で通過する方法と、死点で停止した状態からの始動は別に検討する。フライホイールを付ければ死点から必ず始動できるわけではない。必要に応じて配置・位相や駆動方法を見直す(CMU:死点と駆動側)。


社内で説明するときの言い方

次は仕様を確認するための説明例であり、特定装置の実測結果ではない。

上司・設計者に対して: 「要求は毎分300サイクルなので、1周期は0.2秒です。往復の移動時間と停止時間を配分し、ストローク・負荷・弁や配管を含めてシリンダーの可否を調べます。カム案も、同じ条件で曲線と駆動力を比較します。」

サイクル数だけでは、シリンダーの限界を決められない。SMCの高速・高頻度シリンダー資料にも、ストロークや推奨回路を条件とした動作頻度が示されている。別機種の上限値を、そのまま計画中の設備に適用しない。

外注先・機械メーカーに対して: 「外周板カムの凸部で、ピッチ曲線の最小曲率半径を8mm、候補ローラー径を6mmと仮定しています。ローラー半径は3mmで大小関係は満たしますが、実輪郭・圧力角・接触応力と加工条件を確認したいです。座標データはピッチ曲線と実輪郭を区別し、基準・単位・公差を添えて渡します。」


まとめ

  • 所定の動きを作り込む → カム曲線と接触・製作条件を一緒に検討する
  • 往復・揺動や力の伝達 → リンクの配置、速度変動、駆動方向を確認する
  • 高速化 → 回転数や曲線名だけで決めず、動作時間・負荷・振動と最大値で比較する

次のステップ: