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公差と嵌め合いの実務:穴・軸・すきま・しまりをJIS B 0401で理解する

最終更新日 2026-06-03読了時間 約9対象:設備設計担当・生産技術エンジニア

この記事でわかること

すきまばめ・しまりばめ・中間ばめの選定基準と穴基準・軸基準の使い分けをJIS B 0401に基づき解説。

「軸が穴に入らない」「がたつきがひどい」——嵌め合いの設計ミスは組立工程での手戻りと製品不良の原因になる。設備設計において穴と軸の関係を「なんとなく」で決めていると、後工程で必ず問題が出る。本記事では、JIS B 0401(寸法公差及びはめあい)に基づく公差と嵌め合いの基礎概念から、軸受設計や熱膨張対応まで、実務で直面する判断を数値例付きで解説する。


1公差とは何か:基本用語の整理

公差域の概念図(例:φ50H7)

最大許容
寸法
50.025 mm(+0.025)
上の寸法
許容差 ES
← 公差域 0.025 mm(合格範囲)→
基準寸法
(最小許容)
50.000 mm(±0)
下の寸法
許容差 EI
公差 T = ES − EI = 0.025 − 0 = 0.025 mm(H7 穴の場合、EI = 0 が特徴)

公差の議論を始める前に用語を整理しておく。JIS B 0401-1(寸法公差及びはめあい)が基本規格だ(JIS B 0401-1 JSA Web Store・有料)。

**基準寸法(呼び寸法)**は設計上の目標値だ。「φ50の穴」であれば50mmが基準寸法となる。

**上の寸法許容差(ES/es)**は基準寸法からの上限のずれ量だ。穴の場合は大文字ES、軸の場合は小文字esで表す。

**下の寸法許容差(EI/ei)**は基準寸法からの下限のずれ量だ。穴はEI、軸はei。

**寸法公差(T)**は上の許容差と下の許容差の差で、公差域の幅を示す。T = ES − EI(穴の場合)。

公差域は最大許容寸法と最小許容寸法の間の範囲だ。この範囲内に収まっていれば合格となる。

具体的な数値例を示す。「φ50H7」の穴の場合、JIS規格から ES = +0.025mm、EI = 0mm が定まる。つまり穴の合格範囲は 50.000〜50.025mm だ。公差域の幅は 0.025mm(= 25μm)となる。

図面の公差記号を読めるようになる基礎は機械図面の読み方・書き方でも解説している。


2嵌め合いの3種類と選定基準

3種類の嵌め合い比較

すきまばめ
常にすきまが生じる
軸が穴より必ず小さく、手で組み立て・分解できる
用途例:スライドピン・ガイドブッシュ・軸受アウター
代表:H7/g6、H7/f7
中間ばめ
すきま・しめしろどちらも起こりうる
寸法ばらつきにより結果が変わる。精密位置決めに使う
用途例:ノックピン・位置決めピン
代表:H7/k6、H7/n6
しまりばめ
常にしめしろ(締め代)が生じる
軸が穴より大きく、圧入または焼きばめで組み立てる
用途例:ギア・プーリーボス・軸受内輪
代表:H7/p6、H7/r6

穴と軸の公差域の組み合わせによって、組み立て後の隙間または締め代が変わる。JIS B 0401-2(穴・軸の公差域クラス)では嵌め合いを3種類に分類している(JIS B 0401-2 JSA Web Store・有料)。

**すきまばめ(clearance fit)**は常に隙間ができる組み合わせだ。軸が穴より必ず小さくなるため、手で組み立て・分解できる。軸受のアウターレース、スライドピン、ガイドブッシュなど「動かせる・抜き差しできる」部位に使う。代表的な組み合わせはH7/g6、H7/f7など。すきまが大きいほど挿入は楽になるが、がたつきも増える。

**しまりばめ(interference fit)**は常に締め代(マイナスのすきま)ができる組み合わせだ。軸が穴より大きいため、圧入または焼きばめで組み立てる。一度組み立てると容易に分解できない。ギア・プーリーのボス部、軸受の内輪など「高い固定力・トルク伝達」が必要な部位に使う。代表的な組み合わせはH7/p6、H7/r6など。

**中間ばめ(transition fit)**はすきまになる場合もしまりになる場合もある中間的な組み合わせだ。寸法のばらつきによって結果が変わる。ノックピン、位置決めピンなど「精度よく固定するが、分解も必要」な部位に適する。代表的な組み合わせはH7/k6、H7/n6など。

