リニアガイドは「とりあえず大きめを選べば安心」では済まない。必要以上の大型化はコストや可動部の質量を増やす場合がある。ただし、剛性はガイドの大きさだけでなく、配置・予圧・取付部やテーブル全体で評価する。一方、過小選定は寿命不足・精度劣化の原因になり、定期交換コストが膨らむ。選定の計算根拠を残し、取付精度・剛性・防塵・潤滑と実機での確認を合わせて設計を成立させる。本稿ではメーカーカタログの計算手順に沿って、実務で使える選定フローを体系的に整理する。


1. リニアガイドの基本構造と種類

リニアガイドはレール(軌道レール)とブロック(スライダ)の組み合わせで構成される。転動体の形状によってボール循環型とローラー型に大別される。

ボール循環型はボールがブロック内を循環することで荷重を受ける。転がり接触によって直線運動を案内する形式で、許容速度や荷重は採用形番の仕様で確認する。THKのLMガイドシリーズが代表例で、THK LMガイド総合カタログに仕様・寸法が網羅されている。

ローラー型はころ(ローラー)を転動体に使うため、接触面積が大きく高荷重・高剛性が求められる用途に向く。工作機械のテーブル送りやプレス機の案内など、重切削・重荷重の場面で採用される。

精度等級はメーカーによって呼称が異なるが、THKの等級には、高い順にUP(超超精密級)・SP(超精密級)・P(精密級)・H(上級)・並級(記号なし)がある。選べる等級と許容値は形番・レール長などで確認する。評価対象は走り平行度、高さ・幅の寸法許容差やペア相互差などであり、ガイドの等級だけで装置の繰り返し位置決め精度は決まらない。要求する走り精度・位置決め精度を分け、取付構造や駆動・測定系も含めて選ぶ。なお、ラジアルすきま(予圧)は精度等級とは別の軸で、形番の中でも別の記号で指定する。「精度等級を上げる」ことと「すきまを詰める(予圧を掛ける)」ことは違う操作なので、混ぜて比較しない。どちらも記号と許容値はメーカーのカタログが原本で、THK は精度規格とラジアルすきま規格を形番ごとに公開している。

循環ボールガイドの構成例(模式図)
レール(軌道レール)
ブロック(スライダ)
軌道レール:固定側
ボール:循環転動体
ブロック:移動側
ボールがブロック内を循環することで荷重を受け、低摩擦の直線運動を実現する

主要メーカーの技術資料はNSK リニアガイド技術資料でも参照できる。型式体系・寸法公差・精度グレードの定義は、採用製品に対応するカタログの版と数値を記録して照合する。


2. 負荷計算の手順——ラジアル・横方向・モーメント荷重

リニアガイドの選定で最初に行うのが荷重の分解だ。本稿の水平取付例でLMブロックが受けるのは、ラジアル(下向き)・逆ラジアル(浮き上がり)・横方向の3方向と、モーメント(ピッチ・ヨー・ロール)である。これを正確に分解しないと、各ブロックの実荷重を正しく評価できない。

⚠️ 推力をそのままラジアル荷重に足さないこと。 移動方向にかかる力(推力)は摩擦と加速に必要な力で、モータ・駆動系の選定に使う。ここを混ぜるとサイズを過大に見積もる。

ただし「入れない」と「効かない」は違う。 推力の作用点が重心とずれていれば、その差がモーメントになってブロック荷重に効く。加減速の慣性力も同じで、重心の高さと推力位置の高さの差が効いてくる。分けて扱う——推力そのものは足さない/推力と慣性力が作るモーメントは入れる。THK も荷重計算の条件に「移動物の重心位置、推力位置、加速度」を挙げている(LMガイドの選定)。

以下は、水平に取り付けた2本のレールに同じブロックを2個ずつ配置する説明用の概算モデルだ。テーブルは剛体、4支持点の鉛直剛性は等しく、各ブロックが直接受ける局所モーメントは無視する。配置中心を原点とし、xはレールに直交する横方向、yは進行方向、下向きのブロック負荷を正とする。

搭載重量Wの作用点を(ex, ey)とし、以下はex・eyとも正の例とする。偏心によるモーメントの大きさは次のとおり。Mxは進行方向偏心、Myは横方向偏心に対応する表記で、右手系の符号付きモーメントベクトルを表す式ではない。

Mx = W × ey    My = W × ex

L1=進行方向のブロック間距離/L2=レール間距離であり、MxはL1、MyはL2を使って分配する。重量と2つの偏心を重ね合わせると、ブロックごとの鉛直負荷は次の形になる。

