「とりあえずサーボで」は正しいか

モーター選定では、まず装置に必要な動きを決める。位置決め精度だけでなく、移動量、最高速度、加減速時間、負荷、繰返し周期を揃えてから、モーター・駆動回路・伝達機構を組み合わせて比較する。

ステッピングでも要求を満たせる軸はある。一方、負荷や加減速条件が能力を超えると脱調して指令と実際の位置がずれることがある。サーボも、許容トルクや機構条件を確認せずに選べば過負荷や追従不足を起こす。種類の名前だけでは採否を決められない。脱調原因の確認とサーボ仕様の説明を参照する。


3種類のモーターの特徴比較

ここでいうサーボは、主に位置・速度帰還を使う産業用サーボシステムを指す。下表は比較の入口であり、モーター単体の名称から価格・精度の順位を決める表ではない。

確認する項目 誘導モーター ステッピングモーター サーボシステム
制御構成 商用電源駆動、インバータ駆動など。対応する帰還・制御機器で位置制御する構成もある オープンループが基本的な構成の一つ。位置帰還を使う製品もある モーター、エンコーダ、アンプ、指令側を組み合わせる
速度とトルク 電源・制御方式・冷却条件による。低速から高速までの許容域を確認 使用速度のプルアウトトルクと起動・加減速条件を確認 連続運転域と短時間運転域を速度ごとに確認
位置決め 必要な帰還方式・停止精度・機構を含めて検討 脱調の有無と機構側の誤差を含めて検証 応答調整、機構剛性、伝達誤差を含めて検証
費用・調整 インバータ、帰還部品、配線も含めて比較 ドライバ、必要な位置確認、調整も含めて比較 アンプ、帰還配線、調整も含めて比較
保全 軸受、温度、配線などを取説に応じて確認 軸受、温度、配線などを取説に応じて確認 左記に加え、帰還系を含む構成に応じて確認

誘導モーターを一律に「位置制御不可」とはしない。例えば三菱電機のオプションカタログ L06049-J、9–10ページには、PLG付き誘導機と対応インバータ・オプションによる位置制御が示されている。これは構成例であり、すべての誘導機で可能という意味ではない。

また、αSTEPのように、ステッピングを基に位置帰還を使う製品もある。保全についても「ほぼ不要」と一括せず、寿命に影響する軸受・温度等の条件と採用機種の取説を確認する。同じ要求を満たす構成同士で、購入費、立上げ工数、保守部品まで比較したい。


用途別の選び方

誘導モーターを検討する場面

コンベア・ファン・ポンプなどの連続回転が候補になる。一定速か可変速かを決め、起動時の負荷、必要速度範囲、低速運転時の冷却や許容トルクを確認する。位置決めが必要なら、帰還機器と制御方式を含めた構成として比較する。

ステッピングモーターを検討する場面

小型搬送や位置調整などで、必要な速度・トルク・慣性を満たせるかを見る。「1000rpm以下ならよい」「保持トルクが必要トルクの2倍なら脱調しない」とは判断しない。停止中の保持トルクと、回転中に使用できるトルクは別である。

ステッピングの特性資料で、モーターとドライバの組合せに対応した速度―トルク曲線を読み、起動から減速までの運転点とメーカー推奨の余裕を確認する。位置確認が必要な用途では、その検出方法も選定条件に含める。

サーボを検討する場面

高速な位置決め、負荷変動への追従、多軸同期など、必要な応答を満たす制御系として検討する。帰還があることだけで、すべての速度で一定トルクが出るわけではない。許容慣性、連続・ピークトルク、機構剛性と調整条件を確認する。


必要トルクと出力の計算

計算する軸を最初に決める

モーター軸と減速機の出力軸では、回転速度もトルクも異なる。以下では最後にモーター軸へ揃える。力・トルクには向きがあるため、加速、定速、減速、停止保持を別々に計算する。

負荷軸でのトルク To = F × r
  F:回転方向に対して接線方向に働く力(N)
  r:その力の作用線までの垂直距離(m)

