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板金・プレス設計の基礎|曲げ・絞り・穴あけの設計ルールと外注への伝え方

最終更新日 2026-06-03読了時間 約4

この記事でわかること

板金部品の曲げRが小さすぎて割れる、穴と端面の距離が近すぎる、コストが高くなる理由が分からない。板金・プレス加工の設計制約と図面への書き方を整理します。

1板金設計は「加工の制約」を知らないと使い物にならない

カバー・ブラケット・制御盤の筐体など、板金部品は設備設計で頻繁に登場する。しかし「展開して折り曲げるだけ」と思っていると、曲げが割れる・寸法が出ない・加工できないと言われるトラブルが起きる。

板金設計で守るべき制約を理解しておけば、加工しやすく・コストが低い設計ができる。


2曲げ加工の設計ルール

最小曲げ半径

板材を曲げるとき、曲げRが小さすぎると外側の引っ張り応力で割れが生じる。

最小内側曲げ半径 R_min の目安:
 軟鋼(SPCC・SS400):R ≧ 板厚 t
 ステンレス(SUS304):R ≧ 1.5t〜2t(板厚方向に注意)
 アルミ(A5052):R ≧ 1t〜1.5t

注意: これはあくまで目安。硬い材料・厚い板・圧延方向に対して直角に曲げる場合は最小Rが大きくなる。

曲げの逃げ(クリアランス)

フランジが短すぎると、プレスブレーキの型が材料をつかめず精度が出ない。

最小フランジ長さ H_min ≧ 板厚 × 3〜4 + 曲げR
(目安:板厚1mmなら最小フランジ4〜5mm以上)

穴と曲げ線の距離

穴が曲げ線に近すぎると、曲げ時に穴が変形する。

穴中心から曲げ線までの距離 D ≧ 穴径/2 + 板厚 × 2
(目安:板厚1mm・穴径5mmなら最低5.5mm以上離す)

3穴あけの設計ルール

最小穴径

最小穴径 D_min ≧ 板厚 t
(板厚1mmなら穴径1mm以上。それ以下はバーリング等の特殊加工)

穴と端面の距離

穴中心から端面までの距離 ≧ 穴径/2 + 板厚
(板厚1mm・穴径5mmなら3.5mm以上)

穴と端面が近すぎると、プレス時に端面が変形する。

穴と穴の間隔

穴間ピッチ ≧ 穴径 + 板厚 × 2

穴が密集すると穴間の肉が変形する。


4展開図の設計

板金部品は3D形状を平板に展開した「展開図」で加工する。展開時に曲げ部分がどれだけ伸びるかを「曲げ代(伸び)」として考慮する。

展開長さ = 直線部の合計 + 曲げ部の中立線長さ

曲げ部の中立線長さ = (R + k×t) × θ × π/180
 R:内側曲げR(mm)
 k:中立線係数(一般的に0.33〜0.5)
 t:板厚(mm)
 θ:曲げ角度(度)

現場での対応: 板金CADソフト(SolidWorks Sheet Metal・Fusion 360等)が自動で展開図を計算してくれる。手計算は概算確認用として知っておけば十分。


5コストに影響する設計ポイント

コストが上がる設計

  • 曲げ工程が多い(型の段替えが増える)
  • 特殊な曲げ形状(Z曲げ・ヘミング曲げ等)
  • 小さいRの指定(特殊型が必要)
  • 複雑な打ち抜き輪郭(CAMプログラムが複雑)
  • バーリング加工・カシメ・スタッドナット(工程追加)

コストを下げる設計変更

  • 曲げ方向を統一する(一方向だけにまとめると段替えが減る)
  • 穴を標準サイズに揃える(Φ4・Φ5・Φ6等)
  • 長方形のブランクから取れる形状にする(材料歩留まり向上)
  • 板厚を標準サイズに統一する(板厚が少種類のほうが材料管理しやすい)

板厚の標準サイズ(鉄系): 0.8 / 1.0 / 1.2 / 1.6 / 2.0 / 2.3 / 3.2 / 4.5 / 6.0 mm


6図面への書き方

板金部品の図面記載事項

材質:SPCC(冷間圧延鋼板)または SUS304
板厚:1.6mm
表面処理:粉体塗装(外面)または三価亜鉛めっき
曲げR:内側R2.0(特記なき場合)
溶接:隅肉溶接 脚長3mm(指示箇所)
穴位置公差:±0.3mm

スポット溶接の指示

板金部品同士の結合はスポット溶接が多い。

溶接記号:●(点溶接)
ピッチ:〇〇mmピッチ
ナゲット径:Φ〇〇以上

7よくある失敗

失敗1:鋼板の圧延方向を無視した曲げ

圧延方向に平行に曲げると割れやすい。圧延方向と直交して曲げるのが原則。特に高強度鋼板・SUS。

対策: 重要な曲げ部位は圧延方向と直交させる設計にする。図面に「圧延方向指定」を追記する。

失敗2:板厚を無視した溶接設計

薄板(1mm以下)に隅肉溶接を入れると熱変形が大きく、精度が出ない。薄板はスポット溶接またはリベットの方が変形が少ない。

失敗3:切り欠きが鋭角

切り欠きコーナーが鋭角(R=0)だと、プレス型が破損しやすく応力集中で割れも起きる。切り欠きコーナーには最低R1以上を入れる。


8社内で説明するときの言い方

上司・設計者に対して: 「この曲げ部の内Rが板厚以下になっています。R1.0以上に変更しないと割れのリスクがあります。」

外注先・板金業者に対して: 「展開図とCADデータで支給します。曲げRは全て内R2.0、板厚1.6mmSPCCです。三価亜鉛めっきは後工程でお願いします。」


9まとめ:板金設計の3チェックポイント

  1. 曲げR ≧ 板厚——最小R以下は割れる
  2. 穴・端面・曲げ線の間隔——近すぎると変形
  3. 曲げ方向を統一して工程数を減らす——コストダウン

次のステップ:

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。