Pi = W/4 + sy × Mx/(2×L1) + sx × My/(2×L2)

sx:xが正側のブロックは+1、負側は−1
sy:yが正側のブロックは+1、負側は−1

具体例(仮定値): W=500N、ey=100mm、ex=50mm、L1=100mm、L2=400mmとする。モーメントをN·mで計算する場合、分配式の距離もmにそろえる。

Mx = 500 × 0.1 = 50 N·m    My = 500 × 0.05 = 25 N·m
W/4 = 125 N
Mx/(2×L1) = 50/(2×0.1) = 250 N
My/(2×L2) = 25/(2×0.4) = 31.25 N
4点支持の概算例:上から見た配置
y+(進行方向)↑ / x+(横方向)→ ※縮尺は模式的
重量W=500Nの作用点:G(x=+50mm、y=+100mm)
Gは前側ブロック列(y=+50mm)より前方にある
左レール:x=−200mm
右レール:x=+200mm
②(x−、y+)
125+250−31.25=343.75N
①(x+、y+)
125+250+31.25=406.25N
前後のブロック列間:L1=100mm(y=±50mm)
左右レール間:L2=400mm / 配置中心O=(0,0)
④(x−、y−)
125−250−31.25=−156.25N
③(x+、y−)
125−250+31.25=−93.75N
正:ラジアル負荷 / 負:逆ラジアル負荷
4個の符号付き合計=500N(負の値を0へ切り捨てない)

最大の鉛直負荷は①の406.25Nで、全ブロックが同じ値になるわけではない。負の値はブロックが浮き上がろうとする逆ラジアル側の負荷を示す。逆方向の負荷能力、締結部・ベースの強度も確認する。この概算は、各ブロック・取付部の剛性差や局所モーメントまで扱う詳細モデルの代わりにはならない。

L1/L2の対応は自分の配置で検算する。 正方形配置(L1=L2)では入れ替えに気づきにくい。上の例で距離を取り違えると125+62.5+125=312.5Nとなり、最大値を過小評価する。exやeyが負側へ移れば、それに対応する増減の向きも反転する。

型式・取付姿勢・外力条件に合う式はTHKの負荷荷重計算で確認する。同資料にも配置とブロック番号に対応した正負があるため、図の番号だけを本稿へ移植しない。

外力は方向・作用点・運転区間をそろえて各ブロックへ分配する。説明用に重量500Nの物体を進行方向へ加速度a=5m/s²で動かすなら、慣性力の大きさはFi=(500÷9.8)×5≒255Nとなる。これは重力500Nへそのまま足す鉛直荷重ではない。加速と減速では向きが変わり、重心と推力位置の高さ・横位置のずれによって、ラジアルや横方向の分配荷重が変わる。切削・把持などの外力も、該当する方向の分力とモーメントに分けて評価する。


3. 等価荷重と動定格荷重——サイズ選定の根拠を作る

各ブロックへの分配荷重が算出できたら、次は等価荷重を求める。等価荷重とは、ラジアル方向と横方向の荷重が同時にかかる場合に、単一方向の等価的な荷重へ換算した値だ。

THKの等価荷重では、SHS形などの4方向等荷重形について、次の形で扱う。ここではPRを逆ラジアル側も含む符号付き鉛直分力、PTを横方向分力と表す。

PE = |PR| + |PT|

PR:ラジアル方向(逆ラジアルを含む)の分力
PT:横方向の分力

前章で外部モーメントを4ブロックの反力へ分配した分は、同じモーメントの換算荷重をもう一度加えない。一方、単一ブロック・密着配置などでブロックが直接受ける局所モーメントは、型式・配置に合うメーカーのモーメント等価係数で評価する。THKの1軸使用の説明ではP=K×Mの換算を用いるが、Kの方向・単位・1個使用か2個密着かを照合する。

⚠️ 型式によって扱いが変わる。 4方向等荷重形でない型式や、モーメント換算の係数はメーカー・形番ごとに違うので、 採用する形番のカタログ(等価荷重の計算例)で確認すること。

ここからは2つの確認を分けて行う。カタログには定格荷重が2種類載っていて、それぞれ見ている壊れ方が違うからだ。

確認 使う定格 見ているもの 比べる荷重
静的安全係数 基本静定格荷重 C0 停止中・運動中を問わず、ピーク荷重による過大な永久変形を避けられるか 同じ時点に作用する複合荷重を換算した最大側の等価荷重。方向別定格・局所モーメントも確認
寿命 基本動定格荷重 C 転がり疲れによるフレーキングまでの定格走行距離 運転履歴を反映した計算荷重。一定荷重の例ではPeq(次章)

