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表面処理の選び方|めっき・塗装・アルマイト・熱処理を現場で使い分ける

最終更新日 2026-06-03読了時間 約5

この記事でわかること

防錆・耐摩耗・装飾など目的が違うのに何を選べばいいか分からない。めっき・塗装・アルマイト・化成処理の特徴と選定基準を実務判断レベルで整理します。

1「防錆したい」だけでは表面処理は選べない

部品に表面処理を指定するとき、「錆びないようにしたい」「見た目をきれいにしたい」という要求だけでは処理が決まらない。同じ防錆目的でも、亜鉛めっき・無電解ニッケルめっき・塗装・化成処理と選択肢は多く、コスト・耐食性・寸法精度への影響がそれぞれ異なる。

表面処理は「目的 × 母材 × 使用環境」の3軸で選ぶ。この記事では主要な処理の特徴と判断基準を整理する。


2目的別の処理マップ

目的 主な選択肢
防錆・耐食 亜鉛めっき、無電解ニッケルめっき、塗装、化成処理(リン酸塩・クロメート)
耐摩耗 硬質クロムめっき、無電解ニッケルめっき、窒化処理、DLCコーティング
電気絶縁 アルマイト(アルミ用)、塗装
導電性確保 銀めっき、金めっき、錫めっき
装飾・外観 光沢ニッケルめっき、塗装、アルマイト(カラー)
潤滑性付与 テフロンコーティング、二硫化モリブデン処理

3主要な表面処理の特徴

亜鉛めっき(電気亜鉛めっき)

鉄鋼部品の防錆用として最も広く使われる。亜鉛が先に腐食することで鋼を守る「犠牲防食」の原理。

  • 膜厚: 5〜25μm程度
  • 耐食性: 中程度(塩水噴霧試験で白錆72〜200時間、赤錆240〜500時間)
  • コスト: 安価
  • 注意: 高温環境(150℃以上)では劣化。ねじ部品はJISの公差内に収まるよう膜厚管理が必要

後処理の「クロメート処理」の色で耐食性が変わる:

  • 光沢クロメート(青白):耐食性低
  • 有色クロメート(黄金):耐食性中
  • 黒クロメート:耐食性中・外観用
  • 三価クロメート: RoHS対応品。六価クロムを含まないので食品・医療・欧州向け部品に必須

無電解ニッケルめっき

電気を使わず化学反応で均一に析出させる。複雑形状でも均一な膜厚が得られるのが最大の特徴。

  • 膜厚: 3〜50μm(均一性が高い)
  • 耐食性: 高い(リン含有量が高いほど耐食性UP)
  • 硬度: HV500程度(熱処理でHV900まで上昇可能)
  • コスト: 亜鉛めっきの3〜5倍
  • 使いどころ: 精密部品・複雑形状・耐摩耗が必要な箇所

硬質クロムめっき

耐摩耗性が最高クラス。シリンダーロッド・ゲージ・金型など高精度摺動部に使う。

  • 硬度: HV900〜1000
  • 膜厚: 5〜200μm(用途で幅広い)
  • 摩擦係数: 低い(潤滑なしでも動作可能)
  • 注意: 六価クロムを使用するためRoHS規制の適用外用途に限られる。代替としてDLCコーティングや高リンニッケルめっきが普及中

アルマイト(陽極酸化)

アルミニウム専用。電気化学的に表面に酸化被膜を形成する。

  • 対象材料: アルミ合金のみ
  • 硬度: 普通アルマイトHV200〜300、硬質アルマイトHV400〜500
  • 特徴: 電気絶縁性・耐摩耗性・着色可能
  • 寸法変化: 被膜の約50%が食い込み、50%が盛り上がり。精度部品は膜厚分の取り代を設計に折り込む
  • 使いどころ: アルミ筐体の外観・耐摩耗が必要なアルミ部品(案内面・ジグなど)

塗装

最も汎用的。鉄・アルミ・樹脂など幅広い母材に適用できる。

  • 種類: 溶剤系・水性・粉体塗装(パウダーコート)
  • 膜厚: 50〜100μm(粉体は60〜120μm)
  • 耐食性: 下地処理(リン酸塩処理など)との組み合わせで決まる
  • 注意: 寸法に影響する箇所・ねじ穴・はめ合い面はマスキング指示を図面に記載する

化成処理(リン酸塩処理・黒染め)

金属表面に化学反応で薄い皮膜を形成する。単独では防錆力が弱く、塗装・防錆油との組み合わせが基本。

  • リン酸塩処理(パーカーライジング): 塗装の下地として最も広く使われる。膜厚1〜10μm
  • 黒染め(四三酸化鉄処理): 外観用・防錆補助。膜厚1〜2μmで寸法変化ほぼなし。油と組み合わせて使う

4判断が割れやすいポイント

精度が必要な部品のめっき

精度公差部品にめっきすると寸法が変わる。設計段階でめっき後の仕上がり寸法を狙う必要がある。

対応方法:

  • 図面にめっき前後の寸法を両方記載する(「めっき後 Φ20h6」など)
  • 精密穴・はめ合い面はめっき後に研削仕上げを指定する

SUS(ステンレス)への表面処理

SUSは不動態皮膜で自己防食するため、通常は表面処理不要。ただし次の場合は検討が必要:

  • 異種金属接触による電食(ガルバニック腐食)→ 絶縁処理または同種金属に変更
  • 耐摩耗が必要な箇所 → 窒化処理・DLCコーティング

高温環境での処理選択

使用温度 避けるべき処理 推奨処理
〜150℃ 特になし 亜鉛めっき・塗装
150〜300℃ 亜鉛めっき(劣化)、多くの塗装 無電解ニッケル、無機系塗料
300℃超 有機系塗装全般 セラミックコーティング、窒化処理

5外注先への指示の書き方

図面には以下を明記する:

【めっきの場合】
電気亜鉛めっき JIS H 8610
三価有色クロメート処理
膜厚:8μm以上

【アルマイトの場合】
硬質アルマイト処理 JIS H 8603
膜厚:25μm(+5/-0)
処理後の寸法:Φ20(+0.025/0)

「防錆処理すること」とだけ書くと、外注先が最安値の処理を選ぶ。処理名・規格・膜厚の3点を必ず指定する。


6社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この部品は食品ライン向けなので、六価クロムNGです。亜鉛めっきは三価クロメートを指定します。」

外注先・めっき業者に対して: 「精密穴のΦ20H7はめっき後研削仕上げでお願いします。めっき前の穴径はΦ19.96〜19.98で加工してください。」

購買・調達担当に対して: 「無電解ニッケルは通常のめっきの3〜5倍コストがかかりますが、均一膜厚が必要な複雑形状なので代替できません。」


7まとめ:表面処理は「目的 × 母材 × 環境」で選ぶ

  • 防錆・低コスト → 亜鉛めっき(三価クロメート)
  • 耐摩耗・複雑形状 → 無電解ニッケルめっき
  • 高精度摺動部 → 硬質クロムめっき(RoHS対応はDLC)
  • アルミ部品 → アルマイト
  • 下地 + 外観 → 塗装
  • 図面には処理名・規格・膜厚を必ず明記する

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。