seigitech

モーター選定の基礎|サーボ・ステッピング・誘導モーターの使い分けと仕様決定

最終更新日 2026-06-03読了時間 約4

この記事でわかること

サーボとステッピングの違いが分からない、トルクと出力の計算ができない、選定ミスで装置が動かない。用途別モーター選定と仕様計算の方法を整理します。

1「とりあえずサーボで」は正しいか

位置決めが必要な軸にはサーボモーター、というのが自動化設備の定番だ。しかし、コスト・制御の複雑さ・保全負荷を考えると、ステッピングモーターや誘導モーターで十分な用途にサーボを使うのは過剰投資になる。

反対に、低コスト優先でステッピングを選んだら高負荷時に脱調(ステップを飛ばす)してしまった、というトラブルも多い。

モーター選定は「用途に必要な性能を整理してから種類を選ぶ」のが正しい順序。


23種類のモーターの特徴比較

項目 誘導モーター(ACモーター) ステッピングモーター サーボモーター
位置制御 不可(回転数制御のみ) 可(オープンループ) 可(クローズドループ)
精度 低い 中程度(脱調リスクあり) 高い
速度範囲 狭い(定格回転数付近) 低速向き 広い
トルク特性 高速ほど低下 低速で高トルク 全域で安定
コスト 安い 中程度 高い
制御の複雑さ 簡単(ON/OFF or インバータ) 中程度 複雑(サーボアンプ必要)
保全 ほぼ不要 ほぼ不要 エンコーダ・ケーブル管理

3用途別の選び方

誘導モーター(ACモーター)を使う場面

  • コンベア・ファン・ポンプなど「回し続けるだけ」の用途
  • 位置決め不要、速度は大まかに合えばいい
  • インバータと組み合わせると速度調整が可能
  • コスト最優先で、止まる位置を気にしない

ステッピングモーターを使う場面

  • 位置決めが必要だがエンコーダをつけたくない(コスト削減)
  • 速度が遅く(1000rpm以下)、トルクが安定している
  • ディスペンサー・小型搬送・カメラ位置調整など軽負荷用途
  • 脱調しないよう、必要トルクの2倍以上の余裕を持って選定する

サーボモーターを使う場面

  • 高速・高精度の位置決めが必要
  • 負荷変動が大きく、脱調リスクを許容できない
  • 多軸同期制御が必要
  • コストより性能優先のとき

4必要トルクの計算

モーター選定の核心は「必要トルクがモーターの定格トルク内に収まるか」の確認。

基本式

必要トルク T(N·m)= 負荷トルク + 加速トルク + 摩擦トルク

負荷トルク TL = F × r
 F:負荷に働く力(N)
 r:モーター軸からの距離(m)または減速後の有効半径

加速トルク Ta = J × α
 J:システム全体の慣性モーメント(kg·m²)
 α:角加速度(rad/s²)= ω/t

慣性モーメントの計算

円柱(プーリー・ローラー):J = (1/2) × m × r²
 m:質量(kg)、r:半径(m)

直線運動の換算:J = m × (リード/(2π))²
 m:ワーク質量(kg)、リード:1回転で進む距離(m)

選定の余裕率

計算した必要トルクに対して、定格トルクの2〜3倍を目安に選ぶ。

理由:

  • 計算には含まれていない摩擦・抵抗の存在
  • 加速・減速時の瞬間的なトルク増大
  • 経年劣化・温度変化による性能低下

5ギヤ・減速機の組み合わせ

モーター単体では回転数が高すぎる(2000〜3000rpm)場合、減速機を組み合わせてトルクを増やし回転数を下げる。

減速比 i = モーター回転数 ÷ 出力軸回転数

出力トルク = モータートルク × 減速比 × 効率
出力回転数 = モーター回転数 ÷ 減速比

選定のポイント: 減速機の効率(一般的に85〜95%)を忘れずに計算に入れる。バックラッシュ(歯のすき間によるガタ)が精度に影響する用途では、バックラッシュレス減速機(ハーモニックドライブ等)を選ぶ。


6よくある選定ミスと失敗の構造

ミス1:静的トルクだけで選定する

止まった状態で必要なトルクだけを計算して選定すると、加速・減速時のトルクが不足してサーボアラームが頻発する。

対策: 加速時間を短く設定する場合は加速トルクが支配的になる。加速トルク ≧ 負荷トルク となるケースが多い。

ミス2:慣性比を無視する

サーボモーターは「モーター自身の慣性」と「負荷の慣性」の比(慣性比)が大きくなると制御が不安定になる。

一般的な目安:慣性比 ≦ 10(精密用途は ≦ 3)

慣性比が大きすぎる場合は、減速機でモーター側から見た慣性を小さくするか、出力の大きいモーターに変更する。

ミス3:デューティーサイクルを考慮しない

モーターの定格は「連続運転」の場合。間欠動作(動いては止まりを繰り返す)では、瞬間的に定格を超えるトルクを出せる場合がある(短時間定格)。設備の動作サイクルに合わせて確認する。


7社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この軸は位置決め精度0.1mm以下が必要なので、ステッピングでは脱調リスクがあります。サーボに変更します。コストは3万円増えますが、量産での不具合リスクを考えると必要です。」

外注先・機器メーカーに対して: 「必要トルクは計算上12N·mですが、余裕を見て定格20N·mのサーボを選びたいです。慣性比は負荷側が0.8kg·m²なので、減速機で調整お願いします。」


8まとめ:モーター選定の手順

  1. 用途を確認——位置決め必要か、速度範囲、負荷変動の大きさ
  2. 必要トルクを計算——負荷・加速・摩擦の合計 × 余裕率2〜3倍
  3. 種類を選ぶ——位置精度不要→誘導、低速軽負荷→ステッピング、高精度→サーボ
  4. 慣性比を確認——サーボの場合は必須

次のステップ:

👷

この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。