① 静的安全係数はC0で見る。 4方向等荷重形で、硬さ・温度・接触に関する係数をすべて1と仮定した簡略式は次のとおり。

fS = C0 ÷ PEmax
PEmax:各時点の同時負荷を換算した等価荷重の最大値

方向ごとにC0が異なる形番では、換算方向に合う定格を選ぶ。同時に作用するラジアル・横荷重を別々に判定するだけでは足りない。例えば、説明用にC0=1000N、PR=300N、PT=300N、換算係数X=Y=1と置けば、PE=600N、比は1000÷600≒1.67となる。各成分だけの比3.33で済ませない。判定に使う下限は使用条件・形番に対応するメーカー指定へ照合する。

THKの静的安全係数では、必要に応じてC0へ硬さ係数fH・温度係数fT・接触係数fCを掛ける。実機ではこれらを無条件に1とせず、急停止・衝撃を含む最大荷重、残る局所モーメントと許容モーメント、取付部の強度を確認する。静的確認は高速運動中のピークも対象になる。

② 動定格 C は、比で合否を決めずに寿命へつなぐ。 「C ÷ Peq が2以上なら安心」のような比の目安だけで決めない。 同じ比でも、1日に走る距離が違えば必要なサイズは変わるからだ。C は次章の寿命計算に入れ、目標寿命を超えるかで判断する。振動・衝撃の影響は、寿命計算の側では荷重係数 fW として入れる(THK 定格寿命)。

寿命比較の仮定例(2章の406.25Nとは別条件): 1ブロックのPeq=400Nを全走行中に一定とし、ボール型・50km基準の動定格C=1,200NとC=800Nを比べる。実在形番を指定した値ではなく、使用条件の係数はすべて1と仮定する。比だけ見ると 3.0 と 2.0 でどちらも通りそうに見えるが、次章の寿命計算に入れると 1,350 km と 400 km になり、目標 547.5 km(次章の例)に対して 800 N の候補は足りない。 比で決めていたら見落とすところだ。

THK CAD・選定ツールでは型番ごとの動定格荷重・静定格荷重・寸法を一覧で比較できる。選定候補を複数出して、静的安全係数と寿命の両方を確認し、要求精度・取付・保全条件も含めて最終決定する。


4. 寿命計算——L10寿命の計算と目標寿命の設定

静的安全係数を確認したら、次にL10寿命(定格寿命)を計算する。L10寿命は、同一製品群を同条件で運動させたとき、その90%が転がり疲れによる最初のフレーキングを生じずに到達する総走行距離を表す。個別製品の無故障期間や交換周期を保証する値ではない。

ここではボール型で、定格寿命50kmに対応するC(C50)を用いる。条件係数を1とする基本式は次のとおりだ。

L10 =(C ÷ Peq)^3 × 50 km

基準走行距離50×10⁶mm=50km。THKのローラー型は、100km基準のCを使う10/3乗の式になる。同じ「C」という記号でも、メーカー・形番・転動体・定義距離を照合する。C50とC100をそのまま同じ式へ混在させない。

前章の仮定例: C=1,200N、一定のPeq=400N、各条件係数1の場合:

L10 =(1,200 ÷ 400)^3 × 50 = 3^3 × 50 = 27 × 50 = 1,350 km

この1350kmが目標寿命(例:5年間の走行距離)を上回っているかを確認する。走行距離への換算は次の式を使う。

1日の走行距離[km] = ストローク[m] × 往復回数/日 × 2 × 10^-3

例えばストローク 300mm、往復 500回/日 の設備では:

0.3 × 500 × 2 × 10^-3 = 0.3 km/日

5年を1,825稼働日と仮定すれば、目標走行距離は0.3×1,825=547.5kmとなり、基本式の1,350kmはこれを上回る。休日などを含む実際の稼働暦・運転パターンは別途設定する。この大小比較だけで実機の5年間の無故障を保証しない。

THKの使用条件を考慮した式では、α=fH×fT×fC÷fWとし、ボール型ならL10m=(α×C÷Peq)³×50kmとする。αはC/Peqの比に掛けてから3乗する。fHは硬さ、fTは温度、fCは密着使用などによる不均一な荷重分布、fWは振動・衝撃等の影響を扱う。fCを汚染や潤滑不足の万能補正に使わず、防塵・潤滑・取付条件を別に成立させる。

荷重が変動する実機では、各区間の負荷と走行距離からメーカーの平均荷重法で寿命用の計算荷重を求める。上の400N一定の仮定と、実機の変動荷重評価を混ぜない。予圧による内部荷重の扱いも採用形番の計算法に従う。また、THKはストロークがブロック長さの2倍以下では通常の寿命式が適用されない可能性を示している。小ストロークや特殊環境ではメーカーへ適用を確認する。保全計画立案には予知保全の基礎も参照してほしい。