選定の判断軸をまとめると以下のとおりだ。

  • 分解・交換頻度が高い → すきまばめ(f7、g6など)
  • 大きなトルク・引き抜き力が必要 → しまりばめ(p6、r6など)
  • 精密位置決め+分解可 → 中間ばめ(k6、n6など)

3穴基準と軸基準:どちらを使うか

JISの嵌め合い方式には**穴基準(hole basis)軸基準(shaft basis)**の2つがある。

穴基準は穴の公差域クラスをH(下の許容差 = 0)に固定し、軸側の公差域クラスを変えることで嵌め合いの種類を選定する方式だ。「H7/g6」のHが穴基準を示す。穴基準が広く使われる理由は穴の加工の難しさにある。穴はドリル・リーマ・ボーリングといった工具が必要で、軸に比べて精密な調整が難しい。一方、軸(丸棒)は旋削や研削で微妙な寸法調整がしやすい。したがって穴を固定して軸で合わせるほうが実際の製造では合理的なのだ。

軸基準は軸の公差域クラスをh(上の許容差 = 0)に固定し、穴側を変える方式だ。以下の例外ケースで使用する。

  • 市販の鋼棒・精密シャフト(h6・h5仕上げで購入)をそのまま使う場合
  • 1本の軸に複数の穴部品(異なる嵌め合い)を組み付ける場合(軸を共通化できる)
  • 細い軸の寸法変更が困難な場合

実務ではまず穴基準を検討し、上記の例外に当てはまる場合のみ軸基準を採用するという判断で問題ない。材質の選定が嵌め合い設計に影響するケースは材料選定の基礎も参照されたい。


4公差記号(H7/g6など)の読み方

「H7/g6」のような公差記号は2つの情報を持つ。

**アルファベット(公差域クラス)**は公差域の位置(基準寸法からのオフセット量)を示す。大文字は穴、小文字は軸だ。aからzに向かって公差域が基準寸法から離れる方向に移動する(軸の場合はaが最小、zが最大)。Hは穴の下限が基準寸法と一致(EI = 0)、hは軸の上限が基準寸法と一致(es = 0)する特別な位置だ。

**数字(IT等級:国際公差等級)**は公差域の幅を示す。IT01からIT18まであり、数字が小さいほど公差が厳しい(幅が狭い)。IT5〜IT8が機械加工の実用範囲で、精密用途にはIT5〜IT6、一般用途にはIT7〜IT8が使われる。

代表的な嵌め合い組み合わせの実用早見表を示す。対象はφ50mmの例だ。

組み合わせ 穴の範囲(mm) 軸の範囲(mm) すきま(+)/締め代(−)の範囲 用途
H7/f7 50.000〜50.025 49.950〜49.975 +0.025〜+0.075 ゆるいすきまばめ(スライド)
H7/g6 50.000〜50.025 49.984〜50.000 0〜+0.041 精密すきまばめ(回転軸)
H7/k6 50.000〜50.025 50.002〜50.018 −0.018〜+0.023 中間ばめ(ノックピン)
H7/p6 50.000〜50.025 50.026〜50.042 −0.042〜−0.001 しまりばめ(圧入)

JIS規格値の詳細についてはJIS B 0401-1 係数表(JSA Web Store・有料)を参照されたい。


5軸受の嵌め合い設計

転がり軸受の嵌め合いは、誤った選定が軸受の早期破損に直結するため、慎重な設計が必要だ。

基本ルールは**「回転側はしまりばめ、固定側はすきまばめ」**だ。

**内輪(インナーレース)**は軸に取り付けられる。軸が回転する場合、内輪は軸とともに回転するため、軸との嵌め合いをしまりばめにする。すきまばめにすると軸との接触面でクリープ(微小滑り)が発生し、軸と内輪が摩耗・発熱して寿命が大幅に短縮する。

**外輪(アウターレース)**はハウジング(軸受箱)に取り付けられる。ハウジングが固定の場合、外輪との嵌め合いはすきまばめ(H7/js6程度)か、わずかに中間ばめ程度とする。外輪をしまりばめにすると、温度変化による内部隙間の変化や、組み替え時の分解困難などの問題が生じる。

主要軸受メーカーの推奨値として、NTNの技術資料(NTN 軸受嵌め合い技術資料)やNSKの設計ガイド(NSK 設計ガイド)に荷重条件・回転速度・精度クラス別の推奨嵌め合いが掲載されており、実設計では必ずこれらを参照すること。

一例として、一般的なラジアル荷重の転がり軸受(中荷重・標準回転)でφ50mmの軸の場合、内輪嵌め合いにはk5またはm5が推奨されることが多い。重荷重・衝撃荷重ではn5〜p5まで締め代を増やす。


6温度・材料による嵌め合い変化

設計時点では適切な嵌め合いであっても、運転中の温度変化によって締め代やすきまが変化することがある。

熱膨張による締め代変化の計算式は次のとおりだ。

ΔL = α × L × ΔT
  • α:線膨張係数(m/(m·K))
  • L:基準寸法(m)
  • ΔT:温度変化(K)

代表的な材料の線膨張係数は次のとおり。

  • 炭素鋼(SS400など):α ≒ 11.7 × 10⁻⁶ /K
  • アルミニウム合金(A5052など):α ≒ 23.5 × 10⁻⁶ /K
  • ステンレス(SUS304):α ≒ 17.3 × 10⁻⁶ /K

アルミ×鉄の組み合わせ注意点:アルミハウジングに鉄製軸受を圧入する構成は現場でよく見られるが、熱膨張係数の差(23.5 − 11.7 = 11.8 × 10⁻⁶ /K)が大きく、温度上昇とともに嵌め合いが緩む方向に変化する。

具体例として、φ80mmのアルミハウジングに鉄の外輪を圧入し、運転中に80℃上昇した場合を考える。

  • アルミの膨張:80 × 23.5 × 10⁻⁶ × 80 = 0.150mm(穴が広がる)
  • 鉄(外輪)の膨張:80 × 11.7 × 10⁻⁶ × 80 = 0.075mm(軸受外輪が広がる)
  • 差分:0.150 − 0.075 = 0.075mm(締め代が0.075mm緩む方向)

設計時の締め代が0.05mm程度しかなければ、運転中にすきまばめに転じてクリープが発生するリスクがある。アルミ×鉄構成では、この熱変形差を見込んで初期締め代を多めに設定するか、スナップリング等でアキシアルの脱落防止を追加することが現場的な対処だ。


7現場での測定と合否判定(まとめ)

設計した公差を現場で確認するには、測定工具と測定方法の選定が欠かせない。

ノギスはφ0.02mm程度の分解能があり、すきまばめの大まかな確認や一般部品の寸法測定に使う。ただし測定力・当て方による誤差が大きく、IT7以上の精度管理には不向きだ(JIS B 7507(ノギス)JSA Web Store・有料)。

マイクロメータは外径測定で0.001mm(1μm)の分解能を持つ。軸の公差確認や精密部品の受入検査に使う。ただし穴の内径はマイクロメータで直接測れないため、内径マイクロメータやボアゲージを使う。

**限界ゲージ(栓ゲージ・リングゲージ)**は「通り側」と「止まり側」の2つのゲージで合否を一発判定する。量産品の受入検査では最も効率的な方法だ。公差が±0.01mm以下になるとゲージの精度維持コストが高くなる点は注意が必要だ。

**三次元測定機(CMM)**は幾何公差を含む複合的な測定が必要な場合に使う。精密部品の初物確認や品質問題の調査に活用する。

現場での合否判定チェックリストをまとめる。

  • 測定工具の最小読み取り値が公差幅の1/5以下であることを確認する(測定誤差を5%以内に抑えるため)
  • マイクロメータ・ゲージの校正期限が有効であることを確認する
  • 測定前に部品・工具を同温度(20℃が基準)に馴染ませる(熱膨張の影響を排除)
  • 穴の真円度・テーパに問題がないかを複数方向で確認する
  • しまりばめの圧入前に締め代計算書と実測値を照合する
  • アルミ×鉄など異種材料の嵌め合いでは温度変化の影響を評価済みであることを確認する
  • 軸受嵌め合いはメーカー推奨値との照合を記録として残す

受入検査のフロー全体については設備受入検査の実務も参照されたい。

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この記事の執筆者

seigitech 編集部

生産技術・機械設計・自動化・MES・AIを専門とする実務エンジニア集団。 現場での実務経験をもとに、すぐに使える知識とノウハウを整理・発信しています。