モーター軸の必要トルク
  Tm = TL,m + Tf,m + JΣ,m × αm
  TL,m:外部負荷によるトルクをモーター軸へ換算した値(N·m)
  Tf,m:別途計上する摩擦・損失トルク(N·m)
  JΣ,m:ローターを含む運動系のモーター軸換算慣性(kg·m²)
  αm:モーター軸の角加速度(rad/s²)
  一定加速度の区間では αm = (ω2 − ω1) / Δt
  ω = 2πn / 60(n:r/min、ω:rad/s)

これは剛体として扱う簡略モデルである。Fには機構に応じた駆動抵抗や重力成分を使い、質量に重力加速度を掛けた値をそのまま全用途の駆動力にはしない。既に負荷トルクへ含めた摩擦をTf,mへ再計上しない。効率で損失を見込む場合も、同じ損失を重ねて加えない。

減速機がある場合の軸換算は後述する。運転パターンと必要トルクの計算資料と採用機種の選定計算で、実際の機構に適したモデルを確認する。

慣性モーメントの計算

一様な中実円柱が中心軸まわりに回転:J = (1/2) × m × r²
  m:質量(kg)、r:半径(m)

直線運動質量の回転軸換算:J = m × (A / (2π))²
  A:基準にした回転軸が1回転するときの移動量(m/rev)

中空ローラーや偏心部品には、中実円柱の式をそのまま使わない。直動式のAは、ボールねじ軸を基準にすればリード、減速機を含むモーター軸を基準にすればモーター1回転あたりの移動量になる。どちらで計算したかを書き、減速換算を二重に行わない。ねじ、プーリー、継手、ギヤなどの回転部も加える。負荷慣性の計算資料では形状と軸の関係を確認できる。

出力は同じ運転点のトルクと速度から求める

機械出力 P = T × ω = 2πnT / 60(W)
  T:その軸・その運転点のトルク(N·m)
  n:同じ運転点の回転速度(r/min)

最大トルクと最高速度が同時に成立するとは限らない。カタログの別々の最大値を掛け合わせない。また、このPは軸の機械出力であり、損失を含む電源入力とは区別する。出力の計算と仕様値の説明も参照し、W数だけで異なる方式を置き換えない。

余裕率の前に、連続とピークを分ける

「必要トルクの2〜3倍の定格を選ぶ」という一律の倍率だけでは採用を決められない。加速トルクは運転パターンから計算し、余裕率の中へ曖昧に埋め込まない。メーカーの選定手順に従い、摩擦のばらつき、負荷変動、温度、見積り誤差など、何に余裕を持たせたかを記録する。

確認 比較する条件
定速・停止保持 その速度・環境・冷却条件で連続的に使用できるトルク
加速・減速 その速度のピークトルクと許容継続時間、繰返し条件
1サイクルの発熱 実効トルク、運転/停止時間、メーカーの熱的許容条件
ステッピング 各運転速度のプルアウトトルクに対する余裕と起動・加減速条件

ギヤ・減速機の組み合わせ

必要な回転速度とトルクを合わせるために減速機を検討する。モーターから負荷を駆動する向きの簡略換算は次のようになる。

減速比 i = nm / no
出力軸回転速度 no = nm / i
出力トルク To = Tm × i × η
負荷から必要モータートルクを求めるとき:Tm = To / (i × η)
  η:その運転条件での伝達効率(0 < η ≤ 1)

出力軸の負荷慣性をモーター軸へ換算:JL,m = JL,o / i²

トルクの効率換算と、回転速度の関係から求める慣性換算は別に扱う。慣性換算には損失を含めず、ギヤ自身や継手の慣性も指定された基準軸に揃えて加える。減速中の逆駆動・回生、動的な損失は、上の駆動側の効率式だけで判断しない。モーター軸トルクの換算例と各製品の計算方法を確認する。

効率は一律85〜95%と置かず、方式、型式、負荷、速度、温度、潤滑条件に合う値を使う。位置精度が必要なら、バックラッシだけでなく、ねじれ剛性や角度伝達誤差も確認する。バックラッシが小さい減速機でも、負荷時の変形までゼロにはならない。ハーモニック・ドライブ・システムズのFAQにも効率、角度伝達精度、ねじれ剛性の説明がある。