5. 精度等級と取り付け精度——要求精度を満たす組み付け

いくら高精度なリニアガイドを選んでも、取り付け精度が不十分では設計精度は出ない。ここが選定計算と同等か、それ以上に重要な実務ポイントだ。

取り付け精度で特に管理すべき項目は以下の3点だ。

① レール取付面の平面度・直線度 取付面の誤差や剛性不足は走り精度と荷重分布に影響する。製品の精度等級だけから取付面の許容値を決めず、形番・レール長・予圧・軸間距離と要求する走り精度に合わせて、平面度・直線度・左右平行度・上下レベル差の測定対象と基準を図面で指定する。例えばTHK SHS-C形の資料は、精度規格と取付誤差の参考値を別項目にしている。

② 2本レール間の平行度 レール2本の平行度誤差はブロック間に予圧変動を生じさせ、摩擦ムラ・偏摩耗の原因になる。取付後にダイヤルゲージでレール基準側面の平行度を確認し、採用形番・予圧・配置に対応する許容値に収まることを検証する。

③ ボルト締め付けトルク管理 THKの取付手順など、基準側・従動側を区別した採用製品の手順で組み付ける。バリ・ごみ・穴ずれを確認し、取付ボルトの種類や相手材に対応する指定トルクをトルクレンチで管理する。取付後は全ストロークで動きと要求精度を確認し、メーカーの精度測定方法に合う基準・測定位置を記録する。

直動案内の精度等級と取り付け公差は、各メーカーが自社の規格として公開している(THK・NSK・HIWIN などがカタログに等級表と取付面の公差指示を載せている)。呼称も許容値もメーカー間で完全には一致しないので、社内標準を作るときは採用するメーカーのカタログを根拠にし、どのメーカーの等級で書いたのかを明記すること。

⚠️ JIS B 1192 は「ボールねじ」の規格(第3部の書誌例。部ごとに対象と版を確認する)であり、直動案内の根拠にはならない。

設備の構造剛性全体の考え方については設備構造設計の基礎で詳しく解説している。


6. グリースアップと保全計画

リニアガイドの寿命を計算どおりに引き出すには、適切な潤滑管理が前提条件だ。潤滑不足では転動部の摩耗や早期損傷につながるため、計算寿命の比較とは別に潤滑状態を管理する。

グリースの種類は採用製品・温度・速度・荷重・環境に適合する銘柄を指定する。低発塵用の例にはTHKのAFFやNSKのLG2・LGUがあるが、別メーカーの製品であり、相互の適合や混合を意味しない。食品機械・クリーンルーム・真空では要求が異なるため、基油名だけでなく食品への偶発接触・発塵・放出ガスなど用途に必要な性能を確認する。異なる潤滑剤は、増ちょう剤の種類が同じでも安易に混合しない。

補給間隔と給脂量は採用形番の指定と実機の条件で設定する。THKの一般案内には走行距離100km(3〜6か月)の目安があるが、最終的な量・間隔は実機で決めるとしている。全機種共通の周期にせず、姿勢・ストローク・汚染・温度・経時劣化を考慮する。給脂器の吐出量と各給脂箇所を確認し、指定の量・手順で補給してから、メーカー手順に沿う安全な慣らしでなじませる。外へ滲んだ量だけで適量や内部への行き渡りを判断しない。

保全計画への組み込み方は、設備の日常点検・定期点検の項目に「リニアガイド走行チェック(異音・ガタ確認)」「グリースアップ」を明示的に追加する。走行距離カウンターがない設備では運転時間をベースに換算距離を推定する。サイクルタイム・ストロークから1時間あたりの走行距離を算出しておくと、運転時間記録から補給タイミングを管理できる。

標準作業書への記載方法については作業標準書の作成を参考にしてほしい。点検項目・補給量・周期を明文化することで、担当者が変わっても保全品質を維持できる。


まとめ

リニアガイドの選定は「①荷重計算 → ②等価荷重・静的安全係数(C0)の確認 → ③L10寿命計算 → ④精度等級と取り付け管理 → ⑤保全計画策定」の順で進める。各ステップで計算根拠を残しておくと、設計変更や不具合調査のときに選定の妥当性を素早く検証できる。荷重・配置・運転条件と資料の形番・版をそろえ、補正係数で扱える条件と、防塵・潤滑・取付・落下防止など構造や運用で対処する条件を区別する。計算書に図面、取付後の測定、保全条件、未確認事項を添え、設備の設計レビューへつなぐ。