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潤滑と給脂設計の基礎|グリース・オイルの選定と給脂周期の決め方

最終更新日 2026-06-03読了時間 約5

この記事でわかること

ベアリングがよく壊れる、適切な潤滑剤が分からない、給脂周期が決まっていない。設備設計で必要な潤滑剤の選定と給脂計画の立て方を整理します。

1「とりあえずグリースを塗る」では設備が壊れる

ベアリング・ギヤ・チェーンの潤滑が不適切だと、摩耗・発熱・焼き付きが起きる。「グリースを入れておけば大丈夫」という認識で過剰給脂をすると、温度上昇でシール劣化・グリースの酸化劣化を加速させる逆効果になる。

適切な潤滑設計は「何に・何を・どのくらいの量で・どの頻度で」を設計段階で決めることから始まる。


2潤滑の目的と効果

潤滑の主な効果:
1. 摩擦低減(動力損失・発熱を減らす)
2. 摩耗防止(金属面同士の直接接触を防ぐ)
3. 冷却(摩擦熱を除去する)
4. 防錆(金属面を油膜で覆う)
5. 異物排出(循環潤滑の場合)

3グリースとオイルの使い分け

項目 グリース オイル(液体潤滑)
封入・保持 しやすい(飛散しにくい) シールが必要
冷却効果 小さい 大きい(循環式は特に)
交換・補給 定期給脂が必要 オイル交換・補充
高速回転 限界がある(発熱) 高速向き
高荷重 極圧グリースで対応 極圧油で対応
初期費用 安い 設備(タンク・ポンプ)が必要

選定の基本:

  • 密封が必要・取り扱いが簡単 → グリース
  • 高速・発熱が問題・冷却が必要 → オイル循環
  • ベアリング・チェーン → グリースが標準
  • ギヤボックス(高負荷・高速) → ギヤオイル

4グリースの種類と選定

基油の種類

基油 耐熱性 用途
鉱油(一般品) 〜120℃ 一般設備・標準用途
合成油(PAO) 〜150℃ 高温・低温環境・長寿命
フッ素油 〜200℃以上 高温・強酸化環境・食品機械
シリコン油 〜180℃ 電気絶縁・ゴム接触部

増ちょう剤の種類

増ちょう剤 耐水性 耐熱性 特徴
リチウム 良好 〜120℃ 最も汎用的・コスパ良し
リチウムコンプレックス 優良 〜150℃ 高温用途
ウレア 良好 〜180℃ 高温・長寿命
カルシウム 優良 〜80℃ 耐水性重視・低速
PTFE(フッ素) 優良 〜200℃ 食品・クリーンルーム

稠度(硬さ)の選定

グリースの硬さはNLGI番号(0〜6)で表す。数字が大きいほど硬い。

NLGI番号 硬さ 用途
0〜1 半流動体 自動給脂システム・ギヤ
2 標準的な硬さ ベアリング一般(最も多い)
3 やや硬い 垂直軸・飛散防止が必要

5給脂量と給脂周期の計算

ベアリングへの給脂量

過剰給脂は温度上昇の原因になるため、適量を守ることが重要。

適正グリース量 G(cm³)= 0.005 × D × B
 D:ベアリング外径(mm)
 B:ベアリング幅(mm)

例:外径80mm・幅20mm のベアリング
G = 0.005 × 80 × 20 = 8 cm³(約8g)

初期充填は空間容積の1/3〜1/2が基本。満杯まで入れるのはNG。

給脂周期の計算

軸受メーカー(NSK・SKF等)のカタログに給脂周期の計算式がある。簡易的には以下の目安を使う。

給脂周期(h)= K × (d^0.5) / n
 K:係数(一般ベアリング≒500、食品機械・清潔環境≒700)
 d:ベアリング内径(mm)
 n:回転数(rpm)

例:内径20mm、500rpm の場合
給脂周期 = 500 × (20^0.5) / 500 = 500 × 4.47 / 500 ≒ 4.5時間

→ 実際には安全率を掛けて3〜4時間ごとの給脂が目安

高温・汚染環境では周期を短くする(係数Kを下げる)。


6自動給脂システムの設計

手動給脂の管理が難しい場合や、アクセスが困難な場所は自動給脂システムを検討する。

種類

種類 特徴 用途
単点式自動給脂器 1箇所に設置・電動またはバネ式 単一のベアリング・チェーン
集中給脂システム 1ポンプから複数箇所に配管 多点給脂が必要な大型設備
セントラル潤滑 インターバルタイマーで周期制御 量産ライン・大型機械

設計のポイント:

  • 配管径は粘度・距離・吐出量に合わせて選定
  • 低温環境では低粘度グリースまたはヒーターで流動性を確保
  • 吐出量の確認(定期的に給脂量をチェック)

7よくある失敗

失敗1:過剰給脂

「多く入れれば安心」と給脂しすぎる。グリースが詰まり、ベアリング内部でかき回されて発熱・劣化が加速する。

目安: ベアリングが正常なら給脂後数分は温度が上がる(余剰グリースが出るため)。その後温度が下がれば正常。

失敗2:異種グリースの混用

異なるグリースを混ぜると化学反応で液化(変質)する組み合わせがある。特にリチウム系とカルシウム系の混用は危険。

対策: グリース種類を統一する。変更する場合は古いグリースを完全に排出してから新しいグリースを充填する。

失敗3:高温部に汎用グリースを使う

80℃以上の環境に標準的なリチウムグリースを使うと、急速に酸化・劣化して保護機能が失われる。

対策: 高温部にはウレア系・フッ素系など耐熱グリースを使う。設計段階で使用温度を確認する。


8社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「このベアリングは80℃以上になる場所なので、汎用リチウムグリースでは耐熱不足です。ウレアグリースに変更し、給脂周期を4時間から2時間に短縮します。」

現場・保全担当に対して: 「給脂量は1回8gが目安です。注射器で量って入れてください。多すぎるとかえって壊れやすくなります。」


9まとめ:潤滑設計の3ポイント

  1. 用途と環境に合ったグリースを選ぶ——温度・水・速度が選定基準
  2. 給脂量は適正量を守る——多すぎると逆効果
  3. 給脂周期を計算して計画化する——場当たり給脂をやめる

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。