選定ミスを防ぐ確認

静的トルクだけで選定しない

停止中に荷重を支えられても、加速・減速時に必要なトルクを満たすとは限らない。速度とトルクの時間変化を作り、起動から停止までの運転点が許容域に入るか確認する。サーボでは過負荷保護や追従偏差、ステッピングでは脱調に関わる条件になる。

慣性比は無次元で表す

慣性比 R = JL,m / J0
  JL,m:モーター軸へ換算した負荷側の慣性の合計(kg·m²)
  J0:モーターのローター慣性(kg·m²)

両者の単位が消えるため、Rにkg·m²は付かない。例えば、負荷軸の慣性を0.8kg·m²、減速比を10、ローター慣性を0.002kg·m²と仮定し、ギヤや継手の慣性を省略した計算例では、JL,m = 0.8 / 10² = 0.008kg·m²、R = 0.008 / 0.002 = 4となる。これは換算の例で、採用可能という判定ではない。

許容値はモーター、アンプ、制御・調整条件、機構剛性で確認する。「一般に10以下、精密用途は3以下」を全製品共通の上限にしない。減速比を上げるとモーター側の必要回転速度も変わる。モーターを変える場合も、出力Wだけでなくローター慣性、応答、トルク、速度を再確認する。製品別の慣性確認を参照する。

デューティーサイクルと実効トルクを確認する

定格には連続定格や時間定格などがあり、すべてを連続運転仕様とみなさない。サーボの短時間運転域を使うときも、ピークトルクの継続時間と繰返し条件を守り、サイクル全体の発熱を確認する。

各区間のトルクを一定と近似した場合、実効トルクは次式で求める。

Trms = √{(T1²t1 + T2²t2 + … + Tk²tk) / (t1 + t2 + … + tk)}
  Tk:各区間のモーター軸トルク(N·m)
  tk:各区間の時間(s)

加速と減速でトルクの符号が変わっても、二乗して評価する。停止中に荷重を保持する軸では、その保持トルクをゼロにしない。実効トルクだけでなく、各速度の使用領域、停止保持時の発熱、回生処理も採用機器の条件で確認する。Motorizerの選定項目も、ピーク・実効トルク、慣性、速度、回生などを分けている。


社内で説明するときの言い方

以下は、条件と計算根拠を揃えて相談するための仮定の例である。記載金額は価格実績ではない。

上司・設計者に対して: 「要求する位置決め精度は0.1mm以下です。機構のバックラッシや変形、速度・負荷条件を揃えて、ステッピングとサーボを比較します。必要精度だけで脱調の有無は決まりません。差額を仮に3万円と置くなら、調整工数や位置確認の方法も含めて、実機の確認結果と見積りで採否を決めたいです。」

外注先・機器メーカーに対して: 「計算上の12N·mが、定速・ピーク・実効のどの値かを区分して運転パターンを提示します。定格30N·mなら数値の比は30 / 12 = 2.5ですが、それだけでは採用を決めません。負荷軸の0.8kg·m²は慣性モーメントです。減速比と追加回転部の慣性を使ってモーター軸へ換算し、ローター慣性との比、速度別トルク、熱・回生条件を確認したいです。」


まとめ:モーター選定の手順

  1. 要求を揃える——位置、速度、移動量、負荷、加減速時間、周期、環境を決める。
  2. 機構と基準軸を決める——力、トルク、慣性、速度、出力を同じ軸へ換算する。
  3. 運転パターンで候補を比較する——モーターと駆動回路の組合せごとに、連続・ピーク・実効トルク、慣性、回生を確認する。
  4. 採用根拠を残す——計算条件、メーカー資料の版、余裕の理由、価格と保全条件、実機試験の条件・結果を一組にする。

計算で不足が見つかったら、容量だけを上げず、加減速時間、減速比、機構の抵抗や剛性も見直す。次の設計へ渡すときは「このモーターを選んだ」だけでなく、どの条件で成立した選定かが分かるようにする。

次のステップ: