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樹脂部品設計の基礎|射出成形の制約と設計ルール・材料選定

最終更新日 2026-06-03読了時間 約5

この記事でわかること

樹脂部品でヒケが出る、抜き勾配を忘れて金型が壊れる、どの樹脂を選べばいいか分からない。射出成形の設計ルールと代表的な樹脂材料の選定基準を整理します。

1樹脂部品の設計は「成形の制約」から考える

機械設計者が樹脂部品を設計するとき、金属部品と同じ感覚でCAD形状を作ると「抜き勾配がない」「肉厚が均一でない」「アンダーカットが入っている」と外注先から設計変更を求められる。

樹脂部品の設計は、射出成形プロセスの制約を理解した上で形状を決める必要がある。


2射出成形の基本プロセス

① 溶融樹脂を金型に射出する
② 金型内で樹脂が冷却・固化する
③ 金型を開いて部品を取り出す(突き出しピン)
④ ランナー・スプルーを切り取る

この「取り出す(型開き)」工程が形状制約の大半を生む。


3設計の基本ルール

抜き勾配(テーパー)

型から部品を抜き出すために、側面に勾配(テーパー)をつける必要がある。

推奨抜き勾配:
 外壁・一般面:1°以上
 リブ・ボス内側:0.5°以上
 シボ(表面模様)あり:シボ深さ × 1.5°以上追加

例:シボ深さ0.08mm → 追加勾配0.12°以上

勾配なし(0°)の設計は型から抜けなくなる、または引っかき傷が生じる。

肉厚の均一化

部品の肉厚が均一でないと、肉の厚い部分が遅く冷えて「ヒケ(凹み)」が生じる。

推奨肉厚範囲:
 汎用樹脂(PP・ABS):1.5〜3.5mm
 エンプラ(PA・POM):1.5〜4.0mm
 スーパーエンプラ(PEEK・PPS):1.0〜3.0mm

ヒケが出やすい場所:
 肉厚が急変する箇所・リブとの接続部・ボスの根元

ヒケ対策: リブやボスの根元の肉厚は、基準肉厚の60〜70%以下にする。

NG:リブ肉厚 = 基準肉厚(ヒケが出る)
OK:リブ肉厚 ≦ 基準肉厚 × 0.6〜0.7

アンダーカット

型の開閉方向に対して引っかかる形状(アンダーカット)は原則NG。どうしても必要な場合はスライドコア(サイドアクション)が必要になり、金型コストが大幅に増加する。

よくあるアンダーカット:

  • 横穴(型開き方向と直交する穴)
  • フック形状
  • ねじ形状(通常はアンダーカット。特殊対応が必要)

対策: 横穴は分割ラインで表裏から抜けるように設計変更する。

リブ・ボスの設計

リブ(補強)とボス(ねじボス・ピン受け)を正しく設計しないとヒケ・白化が起きる。

リブの設計:
 高さ:基準肉厚の3倍以下
 肉厚:基準肉厚の50〜70%
 根元R:0.5mm以上

ボスの設計:
 外径:ねじ外径の2〜2.5倍
 内径:ねじ外径の0.8〜0.85倍(セルフタッピング用)
 高さ:外径の2倍以下
 根元R:0.5mm以上

4代表的な樹脂材料の選定

汎用樹脂

材料 特徴 用途
PP(ポリプロピレン) 軽量・耐薬品・ヒンジ強い カバー・容器・クリップ
ABS 剛性・寸法精度・塗装しやすい 外観部品・ハウジング
PE(ポリエチレン) 柔軟・耐薬品・摩擦低い タンク・配管・摺動部
PVC(塩ビ) 耐薬品・電気絶縁 配管・ケーブル被覆

エンジニアリングプラスチック(エンプラ)

材料 特徴 用途
PA(ナイロン) 強度・耐摩耗・吸水注意 ギヤ・軸受け・コネクター
POM(ポリアセタール) 寸法精度・摩擦低い・疲労強度 ギヤ・スライダー・精密部品
PC(ポリカーボネート) 透明・高衝撃強度・耐熱 カバー・安全窓・コネクター
PBT 電気絶縁・耐薬品・耐熱 コネクター・センサーハウジング

スーパーエンプラ(高耐熱・高強度)

材料 耐熱温度 特徴 用途
PPS 220℃ 耐薬品・難燃 電装部品・ポンプ部品
PEEK 260℃ 最高水準の機械特性 航空・医療・半導体
PI(ポリイミド) 300℃超 最高耐熱 高温部品

選定の目安:

  • 外観・コスト重視 → PP・ABS
  • 摺動・精度部品 → POM・PA
  • 透明・衝撃 → PC
  • 高温・耐薬品 → PPS・PEEK

5ゲート位置と影響

ゲートは溶融樹脂が金型に流入する入口。位置によって外観・強度・ウェルドライン(合流部の強度低下)に影響する。

ウェルドラインとは: 2方向から流れてきた樹脂が合流する部分。ここは強度が低く、外観にも線が出る。

ゲート位置の設計ポイント:

  • ウェルドラインが強度が必要な部位・外観面に来ないようにゲートを配置する
  • 薄肉部・複雑形状は複数ゲートを検討する(ただし金型コスト増)

6よくある失敗

失敗1:金属部品の設計をそのまま樹脂に転用

直角コーナー・均一でない肉厚・アンダーカット——金属では問題ない形状が樹脂では成形不良になる。

対策: 材料が樹脂と決まったら設計を樹脂用に見直す。特にコーナーRと肉厚の均一化を優先する。

失敗2:吸水による寸法変化を無視

PA(ナイロン)は吸水すると寸法が変化する(吸水率〜3%)。精度が必要な部品でPAを選ぶと、湿度環境で寸法が変動して不良になる。

対策: 精度が必要な部品はPOM・PBTなど低吸水材料を選ぶ。PAを使う場合は調湿(標準状態)での寸法で設計する。

失敗3:後加工を考慮しない

タップ加工・圧入・塗装を後工程で行う場合、成形後の残留応力・ウェルドラインの位置が割れの原因になる。

対策: 圧入部位はウェルドラインを避ける。必要に応じてアニール(熱処理)で残留応力を除去する。


7社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この形状は横穴があってアンダーカットになっています。スライドコアが必要で金型費が50万円増えます。形状を変更してスライドコアなしにできないか検討します。」

外注先・金型メーカーに対して: 「肉厚基準を2.0mmで設計しています。リブは1.2mm以下でお願いします。ゲート位置はこの面の裏側でウェルドラインが正面に出ないようにしてください。」


8まとめ:樹脂部品設計の3チェックポイント

  1. 抜き勾配 1°以上——なければ型から抜けない
  2. 肉厚均一・リブは基準の60%以下——ヒケ防止
  3. アンダーカットを避ける——スライドコアは金型費大幅増

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。