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切削加工の設計ルール|加工しやすい形状の作り方と外注先が困る図面の特徴

最終更新日 2026-06-03読了時間 約6

この記事でわかること

図面通りに作れないと言われる、加工費が高くなりすぎる、納期が長い。切削加工で加工しやすい形状の設計ルールと、外注先が困る形状パターンを整理します。

1「図面通りに作れません」と言われたことはないか

外注先の機械加工業者から「この形状、加工できません」「すごく高くなりますよ」と言われた経験がある設計者は多い。設計上は問題なくても、切削加工の制約を知らないまま形状を決めると加工困難・コスト高・納期遅れにつながる。

この記事では、旋盤・フライス・マシニングセンターで加工する部品の設計ルールと、よくある「加工困難形状」のパターンを整理する。


2切削加工の基本制約を理解する

工具がアクセスできる形状しか作れない

切削加工は「工具が届く場所しか削れない」という絶対的な制約がある。凹んだ内側・工具が干渉する深い溝・狭すぎる隙間は加工できないか、コストが跳ね上がる。

設計の原則: 工具の向きとサイズをイメージしながら形状を決める。

旋盤(旋削)

丸物部品(シャフト・ブッシュ・フランジ)を主に加工する。チャックで部品を掴んで回転させ、バイトで削る。

  • 断面が円形のもの → 旋盤が得意
  • 外径・穴径・端面・テーパー → 加工しやすい
  • キー溝・穴外れ → 旋盤単体では不可(フライスとの組み合わせ)

フライス・マシニングセンター

平面・溝・穴などを加工する。エンドミルやドリルをスピンドルに取り付けて回転させ、テーブル(部品)を移動させながら削る。

  • 平面・直線の輪郭 → 得意
  • 深い袋穴・細い溝 → 工具の剛性が課題になる
  • アンダーカット(工具が干渉する形状)→ 原則不可

3設計ルール:加工しやすい形状にする

穴の設計

NG設計 OK設計 理由
深さ/直径 > 5 深さ/直径 ≦ 5 深穴はドリルが振れて精度低下・折損リスク
底面が平ら 底面をドリル先端形状(120°)で可 平底には専用エンドミルが必要でコスト増
斜面への穴あけ 穴位置を平面上に変更 斜面へのドリル進入で折損・位置ずれ
穴エッジがギリギリ 穴エッジから肉厚1.5D以上確保 肉厚不足で工具圧力により変形

穴の深さは直径の5倍以内を標準とし、それを超える場合は深穴加工(ガンドリルなど)になるコストを見積もりに含める。

溝・ポケットの設計

NG設計 OK設計 理由
コーナーが直角(R=0) コーナーにR加工(R=工具半径以上) エンドミルで直角コーナーは物理的に作れない
溝幅 < 2mm 溝幅 ≧ 2mm(標準エンドミルが入る) 極細エンドミルは高価・折損リスク大
深さ/幅 > 5 深さ/幅 ≦ 5 細長い溝はびびり(振動)が起きて精度不良
袋状で逃げなし 1方向以上に開口部を設ける 工具の進入・退出経路が必要

コーナーRの指定: 内側コーナーには必ず R を指定する。「R0.5」「R1.0」など。R無指定は加工者任せになり、工具径によってRが変わる。重要部位はRを明示する。

外形・フランジの設計

  • 薄肉部品(肉厚 < 3mm): 切削力でビビリ・変形が起きやすい。肉厚を増やすか、加工後に切り落とす設計にする
  • 長い突き出し形状: L/D(長さ/直径)が大きい形状は工具のたわみで精度低下。支持方法を設計段階で考える
  • 基準面の確保: チャッキング(掴む面)・バイス固定できる面を必ず設ける。球体や完全な円筒は固定が困難

4外注先が困る形状パターン

パターン1:アンダーカット

外側から工具が届かない形状。旋盤でのネジ切り逃げ溝がない、フランジ裏面の加工など。

対策: 逃げ溝(アンダーカット)を設ける。JIS B 0176でネジ部の逃げ溝寸法が規定されている。

パターン2:基準面がない

「どこを基準に位置を出せばいいか分からない」状態。図面に基準面(データム)の指示がない、または基準にできる平面が存在しない。

対策: 幾何公差のデータム指示を入れる。加工者が迷わないよう基準面を明示する。

パターン3:加工順序が考慮されていない

「この形状は後から加工できない」ケース。例えば、穴あけ後に溶接するとひずみで穴がずれる設計。または、組み付け後でないと位置が出ないが組み付けた状態では加工できない設計。

対策: 製造工程をイメージして設計する。加工 → 熱処理 → 研削 → 表面処理の順序で何が変化するかを追う。

パターン4:公差が厳しすぎる

「IT5以下の公差が全面に入っている」「全面研削仕上げ」など。機能上は不要な高精度指定が随所にある。

なぜ起きるか:CAD上で「とりあえず厳しめに入れておく」設計。加工費が2〜10倍になる。

対策: 機能要件から公差を設計する。嵌め合い部・位置決め部・摺動部以外は普通公差(JIS B 0405)で十分。

パターン5:標準工具で加工できない寸法

特殊な寸法(R2.3mmのコーナー、Φ7.3mmの穴など)は標準工具で加工できないため特注工具が必要。

対策: 工具の標準径・標準Rに合わせた寸法を使う。

  • ドリル径:Φ1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 8, 10, 12...(0.5mm刻みが標準)
  • エンドミルR:R0.5, R1, R1.5, R2, R3, R4, R5(標準品)

5図面に書くべき仕上げ記号と加工指示

表面粗さ記号

記号(Ra) 加工方法の目安 使いどころ
Ra 12.5〜25 荒削り 外観・強度に影響しない面
Ra 3.2〜6.3 一般切削仕上げ 標準的な機械加工面
Ra 0.8〜1.6 精削り 摺動面・シール面
Ra 0.2〜0.4 研削仕上げ 高精度摺動部・軸受け取付面

全面に Ra 0.8 を指定するのはNG。必要な面だけに精度指定する。

一般公差の活用

図面全体に個別公差を書かず、表題欄に「一般公差 JIS B 0405-m(中級)」と記載するだけで全面に±0.1mm程度の公差が自動適用される。個別指定が必要な箇所だけ寸法線に公差を追記する。


6外注依頼時のコスト削減のコツ

コストが下がる設計変更:
1. 直角コーナー → R付きコーナー(工具パスが減る)
2. 特殊径の穴 → 標準ドリル径に変更
3. 深穴 → 貫通穴に変更(可能なら)
4. 全面高精度 → 機能部のみ精度指定
5. 複雑な1部品 → シンプルな複数部品に分割して溶接

7社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この袋穴のコーナーが直角指定になっていますが、エンドミルで直角は加工できません。R2でいいですか?」

外注先・加工業者に対して: 「基準面はA面とB面です。Φ20H7の穴はこの2面を基準に位置度0.05で仕上げてください。」

購買・調達担当に対して: 「穴径をΦ7.3からΦ8に変更することで、特注ドリルが不要になりコストが下がります。機能上の問題はありません。」


8まとめ:加工しやすい設計の3原則

  1. 工具がアクセスできる形状にする——アンダーカット・直角コーナーを避ける
  2. 標準工具径に合わせた寸法を使う——特殊寸法はコスト増
  3. 精度は機能が必要な箇所だけに絞る——全面高精度指定は加工費を跳ね上げる

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。