モーター選定の基礎|サーボ・ステッピング・誘導モーターの使い分けと仕様決定
この記事でわかること
サーボとステッピングの違いが分からない、トルクと出力の計算ができない、選定ミスで装置が動かない。用途別モーター選定と仕様計算の方法を整理します。
1「とりあえずサーボで」は正しいか
位置決めが必要な軸にはサーボモーター、というのが自動化設備の定番だ。しかし、コスト・制御の複雑さ・保全負荷を考えると、ステッピングモーターや誘導モーターで十分な用途にサーボを使うのは過剰投資になる。
反対に、低コスト優先でステッピングを選んだら高負荷時に脱調(ステップを飛ばす)してしまった、というトラブルも多い。
モーター選定は「用途に必要な性能を整理してから種類を選ぶ」のが正しい順序。
23種類のモーターの特徴比較
| 項目 | 誘導モーター(ACモーター) | ステッピングモーター | サーボモーター |
|---|---|---|---|
| 位置制御 | 不可(回転数制御のみ) | 可(オープンループ) | 可(クローズドループ) |
| 精度 | 低い | 中程度(脱調リスクあり) | 高い |
| 速度範囲 | 狭い(定格回転数付近) | 低速向き | 広い |
| トルク特性 | 高速ほど低下 | 低速で高トルク | 全域で安定 |
| コスト | 安い | 中程度 | 高い |
| 制御の複雑さ | 簡単(ON/OFF or インバータ) | 中程度 | 複雑(サーボアンプ必要) |
| 保全 | ほぼ不要 | ほぼ不要 | エンコーダ・ケーブル管理 |
3用途別の選び方
誘導モーター(ACモーター)を使う場面
- コンベア・ファン・ポンプなど「回し続けるだけ」の用途
- 位置決め不要、速度は大まかに合えばいい
- インバータと組み合わせると速度調整が可能
- コスト最優先で、止まる位置を気にしない
ステッピングモーターを使う場面
- 位置決めが必要だがエンコーダをつけたくない(コスト削減)
- 速度が遅く(1000rpm以下)、トルクが安定している
- ディスペンサー・小型搬送・カメラ位置調整など軽負荷用途
- 脱調しないよう、必要トルクの2倍以上の余裕を持って選定する
サーボモーターを使う場面
- 高速・高精度の位置決めが必要
- 負荷変動が大きく、脱調リスクを許容できない
- 多軸同期制御が必要
- コストより性能優先のとき
4必要トルクの計算
モーター選定の核心は「必要トルクがモーターの定格トルク内に収まるか」の確認。
基本式
必要トルク T(N·m)= 負荷トルク + 加速トルク + 摩擦トルク
負荷トルク TL = F × r
F:負荷に働く力(N)
r:モーター軸からの距離(m)または減速後の有効半径
加速トルク Ta = J × α
J:システム全体の慣性モーメント(kg·m²)
α:角加速度(rad/s²)= ω/t
慣性モーメントの計算
円柱(プーリー・ローラー):J = (1/2) × m × r²
m:質量(kg)、r:半径(m)
直線運動の換算:J = m × (リード/(2π))²
m:ワーク質量(kg)、リード:1回転で進む距離(m)
選定の余裕率
計算した必要トルクに対して、定格トルクの2〜3倍を目安に選ぶ。
理由:
- 計算には含まれていない摩擦・抵抗の存在
- 加速・減速時の瞬間的なトルク増大
- 経年劣化・温度変化による性能低下
5ギヤ・減速機の組み合わせ
モーター単体では回転数が高すぎる(2000〜3000rpm)場合、減速機を組み合わせてトルクを増やし回転数を下げる。
減速比 i = モーター回転数 ÷ 出力軸回転数
出力トルク = モータートルク × 減速比 × 効率
出力回転数 = モーター回転数 ÷ 減速比
選定のポイント: 減速機の効率(一般的に85〜95%)を忘れずに計算に入れる。バックラッシュ(歯のすき間によるガタ)が精度に影響する用途では、バックラッシュレス減速機(ハーモニックドライブ等)を選ぶ。
6よくある選定ミスと失敗の構造
ミス1:静的トルクだけで選定する
止まった状態で必要なトルクだけを計算して選定すると、加速・減速時のトルクが不足してサーボアラームが頻発する。
対策: 加速時間を短く設定する場合は加速トルクが支配的になる。加速トルク ≧ 負荷トルク となるケースが多い。
ミス2:慣性比を無視する
サーボモーターは「モーター自身の慣性」と「負荷の慣性」の比(慣性比)が大きくなると制御が不安定になる。
一般的な目安:慣性比 ≦ 10(精密用途は ≦ 3)
慣性比が大きすぎる場合は、減速機でモーター側から見た慣性を小さくするか、出力の大きいモーターに変更する。
ミス3:デューティーサイクルを考慮しない
モーターの定格は「連続運転」の場合。間欠動作(動いては止まりを繰り返す)では、瞬間的に定格を超えるトルクを出せる場合がある(短時間定格)。設備の動作サイクルに合わせて確認する。
7社内で説明するときの言い方
上司・設計者に対して: 「この軸は位置決め精度0.1mm以下が必要なので、ステッピングでは脱調リスクがあります。サーボに変更します。コストは3万円増えますが、量産での不具合リスクを考えると必要です。」
外注先・機器メーカーに対して: 「必要トルクは計算上12N·mですが、余裕を見て定格20N·mのサーボを選びたいです。慣性比は負荷側が0.8kg·m²なので、減速機で調整お願いします。」
8まとめ:モーター選定の手順
- 用途を確認——位置決め必要か、速度範囲、負荷変動の大きさ
- 必要トルクを計算——負荷・加速・摩擦の合計 × 余裕率2〜3倍
- 種類を選ぶ——位置精度不要→誘導、低速軽負荷→ステッピング、高精度→サーボ
- 慣性比を確認——サーボの場合は必須
次のステップ:
- 空気圧回路設計の基礎 — 電動と空圧の使い分けへ
- ボールねじの選定と設計 — 直線運動軸の設計へ
- 設備構造設計の基礎 — 駆動系全体の設計へ
この記事の執筆者
seigitech 編集部
生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。